米国知的財産権日記

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前回、日本企業にとってあまり楽しくない上訴事件の報告をさせていただきましたが、2016年を何か元気が出るかもしれないニュースで締めたいもんではありませんか♪と、いうことで、同じ上訴受理でも日本企業にとって良いニュースをお届けします。

2016年12月14日に最高裁判所が TC Heartland v. Kraft Food Brands Groupという事件の上訴を受理しました。ここで争われているのは「特許侵害事件において、被疑侵害者(被告)はどこで提訴され得るのか」です。皆様ご存知のとおり、現在はざっくり言ってしまうと被疑侵害者は被疑侵害品が販売されている州で提訴され得ます。広く販売されている製品であればアメリカの殆どの州で提訴され得ることになり、したがって特許権者寄りの判決が出やすいとされるテキサス東部地裁が特許権者(特にパテントトロール)に大人気を博してきたものです。データによると新たに開始される特許侵害裁判のうち半分近くがテキサス東部地裁で提訴されているらしく、テキサス東部地裁のギルストラップ判事はアメリカで最も担当時件数が多い連邦判事としても有名です。

今回の上訴では、やはりテキサス東部地裁で訴えられた被告がやってらんねーよ、と、この点を争ったかと思いきや、この上訴事件にはテキサス東部地裁がかかわっていないのがヒネリですな。この事件ではインディアナ州法人である被疑侵害者がデラウェア州で提訴され、それってどーなんですか、っていうのが最高裁判所まで上がってきたものです。
特許侵害裁判については連邦訴訟規則(Federal Rules of Civil Procedure)の1400条に特別の規定があり、「Any civil action for patent infringement may be brought in the judicial district where the defendant resides, or where the defendant has committed acts of infringement and has a regular and established place of business.」と定められています。この「resides(居住する)」がある判決から「その州が人的管轄権を持つならその州に居住とみなす」とされてきたために、その州で被疑侵害品が販売されていればその州で提訴され得る、となっていたわけです。

今回の上訴で被疑侵害者は「法人にとって居住するとはその州で設立されたことを意味する」と主張しています。もし最高裁判所がこの被疑侵害者の考え方を採用すると、これまではテキサス東部に集中していた特許侵害裁判が、今度は会社設立が多い場所としてよく知られるデラウェア州に集中する可能性があります。一般に、デラウェア州の判事は非常に中立で「特許権者寄り」ということはありません。優秀な判事さんもたくさんおられ、IPR係属中の訴訟一時停止にもオープンですので被疑侵害者にとってはやりやすい裁判地といえます。

さてさて、さらば、テキサス東部地裁となるか!?いや、別にテキサスでもいいんですけど、要はいいがかりみたいないい加減な特許侵害主張が減少するのであればテキサスでもデラウェアでもいいんですよね。。。テキサス東部を離れることで、いい加減な特許侵害主張に対して訴訟初期の取り下げ申立がしっかり検討してもらえて有効な対抗手段となるのであれば、それが一番です。

この事件と前回おしらせしたハーグ条約の件は、最高裁がどう判断するかドキドキです~~!
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by suziefjp | 2016-12-29 07:26 | 知的財産権 | Comments(0)
お久しぶりでございます。しばらく時間が空いた間にトランプ氏が大統領選挙で勝っちゃったりして、なんだかもうエライことです。

そんなエライところにまたしてもエライことになるかもしれないことが起きてしまいました。知財事件に限らず、労働問題でも契約違反でもなんでも、日本企業をアメリカで提訴することがとっても簡単になってしまうかもしれません。と、いうのは12月2日に米国最高裁判所が国際訴状送達に関するハーグ条約の解釈を求める上訴を受理しちゃったんです。事件はWater Splash, Inc. v. Menon (No. 16-254)で、もともとはアメリカの会社がカナダの個人をビジネス干渉他を理由に訴えたものです。アメリカの会社が訴状をカナダに郵送したのですが、返事がなく、欠席裁判で企業有利の判決になったのですが、カナダの個人が郵送による訴状送達は無効として欠席裁判判決の取り消しを求めた事件で、「郵送による訴状の送達はハーグ条約で認められているか」という問題が最高裁判所に上がってしまったものです。

ご存知の方も多いと思いますが、米国裁判所で日本企業を訴えようとすると、ハーグ条約にもとづく訴状送達をせねばならず、日本の裁判所経由で翻訳を提出して、、、としている間にお金も時間もかかるため、特許侵害裁判だと被疑侵害品を販売している米国子会社だけが訴えられることがよくあります。特許権者は日本親会社を提訴しないことで面倒なハーグ条約の手続きを省略できるのですが、証拠開示手続では製品設計等の技術情報はすべて日本の親会社が持っていて技術情報を米国子会社経由で入手するには制限もあり、侵害立証が難しくなってしまうというデメリットがあります(米国の多くの判例で、子会社が親会社に書類を全部出せ、というのはさすがに限界があるよね、という点が認知されています。さらに日本は訴訟証拠提供のハーグ条約には批准していないので、訴訟当事者ではない日本の親会社に直接書類提出を要求する手段が米国の特許権者にはありません。)実務において、この点を利用して日本親会社がもつ資料を証拠開示手続きで出さないよう争ったご経験をお持ちの方もたくさんいらっしゃるかもしれません。

ハーグ条約の10(a)条では「Convention shall not interfere with (a) the freedom to send judicial documents, by postal channels, directly to persons abroad」とあり、批准国が10(a)条を明示的に拒否しなければ10(a)条が適用されます。日本は拒否していませんので、日本在住の企業を米国で訴える場合、郵送で送達できるのでは?という説が出てくるわけです。現在は米国の判例でもこの「send(郵送)」は「serve(送達)」を含まない等の諸説があり、郵送による訴状送達の可否が明確ではありません。さらに日本法はそもそも職権送達主義(=国内訴訟の訴状送達は裁判所によりなされなくてはならない)であり、10(a)条が郵送などによる当事者送達主義を認めるものであったなら日本は拒否していたでしょうよ、拒否してないってことは違うんですよ、的な立場で、日本は10(a)条を解釈してきたのかもしれません。

今回、米国最高裁判所がこのハーグ条約10(a)条の解釈をすることになってしまったので、「郵送オッケー♪」と解釈されると、米国訴訟における日本企業への訴状送達がものすごく簡単になり、ひいては米国で日本企業を提訴することがものすごく簡単になります。すると、特許侵害訴訟ではこれまでの米国子会社のみを訴えるアプローチから日本本社を訴えるアプローチに切り替わる可能性もあり、そうなると、日本本社が証拠開示手続に当事者として対応しなくてはならなくなります。もし郵送された訴状に対応しなければ、欠席裁判となり、相手方が求める要求どおりの判決となってしまう可能性もあります。

最高裁判所が扱う事件では、第三者がいずれの立場を支持するか、を表明するためのamicus briefの提出が許されているので、今回の事件でもたくさんの法曹団体や企業がamicus briefを提出することが予想されます。しかしこれ、条約の話なのに、勝手にアメリカで解釈しちゃっていいの??というのがどうしてもひっかかる!日本の外務省、これ、いいんでしょうか?日本国内法(=職権送達主義)とも齟齬が出る可能性がありますし、どーすんの??なんか国際条約を「アメリカで解釈決めちゃっていーじゃん。」って、アメリカっぽいけど納得できない。。。

日本企業でも、大きな影響を受けるご心配がある場合はアメリカの弁護士さんに相談なさってamicus briefの提出をご検討なさるのも良いかもしれません。この事件の最高裁判所の判断は必ずまた報告したいと思います!
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by suziefjp | 2016-12-08 05:39 | 知的財産権 | Comments(0)

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


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