米国知的財産権日記

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前回報告しました裁判管轄地の適性判断基準、「通常かつ確立した事業地」に関するテキサス東部地裁のギルストラップ判事による解釈ですが、連邦巡回控訴裁判所が「広すぎ~~!」という判断を9月21日に出しました。連邦巡回控訴裁判所は①物理的存在がその地区になくても、その地区で『通常かつ確立した事業地』が認められ得るのか、そして②在宅勤務社員がその地区にたまたま居住すれば、それは『物理的存在』なのか、の二点を判断したわけですが、①については何らかの物理的、地理的存在が必要、とし、②についてはたまたま在宅勤務者の家がある、というだけでは足りない、としました。連邦巡回控訴裁判所の意見書はこちらからご覧いただけますので、ご興味のある方はリンクがあるうちにご覧くださいね。

連邦巡回控訴裁判所はまず大前提として、被告の「通常かつ確立した事業地」とみなされるには「物理的存在」があること、「通常かつ確立した存在」があること、そしてそうした場所が「被告がコントロールする場所」であること、の3点が満たされることが必要である、としました。

「物理的存在」であるためには、その場所から事業が行われていること、例えば小売店舗だとか工場だとか、支店とかまではいかなくても、その場所に在庫が置かれているとか、お客様に配るためのカタログがそこに積まれているとか、その程度のことはやっぱり必要だよね、と。そして「通常かつ確立した存在」として、まず「通常」に関しては、安定しているとか、統一性があるとか、秩序だっているとか、組織的な存在だとか、そういうのじゃなきゃね、と。そして「確立した」に関しては定着しているもの、と。なので、例えば半年に一度、同じ展示会場で開催される業界イベントに必ず参加しているとしても、そうした参加はあくまでも「一時的なもの」に過ぎず、その展示会場の存在する地区に「通常かつ確立した存在」がある、とは言えない、とのことです。一定期間、例えば5年ずっとそこに定着した組織がある、などの場合は「通常かつ確立した存在」がある、と言えそうです。最後の「被告がコントロールする場所」ですが、在宅勤務社員の家がその地区にあるとしても、被告会社がその家を所有していたり、家賃を負担していたり、というわけではなく、従業員が会社の許可なく自らの意思で引っ越して良いような場合、これは「被告である会社がコントロールす場所」とは言えない、とのことです。なので、もしアメリカにも社宅なるものがあるのであれば、社宅だったりすると「被告がコントロールする場所」に該当するのかな、と思います。しかし会社として「自宅からちゃんと働いてくれるんであれば、自宅の場所はどこでもいいし、好きに引っ越してもらっていいっす。」的な在宅勤務であれば、そうした在宅勤務場所は「会社がコントロールする場所」にはならない、ということになります。

今回の事件では、在宅勤務社員の自宅がテキサス東部地裁にあったわけですが、連邦巡回控訴裁判所は、その自宅に在庫やカタログがあるわけではないし、被告がその自宅を所有していたり家賃を払っていたりするわけでもなく、かつ、在宅勤務者の意思で引っ越しも出来る、という状況では、在宅勤務社員の自宅を被告の『通常かつ確立した事業地』とすることは不適切、としました。

インターネット時代で、これからも在宅勤務者が増えていくことが予想されます。今回連邦巡回控訴裁判所が出した判断をふまえて、在宅勤務者の取り扱いを社内規定で明確にしておくのもリスク管理の一つとして良いかもしれませんね。


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by suziefjp | 2017-09-26 02:58 | 知的財産権 | Comments(0)
なんと2017年もはや4分の3が終わろうかという今日この頃。。。早いっ!
そんなわけで、以前報告させていただいた最高裁判所のTC Heartland判決からも約4ヶ月。TC Heartland判決が出るまでは、裁判管轄地の適性判断基準のひとつである「通常かつ確立した事業地」(regular and established place of business)が特許裁判で検討されることはほとんどありませんでしたが、TC Heartland判決を受けて、少しずつですがこの文言をいかに解釈すべきか、という判決が出てき始めているので少し紹介しますね。

まずはTC Heartland判決の影響で特許侵害裁判提訴数が激減したテキサス東部地裁ですが、有名判事のギルストラップ判事がRaytheon Co. v. Cray, Inc., Civil Action No. 2:15-CV-01554-JRG, 2017 U.S. Dist. LEXIS 100887 (E.D. Tex. June 29, 2017)という事件において、この文言をどう解釈するか、について述べています。はなはだテキトーではございますが、翻訳すると以下のような感じです:

まず最初にテキサス東部地裁管轄地に被告が保有する、資産、在庫、インフラ、人材といった物理的存在の程度を検討する。小売店や倉庫、その他の施設がこの地区にあるのなら、テキサス東部地裁に「通常かつ確立した事業地」あると判断する方向に大きく傾くであろう。。。次に、被告が対内、対外的にこの地区に自らが存在しているということをどの程度知らしめているかの程度を検討する。3つめには被告がこの地区における自らの存在からどの程度利益を得ているかを検討するが、これは売上額の検討に限定するものではない。最後に、裁判所は被告がこの地区に存在する潜在顧客、顧客、ユーザー、その他にターゲットを絞って行うやりとりの程度、地域に絞ったカスタマーサービスや、この地区で継続する契約関係、ターゲットを絞ったマーケティングといったものを含めて、その程度を検討する。

これに対しては、「これでは広く『通常かつ確立した事業地』が認められることになり、TC Heartland判決の影響を皆無にしてしまうに等しい」と、かなりの批判が出ていました。また当事者であるCray Inc.もこの決定を不服として連邦巡回控訴裁判所に控訴しています。控訴申立書においてCray Inc.は「物理的存在がその地区になくても『通常かつ確立した事業地』が認められる得るのか」、「在宅勤務の社員がその地区にたまたま居住すれば、それは『物理的存在』とされるのか」の二点を具体的な問題として連邦巡回控訴裁判所にたずねています。特に後者は、インターネットの普及で在宅勤務が増えつつある中、非常に重要な問題になるのではないかと思います。連邦巡回控訴裁判所がこの控訴を取り上げるかは本日時点では未定です。

一方、TC Heartland判決の影響で(多くの会社がデラウェアを設立登記地としているため)特許侵害裁判提訴数が逆に激増しているデラウェア州では、最近になって「小売店舗などが必要とまでは言わないが、何らかの物理的存在は必須」という判決を出しています。その事件では、被告はデラウェアを含む全米で製品を販売しており、営業さんはデラウェア内の顧客とコンタクトがあるが営業さん自身がデラウェア在住ではなく、かつて一人の営業さんが19ヶ月ほどデラウェアに住んでいたが、その人はデラウェアの顧客担当ではなかったし、かつ、その営業さんはすでに会社をやめている、という状況でした。この状況ではデラウェアに物理的存在があるとは言えない、とされました。この一方で、つい最近、Bristol-Myers Squibb Company et al v. Mylan Pharmaceuticals, Inc., 1-17-cv-00379 (DED September 11, 2017)という事件では、デラウェア連邦地方裁判所の管轄権が認められたのですが、これは製薬系の方ならよくご存知のAbbreviated New Drug Application (ANDA) 訴訟の事件です。裁判所は、被告自身はデラウェアに物理的存在を持たないものの、被告は大きなグループ会社の一員で、そのグループ内で規制当局の認可を得る役割を担っており、被告自身が頻繁にデラウェア連邦地方裁判所にANDA訴訟を申し立てていること、被告の働きによって裁判に勝利すればグループのジェネリック薬がデラウェアを含む全米で広く販売されること、そのグループ会社にはデラウェアで設立登記されている会社が多く含まれること、は、被告の「通常かつ確立した事業地」の有無の判断において大きく考慮されてしかるべき、としました。都合よくデラウェアの裁判所をしょっちゅう使ってるのに、自分に都合が悪いときは「デラウェア関係ない」って、それはダメでしょ?ってな感じでしょうか。

管轄地判断における「通常かつ確立した事業地」解釈に関する判決はまだこれからも出てくると思いますので、適宜アップデイトしていきたいと思います!





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by suziefjp | 2017-09-19 02:06 | 知的財産権 | Comments(0)

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


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