米国知的財産権日記

iptomodach.exblog.jp
ブログトップ

カテゴリ:知的財産権( 96 )

いよいよ最高裁判所の2017年度も終わりに近づきつつある中、新たな判決が出てきました。今回の判決はWesterngeco LLC v. Ion Geophysical Corp.事件です。最高裁判所の決定はこちらからどうぞ。

さてここで問題になったのは海底調査技術に関する特許で、特許権者は当該技術を一切ライセンスせず、当該技術を自社による海底調査実施サービスに使用していました。侵害者はその海底調査技術の実施にかかわる部品を輸出し、当該部品を使用して海外で組み立てる装置を使えば、特許権者が請け負うような海底調査ができるようになる、という状況でした。

ご存知の方も多いと思いますがこうした部品の輸出については米国特許法271(f)条が特許侵害行為に該当することを明示しています。経済産業省が提供する米国特許法翻訳によると該当条文は以下です:

(f)(1) 何人かが権限を有することなく,特許発明の構成部品の全部又は要部を,当該構成部品がその全部又は一部において組み立てられていない状態において,当該構成部品をその組立が合衆国内において行われたときは特許侵害となるような方法により合衆国外で組み立てることを積極的に教唆するような態様で,合衆国において又は合衆国から供給した又は供給させたときは,当該人は,侵害者としての責めを負わなければならない。

(2) 何人かが権限を有することなく,特許発明の構成部品であって,その発明に関して使用するために特に作成され又は特に改造されたものであり,かつ,一般的市販品又は基本的には侵害しない使用に適した取引商品でないものを,当該構成部品がその全部又は一部において組み立てられていない状態において,当該構成部品がそのように作成され又は改造されていることを知りながら,かつ,当該構成部品をその組立が合衆国内において行われたときは特許侵害となるような方法により合衆国外で組み立てられることを意図して,合衆国において又は合衆国から供給した又は供給させたときは,当該人は,侵害者としての責めを負わなければならない。

今回の件は部品の輸出が侵害行為にあたるか、が、争われたのではありません。争われたのは損害賠償の問題です。問題の部品で製造された装置を用いて本来特許権者しか行うことができなかったような海底調査を他者が実施することができるようになったため、特許権者は本来請け負うことができたであろう海外での海底調査10件を請け負うことができなかった、とし、地裁レベルではその逸失利益として9,340万ドルの損害賠償が認定されました。侵害者は、そうした逸失利益は米国特許の権利が及ばない海外で発生したものであり認められるべきではない、と主張しました。控訴裁は侵害者の主張を認めて逸失利益損害賠償を破棄しましたが、特許権者が上訴し、最高裁の判断を待つ形になったのが今回の事件です。

なお、この特許権者に対して地裁は当該部品を用いて米国内で製造された装置2,500台分の合理的ロヤルティとして1,250万ドルの損害賠償も別途認定しています。これについては侵害者は争わず、海外で実施された海底調査10件分の収入を逸失利益(しかも9,340万ドル!)とした損害賠償の正当性のみを争っていました。

最高裁判所は賛成7、反対2で特許権者の主張を認めました。で、この逸失利益はあくまでも米国特許法271(f)条にもとづく米国内での侵害に起因する損害賠償であり、この逸失利益を認めることは米国特許法の域外適用には該当しない、としています。一方、反対派は、これは米国特許法の域外適用である、という立場です。

うーーーーーーーーん、ビミョー。普段ですと、あくまでも一個人の見解として「最高裁判所、それはちがうやろー!」とか、「ごもっとも!」とか思ったりしますが、今回はどっちの言い分もそれなりにアリ、という気がします。問題の部品が輸出されなければ海外でそうした装置が製造されることもなかったのであれば、確かにこの特許権者は海外の海底調査10件を請け負うことができたのかもしれず、そう考えればこの逸失利益はもっとも、と思います。しかし米国で製造された装置2,500台分の合理的ロヤルティが1,250万ドルのときに、10件の海底調査分の逸失利益が9,340万ドルと言われると、なんだか違うんじゃ、、、という気もします。そうした米国分装置については合理的ロヤルティとしての損害賠償支払いで落ち着き、今後そうした装置を使用して海底調査を実施できるとすると、10件の海底調査分の逸失利益が2,500台分の合理的ロヤルティの7.5倍、1件あたりの海底調査の逸失利益が装置1,868台分の合理的ロヤルティに該当する、と考えるとエラいバランスが悪くないですかい!?

今回の判決で、海外で発生する行為に関する損害賠償を特許侵害として回収できるようになる!というコメントも米国内で見られますが、それはちょっと端折りすぎ、盛り上げすぎ、なように思います。今回の事件の背景を勘案すれば、通常の侵害に関する損害賠償主張と、今回の件は差別化できるのではないかと個人的には思います。

日本企業の皆さんはわざわざ米国の工場で部品のみ作って海外で組み立て、というのはあまりないかもしれず、この判決の日本企業の事業への影響は少ないかなー、と思いますが、それにしてもビミョーすぎてコメントに困る判決です。。。

[PR]
by suziefjp | 2018-06-23 05:58 | 知的財産権
管轄と送達と日本企業」で、日本企業が特許侵害裁判でどこででも訴えられてしまう~~!というお話をしておりました。この点、どうなることかと思っておりましたが、結局「そうなのよ、どこでも訴えられるのよ~~」ということでオチが付きそうです(涙)。

2018年5月9日の「In re: HTC CORPORATION」という巡回控訴裁判所の判決において「そうなのよ、どこでもオッケーなのよ~~。」と確認されてしまいました。
管轄と送達と日本企業 」の回で解説したように、Brunette判決において最高裁判所は「外国人に対する訴訟は米国連邦管轄法のカバー外である」と述べ、そしてTC Heartland事件で最高裁判所が「外国企業の特許侵害裁判管轄地に関してここでは述べませんよ」と言っていました。じゃあ、将来、外国企業の特許侵害裁判管轄地も現在の「米国連邦管轄法のカバー外である」というものから何か制限がされるのかしらん?と少し期待しました。おそらく今回の事件の当事者である台湾のHTC Corporationも同じような期待をしたのかもしれません。ただ、ちょっと言い過ぎちゃったのかもしれず、「管轄法のカバー外だったら、そもそも外国企業は米国特許侵害裁判の対象になり得ないのでは?」という方向に議論が行っちゃったようです。

これに対して巡回控訴裁判所は「HTCの主張を認めると、外国企業は一切特許侵害裁判の対象にならないことになってしまう。」とまさにごもっともな指摘をし、TC Heartland判決はBrunette判決に何ら影響しない、と明示されたものです。

まだ将来的に何か最高裁判所が外国企業の管轄権について意見を述べる可能性はゼロではないかもしれませんが、今回はちょっと「過ぎたるはおよばざるがごとし」な感じのオチがついております。。。


[PR]
by suziefjp | 2018-05-11 02:04 | 知的財産権
はい、7ヶ月ぶりの更新でございます(笑)。なぜ毎年この時期に怠惰な私が更新するか、ってえと、ひとえに最高裁判所が2017年度の終わりにわらわらと知財関係の重要判決を出し始めるからなんですな。(米国政府の年度は前年度10月スタートで、翌年夏休み前まで、くらいで考えていただくと良い感じです。)

と、いうことで2017年度第一弾はSAS Institute Inc. v. Iancu事件でございます。(判決文のリンクはお早めに!)これは分かりやすい事件で、皆さんもよくご存知のIPRに関するものです。開始以来大人気が続くIPRですが、IPR申立書では「この特許の請求項A、B、C、Dが、それぞれこうこうの理由で無効だと思います」という主張がなされます。これを受けて従来、PTABは「うーん、あなたの言うことのうち、請求項A、C、Dに関してはアリかも、って気もするんだけど、請求項Bについてはちょっと無理がある感じがするのよねぇ。」ということで、「んじゃ、請求項A、C、Dについてのみ、IPRを開始しまーす」とできたわけです。

ところが最高裁判所が今回のSAS判決で「いやいやいや、申立書に対する判断は、『オッケー♪』か、『だめー!』の二択で、やるなら対象の請求項全部検討する、やらないなら全部やらない、のどっちかしかないわ。」と、明示したのです。PTABが公開しているデータによると、現在、約800件ほどのIPRが進行中だそうで、そのうち20%弱が「申立請求項の一部だけ検討してあげる♪」タイプのIPRなんだそうな。今回の最高裁判所判決を受け、この20%弱のIPRについて、PTABは「修正IPR開始決定書」を発行し、申立書で取り上げられていたすべての請求項をIPR対象に含めるようにするそうです。また、IPRは開始決定から1年以内にPTABが無効判断をする、というスピードも魅力ですが、これら20%弱に関しては「場合によっては1年以内ではなく1年半以内まで延長可能」という規定にもとづいて、延長期間を活用して対処するものと思われます。すでに申立人、特許権者間で証拠開示がある程度終わっているようなケースも、追加される請求項に関する補足証拠開示期間が設けられて延長手続きがとられるものと思います。

SAS判決をうけてすでに4月26日に米国特許庁が「Guidance on the impact of SAS on AIA trial proceedings」と題したメモを発表しており、対応予定の詳細はそのメモでご覧いただけます。

今回の判決は申立人側からは好意的に、特許権者側からは否定的に受け止められています。もし皆さんが上記20%弱に該当する、「申立書にあった請求項の一部のみについて開始」されたIPRを抱えておられる場合、少し忙しくなっちゃいますよ!(PTABでも今回の判決を受けて業務の増加がすでに言われています。)

[PR]
by suziefjp | 2018-05-02 01:10 | 知的財産権
前回報告しました裁判管轄地の適性判断基準、「通常かつ確立した事業地」に関するテキサス東部地裁のギルストラップ判事による解釈ですが、連邦巡回控訴裁判所が「広すぎ~~!」という判断を9月21日に出しました。連邦巡回控訴裁判所は①物理的存在がその地区になくても、その地区で『通常かつ確立した事業地』が認められ得るのか、そして②在宅勤務社員がその地区にたまたま居住すれば、それは『物理的存在』なのか、の二点を判断したわけですが、①については何らかの物理的、地理的存在が必要、とし、②についてはたまたま在宅勤務者の家がある、というだけでは足りない、としました。連邦巡回控訴裁判所の意見書はこちらからご覧いただけますので、ご興味のある方はリンクがあるうちにご覧くださいね。

連邦巡回控訴裁判所はまず大前提として、被告の「通常かつ確立した事業地」とみなされるには「物理的存在」があること、「通常かつ確立した存在」があること、そしてそうした場所が「被告がコントロールする場所」であること、の3点が満たされることが必要である、としました。

「物理的存在」であるためには、その場所から事業が行われていること、例えば小売店舗だとか工場だとか、支店とかまではいかなくても、その場所に在庫が置かれているとか、お客様に配るためのカタログがそこに積まれているとか、その程度のことはやっぱり必要だよね、と。そして「通常かつ確立した存在」として、まず「通常」に関しては、安定しているとか、統一性があるとか、秩序だっているとか、組織的な存在だとか、そういうのじゃなきゃね、と。そして「確立した」に関しては定着しているもの、と。なので、例えば半年に一度、同じ展示会場で開催される業界イベントに必ず参加しているとしても、そうした参加はあくまでも「一時的なもの」に過ぎず、その展示会場の存在する地区に「通常かつ確立した存在」がある、とは言えない、とのことです。一定期間、例えば5年ずっとそこに定着した組織がある、などの場合は「通常かつ確立した存在」がある、と言えそうです。最後の「被告がコントロールする場所」ですが、在宅勤務社員の家がその地区にあるとしても、被告会社がその家を所有していたり、家賃を負担していたり、というわけではなく、従業員が会社の許可なく自らの意思で引っ越して良いような場合、これは「被告である会社がコントロールす場所」とは言えない、とのことです。なので、もしアメリカにも社宅なるものがあるのであれば、社宅だったりすると「被告がコントロールする場所」に該当するのかな、と思います。しかし会社として「自宅からちゃんと働いてくれるんであれば、自宅の場所はどこでもいいし、好きに引っ越してもらっていいっす。」的な在宅勤務であれば、そうした在宅勤務場所は「会社がコントロールする場所」にはならない、ということになります。

今回の事件では、在宅勤務社員の自宅がテキサス東部地裁にあったわけですが、連邦巡回控訴裁判所は、その自宅に在庫やカタログがあるわけではないし、被告がその自宅を所有していたり家賃を払っていたりするわけでもなく、かつ、在宅勤務者の意思で引っ越しも出来る、という状況では、在宅勤務社員の自宅を被告の『通常かつ確立した事業地』とすることは不適切、としました。

インターネット時代で、これからも在宅勤務者が増えていくことが予想されます。今回連邦巡回控訴裁判所が出した判断をふまえて、在宅勤務者の取り扱いを社内規定で明確にしておくのもリスク管理の一つとして良いかもしれませんね。


[PR]
by suziefjp | 2017-09-26 02:58 | 知的財産権
なんと2017年もはや4分の3が終わろうかという今日この頃。。。早いっ!
そんなわけで、以前報告させていただいた最高裁判所のTC Heartland判決からも約4ヶ月。TC Heartland判決が出るまでは、裁判管轄地の適性判断基準のひとつである「通常かつ確立した事業地」(regular and established place of business)が特許裁判で検討されることはほとんどありませんでしたが、TC Heartland判決を受けて、少しずつですがこの文言をいかに解釈すべきか、という判決が出てき始めているので少し紹介しますね。

まずはTC Heartland判決の影響で特許侵害裁判提訴数が激減したテキサス東部地裁ですが、有名判事のギルストラップ判事がRaytheon Co. v. Cray, Inc., Civil Action No. 2:15-CV-01554-JRG, 2017 U.S. Dist. LEXIS 100887 (E.D. Tex. June 29, 2017)という事件において、この文言をどう解釈するか、について述べています。はなはだテキトーではございますが、翻訳すると以下のような感じです:

まず最初にテキサス東部地裁管轄地に被告が保有する、資産、在庫、インフラ、人材といった物理的存在の程度を検討する。小売店や倉庫、その他の施設がこの地区にあるのなら、テキサス東部地裁に「通常かつ確立した事業地」あると判断する方向に大きく傾くであろう。。。次に、被告が対内、対外的にこの地区に自らが存在しているということをどの程度知らしめているかの程度を検討する。3つめには被告がこの地区における自らの存在からどの程度利益を得ているかを検討するが、これは売上額の検討に限定するものではない。最後に、裁判所は被告がこの地区に存在する潜在顧客、顧客、ユーザー、その他にターゲットを絞って行うやりとりの程度、地域に絞ったカスタマーサービスや、この地区で継続する契約関係、ターゲットを絞ったマーケティングといったものを含めて、その程度を検討する。

これに対しては、「これでは広く『通常かつ確立した事業地』が認められることになり、TC Heartland判決の影響を皆無にしてしまうに等しい」と、かなりの批判が出ていました。また当事者であるCray Inc.もこの決定を不服として連邦巡回控訴裁判所に控訴しています。控訴申立書においてCray Inc.は「物理的存在がその地区になくても『通常かつ確立した事業地』が認められる得るのか」、「在宅勤務の社員がその地区にたまたま居住すれば、それは『物理的存在』とされるのか」の二点を具体的な問題として連邦巡回控訴裁判所にたずねています。特に後者は、インターネットの普及で在宅勤務が増えつつある中、非常に重要な問題になるのではないかと思います。連邦巡回控訴裁判所がこの控訴を取り上げるかは本日時点では未定です。

一方、TC Heartland判決の影響で(多くの会社がデラウェアを設立登記地としているため)特許侵害裁判提訴数が逆に激増しているデラウェア州では、最近になって「小売店舗などが必要とまでは言わないが、何らかの物理的存在は必須」という判決を出しています。その事件では、被告はデラウェアを含む全米で製品を販売しており、営業さんはデラウェア内の顧客とコンタクトがあるが営業さん自身がデラウェア在住ではなく、かつて一人の営業さんが19ヶ月ほどデラウェアに住んでいたが、その人はデラウェアの顧客担当ではなかったし、かつ、その営業さんはすでに会社をやめている、という状況でした。この状況ではデラウェアに物理的存在があるとは言えない、とされました。この一方で、つい最近、Bristol-Myers Squibb Company et al v. Mylan Pharmaceuticals, Inc., 1-17-cv-00379 (DED September 11, 2017)という事件では、デラウェア連邦地方裁判所の管轄権が認められたのですが、これは製薬系の方ならよくご存知のAbbreviated New Drug Application (ANDA) 訴訟の事件です。裁判所は、被告自身はデラウェアに物理的存在を持たないものの、被告は大きなグループ会社の一員で、そのグループ内で規制当局の認可を得る役割を担っており、被告自身が頻繁にデラウェア連邦地方裁判所にANDA訴訟を申し立てていること、被告の働きによって裁判に勝利すればグループのジェネリック薬がデラウェアを含む全米で広く販売されること、そのグループ会社にはデラウェアで設立登記されている会社が多く含まれること、は、被告の「通常かつ確立した事業地」の有無の判断において大きく考慮されてしかるべき、としました。都合よくデラウェアの裁判所をしょっちゅう使ってるのに、自分に都合が悪いときは「デラウェア関係ない」って、それはダメでしょ?ってな感じでしょうか。

管轄地判断における「通常かつ確立した事業地」解釈に関する判決はまだこれからも出てくると思いますので、適宜アップデイトしていきたいと思います!





[PR]
by suziefjp | 2017-09-19 02:06 | 知的財産権
今回の会期が終わるまでに最高裁判所が決定するだろうと期待されていた知財関連・日本関連の事件は3つありました。うち二つ、TC HeartlandWater Splashについては5月に報告したとおりです。そして3つ目の「Impression Products, Inc., v. Lexmark International, Inc.」についても実は5月末に決定がでました。このImpression Products事件は特許消尽に関するものです。判決文は最高裁判所が公開してくれているうちにこちらからどうぞ。

Impression Products事件は、プリンタトナーの再充填業者が空カートリッジにトナーを再充填して販売した場合、そうした販売はそのカートリッジをもともと販売したメーカーさんがそのトナーカートリッジに関して所有している米国特許を侵害し得るのか、が主な問題でした。もともとのメーカーさんが、例えば日本であるカートリッジを販売したとします。で、それを使い終わったユーザーさんが再充填業者に空カートリッジをあげちゃって、で、再充填業者がトナーを再充填したカートリッジを今度はアメリカで販売したとします。で、そのカートリッジにはもともとのメーカーさんが持っている米国特許技術が使用されていた、と。そういう時に、この米国で販売された再充填カートリッジは、もともとのメーカーさんの米国特許を侵害するのか!?がお題でした。

で、回答は「しないよーん。」と。つまり、どこの国であろうが、一回販売しちゃったら、その販売した製品については、自分が持っている米国特許を権利行使できないよ、と。いわゆる特許消尽ですね。また、この事件では、もともとのメーカーがカートリッジを販売するときに「このカートリッジの再使用や再販は固く禁じます」と一筆そえて販売していたんですな。で、そうした制限を特許侵害裁判を通じて強制できるのか、というのも問題点として挙がっていました。で、これに対する答えも「だめよーん。」と。そうした制限をつけていても特許侵害がらみとしては制限を強制できない、ということになりました。これ、事件の当事者になったのはレックスマークですが、レックスマークに限らず、トナーの再充填問題で頭が痛いプリンターメーカーさんはますます頭が痛くなっちゃいますよね。カートリッジの販売ってプリンターメーカーさんのドル箱なのに。。。

でも、特許の独占ライセンス契約とかで、ライセンシーAに地域Xでの独占使用権を与えて、ライセンシーBに地域Yでの独占使用権を与えて、、、みたいなのもありますよね?で、Bが自分が地域Yじゃなくて、地域Xに物を持ち込んだらどうなるのよ?ってのはありますが、これは「Bによる特許侵害」として争うのではなく、Bによる契約違反、つまり契約法の中で争え、というのが最高裁判所の立場です。だからカートリッジの販売時に「このカートリッジの再販・再使用は、再充填業者への譲渡・販売を含めて固く禁じます。」という条件で販売したにもかかわらず、ユーザーさんが再充填業者にこの空カートリッジを譲渡しちゃって、その再充填業者が再充填カートリッジを販売しちゃったら、メーカーさんは再充填業者に特許侵害を主張できませんが、ユーザーさんに対して販売契約違反を主張できる、ということです(まあ、ユーザーさんをいちいち追っかけられるか、というとメーカーさんにとってはビミョー。。。)

とりあえず、7月末までに出るだろうと期待されていた特許・日本関連の最高裁事件はこれで決定が出尽くした感じです。最高裁判所判事の皆さんも夏のバケーションを楽しみにしているかもしれません♪



[PR]
by suziefjp | 2017-06-10 03:29 | 知的財産権

管轄と送達と日本企業

ちょっと最高裁判所判決のインパクトが大きいので、5月、頑張ってアップしております!珍しくこんなに頑張ったら6月は燃え尽きて「あしたのジョー」状態だな。。。

米国は5月29日(月)がメモリアル・デーの祝日で3連休でした。その間にTC Heartland事件とWater Splash事件と日本企業の関係を「管轄と送達と日本企業」として、「部屋とYシャツと私」(古いっ!)的にもんもんと考えてたんですけど、どうもすっきりしない。TC Heartland事件報告のときに、日本企業だけが特許侵害裁判で訴えられるとしたら、、、を少し検討しましたが、この事件で問題になった米国民事訴訟規則の1400(b)条は国内企業に適用することが明言されているので、この解釈は日本企業には適用されないんですね。じゃあ米国外に居住する人達はどこで訴えられるのか、っていうと、1391(c)(3)条ってのがありまして、そこでは「a defendant not resident in the United States may be sued in any judicial district, and the joinder of such a defendant shall be disregarded in determining where the action may be brought with respect to other defendants.」とあります。すなわち、「米国に居住しない被告については、米国内のどこででも訴えられますよ、ただし、そうした非居住被告と一緒に提訴される在米被告に関する管轄地について、非居住被告と一緒に提訴されるからどこでも訴えられる、ってわけじゃなくて、当該在米被告に関する管轄地の判断には影響しませんよ。」と。なので、やっぱり在米子会社と一緒に日本親会社が提訴される場合は、在米子会社の管轄地に引っ張られると思います。

問題は日本親企業が単独で提訴されたら、、、ですけど、その場合は1391(c)(3)条だと「米国内のどこででもいいですよ」となってしまうわけです。ここで注目したいのは、TC Heartland事件の最高裁判所意見書の7ページにある脚注(PDF文書のページ番号だと10ページ)なんです。ここにしっかり「この判決では外国企業の特許侵害事件の管轄地に関する意見は述べません」とあります。こういうのって最高裁判所判決によくあるんですよ。そこまで決まったら次はこの点絶対もめますよ、的なところを「本件ではそこまではカバーしません、あしからず」みたいなのが!!で、こういう予告編みたいな脚注にあるトピックって、それ以降の事件でクローズアップされて数年後に最高裁にあがる、なんてのが結構あるんです。

この脚注で引用されているBrunette Mach. Works, Limited v. Kockum Industries, Inc.という最高裁判決ですが、この判決では最高裁判所は「外国人に対する訴訟は米国連邦管轄法のカバー外である」と述べたんです。で、この判決後、1391条が改正されて今みたいな「米国に居住しない被告はどこででも訴えられまっせ。」てなものになったんです。TC Heartland事件でわざわざ最高裁判所が「外国企業の特許侵害裁判管轄地に関してここでは述べませんよ」と言っているのは、「でも、述べて欲しいと要請が来たら述べるかもね。」みたいなサイン???だとしたら、将来、この問題が最高裁判所にあがれば明確にされるかもしれません。

とりあえず、そういう明確化がない状態でありそうなパターンを考えてみると、自分に都合の良い管轄地で訴えたい特許権者がわざと日本親会社だけを提訴することもあるかもしれません。その場合、Water Splash判決が今ひとつクリアではないので、日本側としては、「日本の裁判所書記官から郵送されていない」ケース、あるいは、「これまでどおりのハーグ条約上の送達手続きがとられていない」ケースでは送達無効を主張するのが良いのかな、と。もし送達がちゃんとしていて、全然関係ない場所で提訴された場合、その点を最高裁判所の呼び水に応じて争うべきか、あるいは、そこは争わないべきか、、、うーん、考えどころです。(どっか強気の外国企業がここ争ってくれないかなー。。。)

いわゆる和解金狙いの特許トロールは「日本企業だけを訴えると送達だけでもめるかもしれない」「めんどくさい送達にコストと時間かけたくない」「ディスカバリはヤル気ないけど、和解圧力のためにデポジションやるぞ!とか言っても、じゃあ日本の米国大使館か領事館まで来なさいよ、って言われる」「もし日本企業が本気になって、外国企業に関する特許侵害裁判管轄を最高裁まで争うぞ、みたいな感じになったらめんどくさい。。。」とか色々考えてテキサス東部で訴えることを優先して日本企業だけを訴える、というのはしないかもしれませんね(あくまでも希望的観測ですけど。。。)TC Heartland事件報告 で申し上げたような直接侵害・間接侵害の問題はすっとばして1391(c)(3)条にもとづいて、日本親会社だけを好きな場所で訴えてくる特許トロールが出てくるか、しばらく様子をみておきたいと思います。何か顕著な傾向が出てきたらまた報告しますね。



[PR]
by suziefjp | 2017-05-31 03:50 | 知的財産権
最高裁判所がガンガン判決を出してくるんで、こちらも追いつくのが大変です。。。

やはり2016年12月に「日本企業への特許侵害裁判訴状送達が郵便でオッケーになるかも?」で紹介しましたWater Splash, Inc. v. Menon (No. 16-254)事件も2017年5月22日に判決が出ました。が!日本企業への訴状送達が郵便でオッケーなのかどうか、イマイチ分からぬ、、、というのが本音でして。。。

問題の最高裁判所判決はこちら。これも最高裁版所ウェブサイトが掲載してくれている間にご覧下さいね。最高裁判所はこう決定しています:in cases governed by the Hague Service Convention, service by mail is permissible if two conditions are met: first, the receiving state has not objected to service by mail; and second, service by mail is authorized under otherwise-applicable law. つまり、送達先国がハーグ条約批准国の場合、①ハーグ条約における郵送での送達を当該国が拒否しておらず、②その他適用される法律で郵送が可とされている、という2つの条件が満たされる場合は郵送による訴状送達が可能、とな。①は以前申し上げたとおり、日本は拒否していないのでクリア、として、問題は②です。②の条件について最高裁判所が「ほら、ここにそうあるでしょ?」という意味で引用した判例が「Brockmeyer v. May, 383 F.3d 798 (9th Cir. 2004)」という事件なんですが、この事件では①ハーグ条約は郵送を認めている、②しかしその郵送方法についてまでハーグ条約は明示していないため、郵送方法を定めた米国連邦民事訴訟規則を見たところ、今回の郵送は米国連邦民事訴訟規則の要件を満たさないため、アウト!として、在英国の被告への郵送送達を無効としています。

この事件にある「米国連邦民事訴訟規則」ですが、4(f)条に外国への送達に関して具体的に定めた条文があります。4(f)条いわく「外国への送達に関する条約が無い場合、あるいは条約があり当該条約で許されている送達ではあるがその条約に送達方法が明示されていない場合、は、送達先国の法律で禁じられていない限り、(i) 手渡し、または(ii)担当判事書記官による、受領確認を要請するいかなる郵送方法、の、いずれかでの送達が可能」としています。Brockmeyer事件では、担当判事書記官が英国の被告に郵送したのではなく、原告が被告に直接郵送したため、それは「その他適用される法律」である「米国連邦民事訴訟規則」の要件を満たさないために無効だよ、となったわけです。

これをふまえて日本ではどーなるの?と考えると、日本の法律が外国裁判における在日本当事者への郵送送達を禁止しているのか?が、まず最初のポイントになります。私は日本の法律にあまり詳しくないので、何か日本法の中に外国裁判における在日本当事者への郵送送達を禁止する法律や条文があるのか分からない。。。もしご存知の方いらしたらぜひ教えてください!で、仮に外国裁判における在日本当事者への郵送送達を禁止する法律や条文がない、とすると、そのことを持って「(A)郵送送達を禁止していないと解釈すべき」なのか、「(B)日本国内の送達に関する規定を外国裁判にも自動的に適用すると解釈すべき」なのかが分からない。。。仮に(A)だとすると、Brockmeyer事件を参照して、米国連邦民事訴訟規則4(f)条の要件を満たす送達であれば可、すなわち、「米国の担当判事書記官による受領確認を要請した郵送方法」であれば送達有効、となります。で、「(B)日本国内の送達に関する規定を外国裁判にも適用すると解釈すべき」だとすると、12月の記事でも申し上げたように、日本国内の裁判では職権送達主義(=国内訴訟の訴状送達は裁判所によりなされなくてはならない)が取られています。これを「日本国内の裁判所書記官により送達されなくてはならない」と厳格に解釈すべきなのか、あるいは、「外国の裁判所書記官に送達されれば可」と解釈すべきなのか、が、今度は分からない。。。

とりあえずの対策としては、「米国裁判の担当判事書記官による受領確認を要請した郵送方法」以外で郵送送達された場合は、「(日本の法律が郵送送達を禁止していないとしても)米国連邦民事訴訟規則4(f)条の要件を満たさない送達なので無効」と主張して良いと思います。問題は、「米国裁判の担当判事書記官による受領確認を要請した郵送方法」で郵送送達された時に、「日本の法律では郵送送達そのものを禁止している」、あるいは「日本国内の裁判所書記官による送達でなくてはならない」と主張して、送達の無効を争うことが出来るか、が、謎なことなんですよ。これ、誰か日本の弁護士さんでお分かりの方がいらしたら本当に教えて欲しいです!!

なんだかすっきりしないオチになってしまって申し訳ない。繰り返しですが、とりあえず、「米国裁判の担当判事書記官による受領確認を要請した郵送方法」以外で郵送送達された場合は送達無効を主張できるであろう、というのが現段階での結論かと。これを「結論」とか呼んだら「結論」が怒ってくるよなー、と、自分でも思うレベルの報告ですいません!



[PR]
by suziefjp | 2017-05-26 03:29 | 知的財産権
さて、2016年12月に「テキサス東部地裁よ、さらば!...になるかもしれない」編で紹介させていただいた米国最高裁判所事件、判決が出ましたですよ!この裁判の背景は前述の「なるかもしれない」記事でご覧下さい。

で、肝心の最高裁判所決定はこちら でご覧いただけます。最高裁判所のウェブサイトがこの意見書を掲載している間にご覧下さい♪結論から言うと「被疑侵害品が販売されている場所ならどこでも被疑侵害者を提訴できる、ってのはダメっしょ。」ということになりましたーーー!ひゅーひゅー!!「これからどないすんねーん!」と思っている特許トロールの皆さん、残念でしたな。あっはっはーーーー!!

少しおさらいですが、この事件で問題になっていたのは米国民事訴訟法1400(b)条にある「Any civil action for patent infringement may be brought in the judicial district where the defendant resides, or where the defendant has committed acts of infringement and has a regular and established place of business」の「resides」をいかに解釈すべきか、という問題でした。この条文によると、特許侵害裁判は①被告が居住する(resides) 場所、または②被告が特許侵害行為を行い、かつ、通常の確立した事業場所を所有する場所、のいずれかで提訴されなくてはなりません。これまでは①にある「resides」が非常に広範に解釈され、「被疑侵害品が販売される場所ならオッケー」みたいになっていたわけです。で、今回、最高裁判所が「ちょいちょいちょい、それは無いわ。「resides」、居住する、とは被告の設立登記地のことよ」と明示しました。よって今後の裁判は、被疑侵害者の設立登記地、もしくは②の「被告が特許侵害行為を行い、かつ、通常の確立した事業場所を所有する場所」でのみ可能、ということになります。テキサス東部管轄地区にお店や事業所を持ち、そこで被疑侵害品を販売しちゃう方は②に該当するので「なんだよ、じゃあ結局テキサス東部から逃げられないじゃん」というのはあります。でも、これまで、テキサス東部管轄地区にお店も会社も営業所もない、つまり、なーんの縁もゆかりもないのに、なんでここで訴えらねばならぬのだ!?だった被疑侵害者にとっては、やはりこの最高裁判決は大きい!

被疑侵害者の会社や事務所が所在するホームグラウンドでの裁判を特許権者が回避しようとするならば、今後の特許侵害裁判は被疑侵害者の設立登記地(設立登記地として人気のデラウェア州など?)で多発するかもしれません。デラウェア州には連邦地方裁判所が一つ(北部、とか東部、とかは無いです)なんで、デラウェアに訴訟が多く持ち込まれるようになると判事が忙しすぎて訴訟進行が遅れるようになるかもしれませんね。この最高裁判決が出たのが5月22日の月曜なんですけど、それ以降の新たな特許侵害訴訟を見てると、見事にテキサス東部地裁以外で訴えられてます。ぱっと見た感じですが、やっぱりデラウェアが多い感じですかねー。

ここでちょっと考えてしまうのは、もし日本企業さんが被疑侵害者で、特許権者がその日本企業さんの在米子会社を被告に入れずに日本企業さんだけを訴えようとした場合はどうなるの?という点です。(在米子会社を共同被告に入れる限り、その在米子会社の設立登記地、もしくはその在米子会社が「通常の確立した事業場所を所有する場所」にひっぱられると思います。)もしアメリカで設立登記もしてないし、事業所とか支社とかもなーんにもない日本企業を訴えようとしたら、特許法上の侵害行為がどこで発生したのか、を見ることになるのかなー、と思います。米国特許法271条で直接侵害行為として定義されているのは「makes, uses, offers to sell, or sells」もしくは「 imports」なので、日本企業によるこうした行為がどこで発生したか、を同定し、その場所が管轄地になるのかと思います。ぶっ飛び特許権者が「被疑侵害品のユーザーが被疑侵害品を使って侵害行為を行った場所であればどこで提訴しても良い」と、間接侵害にもとづいて自分に有利な裁判地で提訴する、っていうこともあるかもしれません。特許侵害訴訟の訴因って、(A)直接侵害のみ、(B)直接侵害+間接侵害、(C)間接侵害のみ、の3つが論理的に考えられますが、これまでも「(C)間接侵害のみ」で来るケースは珍しいんですよ。理由はおそらく侵害立証が難しい(=客がどう使うか、による)、損害賠償算定が難しい(侵害になるよう使用された被疑侵害品のみが損害賠償対象なので、その被疑侵害品数の同定が必要)というためかと思います。だとすると、やはり特許権者、特にさっさと和解金を稼ぐことを目的とするような特許トロールは、(A)もしくは(B)で攻めたいところで、提訴地の自由を優先して(C)のみで来る、というのはそれこそ初期の取下申立とかで対抗されそうでなんで、避けるんじゃないかなあ、という気はします。

ま、これまでのテキサス東部への集中が異常でしたからね。今回の最高裁判決でテキサス東部地裁での提訴が難しくなるため、しょーもない訴訟が減るのでは、という意見も出てきているくらいです。とりあえずは「良いニュース」ということでよかったのではないでしょうか♪

[PR]
by suziefjp | 2017-05-26 01:08 | 知的財産権
去年の5月に「最高裁:特許侵害に対するLaches防御やいかに!?」で最高裁が特許侵害に対する防御の一つであるLachesについて検討中、という報告をしました。問題の詳細は5月の記事をご覧いただくのが良いんですが、結論からいきますと、最高裁が「Lachesは無しよーん。」と2017年3月21日に決定してしまいました。。。がーーーん!決定の意見書はこちらからどうぞ(リンクが無くなる前にごらんくださいね。)

ずーっと特許をやってると、やっぱりたまにあるんですよ。最高裁、それ、なんか違うくね?みたいな決定が出る時って。今回の判決もまさにそんな感じです。現在、最高裁の判事は8名ですが、7対1で「Laches無しよん」と決定されました。よって特許権者がものすごく出遅れて訴訟してきても、そこから6年遡った損害賠償回収は許されることになります。もし「Lachesは今後もありよん」と今回決定されていれば、ものすごく出遅れてきた訴訟に対してそこから遡っての損害賠償の回収は不可、とすることが可能であったものです。

この業界におられる方には、ぜひただ一人反対したBreyer判事の反対意見書(dissent。多数派の意見書の後に続いて掲載されています)を読んで頂きたい!ここに言いたかったこと、分かってほしかったことが凝縮されているんです!なんでBreyer判事はこんなに明快に分かってくれたのに、多数派の判事にはこれが分からなかったの??と思わずにはいられません。多数派の意見はAlito判事が書いてますが、先に結論ありきで、そこに向かってこじつけてみましたがいかがざんしょ?な感じがしなくもない。しかもポコポコ書き間違ってるし。(重箱の隅をつつくのが好きな方向け:意見書2頁目上から3行目「its patent」と斜字体で「First Qualityの特許である」と強調してますが、ここで引用されている特許はFirst Qualityの特許じゃなくて日本が誇る花王さんの特許なんですが。。。さらに意見書16頁目15行目「equitable estoppel bars First Quality's claims」は「SCA's claims」。当事者名を間違うって、どんだけ聞き流して結論ありきだったのさー、っていう感じが。。。)多数派は「著作権に関するPetrella事件判決が特許法にも適用する」と、どうしても持って行きたかったみたいで、その正当性を終始意見書で述べているような印象です。

少しおさらいしますと、Petrella事件では最初の著作権侵害から18年たってから侵害訴訟が起こされました。で、連邦地裁と控訴裁判所は「18年は遅すぎるでしょ」と権利行使を否定したわけですが、最高裁は「著作権法507条が『侵害から3年以内に裁判しなさい』と書いてるんだから、提訴の日から遡って3年以内に発生した侵害行為については権利行使が可能で損害賠償の回収を認めるべき」としたものです。著作権法507条は「侵害から3年以内に提訴しないとダメ」という提訴タイミングに関する時効を規定しているんですね。

一方、著作権法と異なり、特許法には「侵害からいつまでに提訴しないとダメ」という提訴タイミングを限定する規定がありません。だから10年後でも20年後でも提訴できてしまいます。そうした提訴期間の制限は無いのですが、特許法286条は「提訴の日から遡って6年までの侵害行為に関する損害賠償しか回収できませんよ」と定めています。つまり、286条は損害賠償の限定に関するものであって、提訴に関する時効を定めたものではなく、今回の争点はここにあったわけです。反対意見を書いたBreyer判事は「特許については提訴時効がないから、10年、20年待って特許技術が有効に利用されて成功するのを待ってからでも提訴ができる。そしてその時には被疑侵害者は散々設備投資等も行っていてその技術を回避することが出来なくなっている可能性が高く、ロックインされてしまう。そしてそんな風に何もしないで待った特許権者に対して、lachesを否定して過去6年分の損害賠償の回収は許される、とするのはおかしい。著作権法は特許法にくらべて随分最近成文化されたものであるから、そうした事象も勘案して例えば3年分の損害買収回収においても『被疑侵害者による貢献分』を損害賠償の算定において除外することが成文化されている。しかし特許法にはそうした『被疑侵害者による貢献分』を除外する規定も無い。そうしたことからも立法府が286条の損害賠償回収期間限定に加えてlachesの適用で不適切な権利行使を防ぐことを意図していたことは明らかではないか」と述べておられます。私もそう思う!!Breyer判事は「損害賠償は6年遡りますよ」という規定はあるが、提訴時効に関する条文は特許法になく、このギャップを埋めることを期待されているのがlachesである、という主張に賛成しています。

しかし多数派は、6年の損害賠償回収限定があればよく「特許法に『埋めるべきギャップ』はない」という立場です。どう読んでもBreyer判事の反対意見のほうが論理的にすわりがいいんですよ。多数派は「Petrella判決が特許法にも適用する」ことを前提で論理展開しているので、読んでいてあまり気持ちが良くないのは私だけでしょうか。。。どんなに後だしジャンケンをされてもそこから6年遡って損害賠償を支払わなくてはならない、というのが多数派の立場です。一応「禁反言」(エストッペル)という法理論で後だしジャンケンに対抗することもでき、多数派は「エストッペルがあるからいいじゃん」ということも言っています。これに対してBreyer判事は「多数派が言うように、エストッペルが大活躍してくれることを切に願う。」と意見書に記しています。

今回のケースでこの業界におられる皆さんがすぐに思うのは「また特許トロールが調子に乗る」ということですよね。。。うまくいけば待ちに待っても6年分の損害賠償が回収できるぞ、やほほーい!と思っている特許トロール(プラス、「じゃあ僕もトロールになろうかな♪」と考える予備軍)がきっと今頃たくさんいるんでしょう。しかも待ってもあまり悪影響が無いわけですから、特許技術がガンガン使用されるのを待ってから権利行使しよう、という人も出てくるかもしれません。せっかくちょっとトロールっぽい人達がおとなしくなりつつある感じなのに、こういう判決は切なくなります。。。あー、残念!



[PR]
by suziefjp | 2017-03-24 06:49 | 知的財産権

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


by suziefjp