米国知的財産権日記

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2017年 05月 26日 ( 2 )

最高裁判所がガンガン判決を出してくるんで、こちらも追いつくのが大変です。。。

やはり2016年12月に「日本企業への特許侵害裁判訴状送達が郵便でオッケーになるかも?」で紹介しましたWater Splash, Inc. v. Menon (No. 16-254)事件も2017年5月22日に判決が出ました。が!日本企業への訴状送達が郵便でオッケーなのかどうか、イマイチ分からぬ、、、というのが本音でして。。。

問題の最高裁判所判決はこちら。これも最高裁版所ウェブサイトが掲載してくれている間にご覧下さいね。最高裁判所はこう決定しています:in cases governed by the Hague Service Convention, service by mail is permissible if two conditions are met: first, the receiving state has not objected to service by mail; and second, service by mail is authorized under otherwise-applicable law. つまり、送達先国がハーグ条約批准国の場合、①ハーグ条約における郵送での送達を当該国が拒否しておらず、②その他適用される法律で郵送が可とされている、という2つの条件が満たされる場合は郵送による訴状送達が可能、とな。①は以前申し上げたとおり、日本は拒否していないのでクリア、として、問題は②です。②の条件について最高裁判所が「ほら、ここにそうあるでしょ?」という意味で引用した判例が「Brockmeyer v. May, 383 F.3d 798 (9th Cir. 2004)」という事件なんですが、この事件では①ハーグ条約は郵送を認めている、②しかしその郵送方法についてまでハーグ条約は明示していないため、郵送方法を定めた米国連邦民事訴訟規則を見たところ、今回の郵送は米国連邦民事訴訟規則の要件を満たさないため、アウト!として、在英国の被告への郵送送達を無効としています。

この事件にある「米国連邦民事訴訟規則」ですが、4(f)条に外国への送達に関して具体的に定めた条文があります。4(f)条いわく「外国への送達に関する条約が無い場合、あるいは条約があり当該条約で許されている送達ではあるがその条約に送達方法が明示されていない場合、は、送達先国の法律で禁じられていない限り、(i) 手渡し、または(ii)担当判事書記官による、受領確認を要請するいかなる郵送方法、の、いずれかでの送達が可能」としています。Brockmeyer事件では、担当判事書記官が英国の被告に郵送したのではなく、原告が被告に直接郵送したため、それは「その他適用される法律」である「米国連邦民事訴訟規則」の要件を満たさないために無効だよ、となったわけです。

これをふまえて日本ではどーなるの?と考えると、日本の法律が外国裁判における在日本当事者への郵送送達を禁止しているのか?が、まず最初のポイントになります。私は日本の法律にあまり詳しくないので、何か日本法の中に外国裁判における在日本当事者への郵送送達を禁止する法律や条文があるのか分からない。。。もしご存知の方いらしたらぜひ教えてください!で、仮に外国裁判における在日本当事者への郵送送達を禁止する法律や条文がない、とすると、そのことを持って「(A)郵送送達を禁止していないと解釈すべき」なのか、「(B)日本国内の送達に関する規定を外国裁判にも自動的に適用すると解釈すべき」なのかが分からない。。。仮に(A)だとすると、Brockmeyer事件を参照して、米国連邦民事訴訟規則4(f)条の要件を満たす送達であれば可、すなわち、「米国の担当判事書記官による受領確認を要請した郵送方法」であれば送達有効、となります。で、「(B)日本国内の送達に関する規定を外国裁判にも適用すると解釈すべき」だとすると、12月の記事でも申し上げたように、日本国内の裁判では職権送達主義(=国内訴訟の訴状送達は裁判所によりなされなくてはならない)が取られています。これを「日本国内の裁判所書記官により送達されなくてはならない」と厳格に解釈すべきなのか、あるいは、「外国の裁判所書記官に送達されれば可」と解釈すべきなのか、が、今度は分からない。。。

とりあえずの対策としては、「米国裁判の担当判事書記官による受領確認を要請した郵送方法」以外で郵送送達された場合は、「(日本の法律が郵送送達を禁止していないとしても)米国連邦民事訴訟規則4(f)条の要件を満たさない送達なので無効」と主張して良いと思います。問題は、「米国裁判の担当判事書記官による受領確認を要請した郵送方法」で郵送送達された時に、「日本の法律では郵送送達そのものを禁止している」、あるいは「日本国内の裁判所書記官による送達でなくてはならない」と主張して、送達の無効を争うことが出来るか、が、謎なことなんですよ。これ、誰か日本の弁護士さんでお分かりの方がいらしたら本当に教えて欲しいです!!

なんだかすっきりしないオチになってしまって申し訳ない。繰り返しですが、とりあえず、「米国裁判の担当判事書記官による受領確認を要請した郵送方法」以外で郵送送達された場合は送達無効を主張できるであろう、というのが現段階での結論かと。これを「結論」とか呼んだら「結論」が怒ってくるよなー、と、自分でも思うレベルの報告ですいません!



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by suziefjp | 2017-05-26 03:29 | 知的財産権
さて、2016年12月に「テキサス東部地裁よ、さらば!...になるかもしれない」編で紹介させていただいた米国最高裁判所事件、判決が出ましたですよ!この裁判の背景は前述の「なるかもしれない」記事でご覧下さい。

で、肝心の最高裁判所決定はこちら でご覧いただけます。最高裁判所のウェブサイトがこの意見書を掲載している間にご覧下さい♪結論から言うと「被疑侵害品が販売されている場所ならどこでも被疑侵害者を提訴できる、ってのはダメっしょ。」ということになりましたーーー!ひゅーひゅー!!「これからどないすんねーん!」と思っている特許トロールの皆さん、残念でしたな。あっはっはーーーー!!

少しおさらいですが、この事件で問題になっていたのは米国民事訴訟法1400(b)条にある「Any civil action for patent infringement may be brought in the judicial district where the defendant resides, or where the defendant has committed acts of infringement and has a regular and established place of business」の「resides」をいかに解釈すべきか、という問題でした。この条文によると、特許侵害裁判は①被告が居住する(resides) 場所、または②被告が特許侵害行為を行い、かつ、通常の確立した事業場所を所有する場所、のいずれかで提訴されなくてはなりません。これまでは①にある「resides」が非常に広範に解釈され、「被疑侵害品が販売される場所ならオッケー」みたいになっていたわけです。で、今回、最高裁判所が「ちょいちょいちょい、それは無いわ。「resides」、居住する、とは被告の設立登記地のことよ」と明示しました。よって今後の裁判は、被疑侵害者の設立登記地、もしくは②の「被告が特許侵害行為を行い、かつ、通常の確立した事業場所を所有する場所」でのみ可能、ということになります。テキサス東部管轄地区にお店や事業所を持ち、そこで被疑侵害品を販売しちゃう方は②に該当するので「なんだよ、じゃあ結局テキサス東部から逃げられないじゃん」というのはあります。でも、これまで、テキサス東部管轄地区にお店も会社も営業所もない、つまり、なーんの縁もゆかりもないのに、なんでここで訴えらねばならぬのだ!?だった被疑侵害者にとっては、やはりこの最高裁判決は大きい!

被疑侵害者の会社や事務所が所在するホームグラウンドでの裁判を特許権者が回避しようとするならば、今後の特許侵害裁判は被疑侵害者の設立登記地(設立登記地として人気のデラウェア州など?)で多発するかもしれません。デラウェア州には連邦地方裁判所が一つ(北部、とか東部、とかは無いです)なんで、デラウェアに訴訟が多く持ち込まれるようになると判事が忙しすぎて訴訟進行が遅れるようになるかもしれませんね。この最高裁判決が出たのが5月22日の月曜なんですけど、それ以降の新たな特許侵害訴訟を見てると、見事にテキサス東部地裁以外で訴えられてます。ぱっと見た感じですが、やっぱりデラウェアが多い感じですかねー。

ここでちょっと考えてしまうのは、もし日本企業さんが被疑侵害者で、特許権者がその日本企業さんの在米子会社を被告に入れずに日本企業さんだけを訴えようとした場合はどうなるの?という点です。(在米子会社を共同被告に入れる限り、その在米子会社の設立登記地、もしくはその在米子会社が「通常の確立した事業場所を所有する場所」にひっぱられると思います。)もしアメリカで設立登記もしてないし、事業所とか支社とかもなーんにもない日本企業を訴えようとしたら、特許法上の侵害行為がどこで発生したのか、を見ることになるのかなー、と思います。米国特許法271条で直接侵害行為として定義されているのは「makes, uses, offers to sell, or sells」もしくは「 imports」なので、日本企業によるこうした行為がどこで発生したか、を同定し、その場所が管轄地になるのかと思います。ぶっ飛び特許権者が「被疑侵害品のユーザーが被疑侵害品を使って侵害行為を行った場所であればどこで提訴しても良い」と、間接侵害にもとづいて自分に有利な裁判地で提訴する、っていうこともあるかもしれません。特許侵害訴訟の訴因って、(A)直接侵害のみ、(B)直接侵害+間接侵害、(C)間接侵害のみ、の3つが論理的に考えられますが、これまでも「(C)間接侵害のみ」で来るケースは珍しいんですよ。理由はおそらく侵害立証が難しい(=客がどう使うか、による)、損害賠償算定が難しい(侵害になるよう使用された被疑侵害品のみが損害賠償対象なので、その被疑侵害品数の同定が必要)というためかと思います。だとすると、やはり特許権者、特にさっさと和解金を稼ぐことを目的とするような特許トロールは、(A)もしくは(B)で攻めたいところで、提訴地の自由を優先して(C)のみで来る、というのはそれこそ初期の取下申立とかで対抗されそうでなんで、避けるんじゃないかなあ、という気はします。

ま、これまでのテキサス東部への集中が異常でしたからね。今回の最高裁判決でテキサス東部地裁での提訴が難しくなるため、しょーもない訴訟が減るのでは、という意見も出てきているくらいです。とりあえずは「良いニュース」ということでよかったのではないでしょうか♪

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by suziefjp | 2017-05-26 01:08 | 知的財産権

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


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