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米国知的財産権日記

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売れる特許

なんだか景気が回復しつつあるのかそうじゃないのか、も一つはっきりしなくて気持ち悪い今日この頃。シカゴのお天気もいいのか悪いのか、はっきりしないのが続いててなんか気持ち悪いです。

久しぶりに特許流通のお話を。個人や大学、企業からも「アメリカではどういう特許が売れるのか」ということを聞いてくださることが多くなっているのは不景気だからかな?皆さん、不要特許の売却をお考えなのでしょうか。

さて、売れる特許、ですが、うー、はっきり回答できればステキなんですけど、難しいかなー。でも、これまでの経験で以下のことは言えるかと思います:

①ヒモ付きじゃないこと。100%権利が移転すること。
これは、例えばPTO出願して日本だけで特許化されてる、あと米国でPTO出願に基づく権利申請中、みたいなポートフォリオだと、PTO出願も日本特許も、米国の出願もぜーんぶまとめて売っちゃう、ということです。買い手が嫌がるのは、「なんか抜けてるんじゃないか」というコトなんです。ライセンス許諾であれば、たとえば「日本で実施する権利」とか「アメリカで実施する権利」とかバラ売りならぬバラ許諾をするのもアリかと思いますが、買う、となると、買った後、自分の事業方針にあわせてどこか別の国でも権利化したい、とか、色々出てくるわけです。出願中のものを買ったら、ちょっと今のままだったら弱いからクレーム修正したいな、とか。とにかく、そういうことが全部できるように、買い手は出願、外国対応、継続、そういったものを全部まとめて買いたがりますから、できるだけ「全部売っちゃう」ほうが買い手がつきやすいです。。あ、売り手が自己実施権は残す、ってのは割りと受け入れられるみたいです。ただし自己実施権のみですよ? 「サブライセンス権つき自己実施権」の留保とかはダメです。

②ユニークじゃないこと
これ、意外に思われるかもしれないんですがとても大事。ユニークといえば、昔、ブリトニー・スピアーズが「ユニーク」と言う英語を漢字にしてタトゥーにしてたことがありました。「」と(笑)。かなり好き。誰かが教えてあげたのか、あのタトゥー、消しちゃったんじゃないかな。。。ああ、もったいない。
おっと、話がそれました。「実は誰もやってないんだよ、この技術」みたいなユニークなものって、売れづらいんですよ。よくね、「これは誰もやってない。早い者勝ちで、勝ってくれた人が事業化してくれたら絶対大成功する。」という人は、事業化リスクがどの程度あるのか考えてないケースが多いですね。特に個人の方に強い傾向です。で、結局売れなくて「俺の発明の価値を誰もわかんない、世の中バカばっかりだーーーっ!」と、叫んでみる。別にいいけど、叫んでもお金は入ってきませんぜ・・・。
実は売れ易い特許、というのは「その特許を購入することで自社のその技術分野のポートフォリオが強化できる、と思う企業がたくさんいる特許」であって、決してユニークなものではないんです。理由は、「新規事業のために」特許を購入する人がまだまだ少ないからです。特に今みたいな不況では外から買って来た特許を使って新規事業の立ち上げを行うほどリスクがとれる企業が殆どないです。だから売れる特許は、企業から見て「おっと、うちのこの技術エリアの特許、ここにちょっと穴があるじゃん。不安だなー。おー、今売りに出てるこの特許買ったらこの穴、埋まるじゃん!」という感じのものです。ものすごく景気が回復してみんなガンガンリスクがとれるようになったら、ユニークなものも売れるようになるかもしれませんが、それはまだしばらく先のことかも・・・。

今、特許売却をお考えであれば、ぜひこの2点を念頭に、売るか単に放棄するか考えていただくのがいいと思います。私は売却にあまり費用がかからないなら、売ろうとしてみて売れなければ放棄、という二段階でいいんじゃないかなー、と思います。そのほうがあきらめもつくし。よく大企業で不要特許を売却処分なさりたい、という方が「事業化してもらえるように中小企業とか、事業会社に売って欲しい」とおっしゃいます。そもそもこの特許が自社の事業範囲に合わないから不要、売却処分、とされているかもしれないんですけど、そうじゃなくて単に使ってないケースもかなりあると思うんですよ。それを事業で使ってくれるところに売ってくれ、と言われても。。。てのは正直、業者として言いたい。客商売だからあんまり言えないけど(涙)。あと、自分達が事業撤退して不要特許になったものを売却処分したいケースでも、「これで新規事業を立ち上げてくれるところに売りたい。もしくは事業で使ってくれるところ。あ、でも競合他社はダメよ。」という条件をつけるケース。あなたたちのような財力のある大企業でも撤退する事業分野で、どこがこれから事業立ち上げられますかい!?しかも競合はダメって、もうこの事業、撤退するんだからいーじゃん!とおもいますが、そうはいかんらしい・・です。で、結局上手く売却できなくて「やっぱり特許って流通できないんだ」と結論する。ほとんど「やっぱり特許は流通できない。。。」って言いたいために試してるんじゃないか、と思うようなご依頼もたくさんあります。そういうのはお受けしても満足していただけませんし、「あそこに頼んでもうまくいかなかった」と言われて終わっちゃうので、お断りするケースもたくさんあります。

やっぱりはっきりポジション取れないとしんどいですよね。成功率100%、リスクゼロ、で何かできるならみんなやりたいと思うんですけど、そんなの不可能だから、きっちり「成功の定義」、何が出来ればオッケー、みたいなのを決めないと結局どんなことにも着手できなくなっちゃいます。売却も然り。まずは市場に出してみる、で、あ、こういうの売れないんだー、とか、あ、売れたー、すごーい、みたいなのを実感するだけでもまずは十分価値があるんじゃないかと思います。
by suziefjp | 2009-06-10 07:34 | 知的財産権

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


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