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米国知的財産権日記

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恐怖体験 -デポジション その1

今日も特許侵害訴訟は訴訟のお話ですが、証拠開示手続きの一つ、「デポジション(deposition)」について解説します。デポジションは正確には「証言録取」と翻訳されるようですが、もうご存知の方は「デポジション」「デポ」と呼んでますね。

証拠開示手続きであるディスカバリーは3つの方法で証拠を集めるわけですが、

1. Interrogatories
2. Document Requests
3. Depositions

の3つになります。1.は「質問状」で、書面で質問を提出し、それに対する回答を相手方から得るもの、2はそのままで、「こういう書類を出せ!」と要求するもの、そして、3が今回のデポです。デポでは、実際に証言をとらせろ、ということになります。たとえばこんな感じですね「御社の経理システムについて最も詳しい人の証言を取らせろ」と。こういわれると、弁護士さんを交えて、誰の証言がいいのか、を検討することになります。ちなみに、こういう「~~について最も詳しい人」という指定をされる場合と、名指しの場合があります。名指しの場合は、たとえその人が中身を知らなくても、向こうが名指ししてきたわけですから、こっちとしては、「ざまーみろ」と思って終わりますけど、「~~について一番詳しい人」といわれたときに、出した証人が「わたし、ワカリマセ~ン」だと、やばいですね。裁判所に懲罰を申し立てられる可能性があるので、ここは悪あがきはせず、ちゃんと詳しい人出してください。。。

で、このデポジション。参加したことがある人はご存知の通り、ものすごーーーーーーく手間とお金がかかります。例えば、日本の企業が米国で特許侵害裁判で訴えられて、デポとして「この対象製品の市場に最も詳しい人」という要請をされたとしましょう。で、その人が日本在住の日本人従業員である、と。

<どーんな風にやるの?>
よくあるのは、ご本人に、相手方の弁護士が質問をします。それに対してご本人が答えます。で、裁判ルール上、聞いちゃいけないこと、聞かれても答えなくてもいいこと、なんかがありますから、そういうのを守るために、ご本人の弁護士も出席します。また、日本語を母国語とするご本人の場合、いくら英語ができても、99%、日本語でやるほうがいいです。なので、相手方が通訳をつれてきます。これに対して、こちら側も、相手方の通訳の通訳が正しいか、を、チェックするためのチェック通訳を連れて行きます。(通訳の件については次回以降でちょっとカバーしますね。)そして、多くの場合、デポジションの様子をビデオ録画しますから、ビデオ技術者、そして、会話というか、質疑を記録する記録係(速記者みたいな感じですね)が必要です。そして、ご本人の所属する会社でこの裁判を担当している知財担当者や法務担当者、も出席、という感じです。結構大人数なんですよ。

<誰が参加するの?>
上のをまとめると、ご本人、ご本人側の弁護士、相手方の弁護士、ご本人側の法務あるいは知財担当者、通訳、チェック通訳、ビデオ技術者、ですね。

<どこでやるの?>
日本でやる場合は、アメリカ領事館や大使館です。これは領事館や大使館に場所を借りるための予約をしなきゃいけないので、ものすごーーーく前倒しでプランする必要があります。なんでも、すんごい混んでるらしいですよ。そんなに訴訟が多いのか。さらに!!重要なことに、アメリカ人の弁護士さんがこのデポジションをやるために日本に入国する場合、特別のビザが必要です。普通、アメリカのパスポートを持ってる人が日本に来るのはビザ免除ですが、これは別なんですよ。なので、日本にあるアメリカ領事館や大使館で行う場合は自分の側のアメリカ人弁護士も、相手方のアメリカ人弁護士も、ビザをとって日本に入国する必要があります。
日本じゃなくて、ご本人が知財・法務担当者と米国に行って行う場合は、自分の側の弁護士事務所の会議室とかでやってもらうほうが、少しでもリラックスできるのでおすすめです。

<どれくらい時間がかかるの?>
トピックによって異なります。でも、日本語で行う場合、通訳さんが入るので、時間が2倍かかりますよね。ですから、短くて1日、長くて2日を覚悟しましょう。2日間を越えるような場合は、自分の弁護士に「それは不必要に長すぎる」と、まずは交渉をさせるべきです。
ここでの注意は、本番が1-2日、ということです。本番の前に準備が必要です。準備は、3-5日程度を見ておくと良いでしょう。自分の弁護士が、デポジション心得を説明してくれたり、何を聞かれそうか、こういうことを聞かれたらどうするの?とか、練習をしてくれます。ですから、トータルで、1週間、アメリカでやるなら移動時間とかも含めて10日程度を見ておくほうがいいですね。

<タイミングは?>
これは、「ご本人」が決まった段階で、いつならできる、ということを相手方弁護士と交渉します。上にあるように、移動や準備をも含めて時間かかりますし、日本でやる場合でも領事館や大使館の予約、ビザの手配とかいろいろありますから、前倒しにスケジュールする必要がありますね。


ざっと、こんな感じでしょうか(まあ、まだ中身に全然入ってないですけど。。。)で、よく聞かれるのが、アメリカでやるのと、日本でやるのと、どっちがいいですか?と。これねー、なんともいえないんですよ。デポのご本人がとんでもなく忙しい人だったりすると、日本でやるほうがいいんですけど、そうすると訴訟費用がすんごい高くなります。。。と、いうのも、アメリカ人の弁護士さんって、みんなこのご時世にファーストクラスで移動するんですよね。ロースクール出たてのペーペーの洟垂れ小僧ですら、ファーストですよ。冗談じゃない。聞いただけで、お前なんざあ、貨物にいれてやろうか!と、はらわた煮えくり返りますが、ペーペーもファーストです。で、ホテルも、絶対、ある程度いいホテルに泊まるじゃないですか。もう自分のところの弁護士費用だけで爆発!って感じです。

アメリカでやると、「ご本人」が余計に時間をとられる、という欠点があります。ただし、コスト削減の折、きっと多くの人がエコノミーで飛んでおられるでしょうし、ホテルも、そんなに高いところにお泊りになってない。。。と、すると、結局、何を優先するか、なんですよ。ご本人が通常業務をする時間が増えることで得られる価値と、訴訟費用のバランスです。なので、一概に「アメリカがいい」とか「日本がいい」とかはいえないんです。役立たずでごめんなさい。ただ、アメリカでやるなら、自分の側の弁護士事務所でやりましょう。準備・練習とかもそこでやりますから、少しでも慣れ、リラックス効果が期待できます。

では、次回はもう少し中身に入りますね。
by suziefjp | 2008-09-17 06:47 | 知的財産権

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


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