米国知的財産権日記

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ITCのEPROMsテスト (2)

本当は昨日で仕上げてしまおうと思ったEPROMsテスト、ちょっとバタバタして今日になってしまいました。昨日はAsh Wednesdayで、街なかでは額が黒い人が結構いました。これが教会で行われる儀式の結果である、と、知らなかったときには、あやうく「あなた、額が汚れてますよ?」と、教えてあげようかと思ったことがあります(一緒にいた友人に「あの人、汚れてるよ?教えてあげたほうがいいんじゃない?」と言って爆笑されたのはもう何年前のことか・・・。)すいません、コテコテの仏教徒なもので。。。そして今日のシカゴは嵐です。雷もゴロゴロ。こんな天気は久しぶりです。

で、EPROMsテストです。9つの要素のうち、5つまで紹介していたので、続きの6つめからです。

6. Availability of non-infringing alternatives: 非侵害代替品の入手性-イマイチの訳になりましたが、要は、代替品が簡単に手に入るのか否か、です。問題になっている特許を侵害しない代替品が簡単に入手できるなら、排除命令が出やすくなります。

7. Liklihood downstream products contains infringing articles: 完成品が侵害品を内蔵している可能性 - これは、例えば同じ完成品でも部品が複数供給になっていて、ある完成品は侵害を主張されている部品を使用しているが、ある完成品は別の部品を使っていて問題の部品が内蔵されていない、というようなものが混在している場合、米国に入ってくる完成品のうち、何%くらいが問題の部品を内蔵しているのか、という割合です。この割合が低ければ、完成品を排除するのは非合理的です。逆に、割合が高ければ、「まるめてゴー!」と、排除されても、まあ、しゃーないか、ということになりますね。

8. Opportunity for evasion of an order not including downstream products: 完成品を除外しない排除命令が発せられた際に除外命令が有名無実になる可能性 - これはちょっと分かりづらいので「戸田奈津子」先生風の意訳にしました。この意訳の通りで、完成品が排除されず、当該部品のみが排除される命令であった際に、その命令の効果はどの程度のものか、を、勘案するものです。完成品を排除しなければ、侵害品排除の効果が得られない、とITCが考えれば、やはり完成品を排除しましょう、ということになります。

9. Enforceaibility by Customs:排除命令を実施する際の税関での負担-このあたりもものすごい現実的な話で、アメリカっぽい、ちゃあ、アメリカっぽい気がします。排除するために、税関でどれくらいの仕事が発生してしまうのか、それがあまりにも甚大であれば、排除は止めましょう、あるいは限定的排除だと誰がもちこんでるのか、をチェックするのが大変、だったら、負担軽減のために一般排除だああ!ということにもなりえます。うーん、すごいなあ。

解説でつけたのはあくまでも適用する際の一例です。これら9つの要素を総合的に判断し、排除する対象は何であるべきか、限定的排除でよいか、などが判断されます。

以前、連邦地方裁判所での特許侵害裁判のダメージ・ディスカバリとして紹介させていただいたジョージア・パシフィック・ファクターに比べるとかなりあっさりした内容・・・という感じがします。ダメージ・ディスカバリでは我々も一円一銭まできっちり数値を合わせるために計算が必要ですが、ITCの場合は、この9つがおおよそ判断できる程度の情報精度でOKです。

だからといって、やはりギリギリまでこのレメディ作業をしないのもおすすめできません・・・・やっぱり作業する側としては2-3ヶ月は欲しいところです。みなさん、ダメージ・エキスパート(レメディ・エキスパート)に愛の手を!早めにお仕事下さい!(笑)
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by suziefjp | 2009-02-27 07:40 | 知的財産権 | Comments(0)

ITCのEPROMsテスト (1)

アメリカではニューオーリンズでマルディ・グラのお祭りです。色んな山車が出てそりゃあもう大変な騒ぎになります。私は行ったことはないんですが、NYの法律事務所で働いていた頃、担当の訴訟がルイジアナであってニューオーリンズの弁護士さんにローカルカウンセルをお願いしていました。で、電話したら・・いない。マルディ・グラの頃はお祭りの前1週間くらいからみんな準備で休んでるのよー、とか、平気で言われてびっくり。1週間、祭りの準備。マジか・・・。

マルディ・グラはフランス語でいうFat Tuesdayです。カトリックで明日はAsh Wednesday で、Lentが始まります。Lentの期間は一応断食をするので、その前にすんげー食べておこうぜ!というのがFat Tuesday。うちの会社でも今日、アドミニストレーションが「Fat Tuesdayだから」ということでドーナツを用意しててくれました。しかも、「paczki」(プーンチキー、と発音するそうですが)と呼ばれるポルトガル・ドーナツ。中にクリームとかフルーツジャムとかが入ってて、外に粉砂糖をたくさんまぶしたドーナツです。(すいません、今日カメラが会社になくて・・・。)ラッキー♪と思って食べたら、これ、1個で400カロリー(涙)。時すでに遅し。食っちゃった・・・。Fat Tuesdayの罠。

さて、昨日のITCの続きです。今日はEPROMsテストです。昨日、一番ITCでもめるのは、侵害を主張されている部品を使用した完成品(downstream product)を米国市場から排除するかどうか、というお話をしました。このdownstream productを排除するか否か、で使われるテストがEPROMsテスト、というものです。EPROMsテストには全部で9つの要素があります。連邦地方裁判所での特許侵害裁判では損害賠償算定のためにダメージ・エキスパートに色々な情報を提供しますが、ITCではそうしたエキスパートにこの9つを判断できる資料や情報を提供することになります。余談ですが、ITCでは我々のことをdamage expertととは呼ばず、remedy expertと呼びます。理由はカンタン、ダメージは「損害賠償」の意味だからです。ITCで与えられる救済(remedy)は損害賠償ではなく、対象製品の排除ですから、ダメージ・エキスパートとは呼ばず、remedy expertと呼ぶんですね。

では早速、EPROMsテストを見て行きましょう!

1.Value of article relative to value of downstream product:侵害主張されている部品が完成品の価値全体に占める割合 -これが高ければ高いほど、排除が認められやすくなります。つまり、完成品とはいえ、その価値のほとんどって、この侵害主張されている部品から創出されているんだから、部品が侵害品で米国に持ち込むべきではないから完成品もダメでしょ、というところでしょうか。

2. Identity of downstream manufacturer: 完成品の製造・販売者が誰か -これは我々が作業するときは、どれだけ部品から完成品の米国での販売にいたる道のり(販路)が複雑か、をチェックしています。例えば、問題の部品が日本国内で企業Aに売られて半完成品になり、その半完成品が中国で企業B、C、Dに売られ、それらが完成品にして、企業B、C、Dの作った完成品のうち一部がカナダに入り、そこから一部はそのままカナダで流通、他はアメリカに入ってきて・・・のようなものす。これが複雑であればあるほど、「これ、全部おっかけてそうした完成品メーカーを排除しようとしたら大変ですぜ、もう誰がこの部品使った完成品をアメリカに持ち込んでるか分かりませんぜ」というのがいえるほど、排除命令が出づらくなります。排除の現実性が低くなるからかな?(勉強してから説明しろよ・・・。すいません、こういう情報見つけろ!という掛け声の下でとにかく締め切りまでに仕上げるための活動が多くてあらためて理由を考えることが少ないもんで・・・。いかんなー、そういう仕事の仕方はっ!)

3. Incremental value of downstream exclusion to complaint:排除が認められた場合、排除命令を請求した当事者が得られる利益 -これは言わずもがな、でしょうか。ITCは排除することが公益に資するか、というところをチェックします。ですから、この3と、以下の4、5とのバランスを勘案して、排除命令を出すのがいいのか、を判断します。例えば、排除を申し立てている人が自分では事業化していない個人発明家のケースを、競合製品を製造・販売している企業が申し立てたケースにくらべると、申立人が得られる利益、というのは少なくなります。

4. Incremental harm of downstream exclusion to respondent:排除が認められた場合、訴えられている側が被る損害 -これは3.で得られる利益と比べて、どちらが重要か、を判断するためです。例えば、対象製品が訴訟されている側の主力製品であり、これが排除されると売上の80%に影響が出るし、もし、非侵害の代替技術があるとしても、そちらに移行するには新たな設備投資がウン億円必要かつ実施までに短くて3年はかかるだろうし、しかも現在使用している設備はゴミのヤマと化す・・・と、まあ、これは極端な例ですが、排除によって被る損害が大きければ大きいほど、排除命令が出にくくなります。逆に、「すぐ別技術にシフトできるし、ま、製品としてもすんごい少ないし、排除されてもあんまし痛くも痒くもないかもー」というケースだと、排除命令が出る可能性がグンと上がります。

5. Burden of 3rd parties from exclusion:排除された場合の第三者への影響 -これが公益の観点です。例えば、対象製品が心臓ペースメーカーで、この製品がなくなると助かるはずの命が助からなくなる、代替品もありません、みたいな事情はこれにあたります。これだと第三者への影響がとんでもなく大きいので排除はダメ、ということになります。あと、まあ、ケースとしては考えにくいですけど、ある技術標準にもとづくプレーヤー、たとえばDVDプレーヤーなんかがdownstream productとして対象になったとします。侵害を申し立てられたのはDVDプレーヤーのメーカーとしては巨大メーカーでアメリカ市場で売られているDVDプレーヤーの5割がこのメーカーのもの、という場合、このメーカーが排除命令を出されると、失われる5割をカバーするために他のメーカーが急に増産するのも無理、するとアメリカの消費者が適正な値段で買えなくなる。。。なんてのも、このケースです。こういう場合もやはり、排除命令が認められづらくなります。なので、この要素をみるために市場シェアデータや市場予測なんかが重要になってくるわけです。

次回は残りの要素をカバーしますね♪
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by suziefjp | 2009-02-25 07:33 | Comments(0)
ども!週の始まりです。昨日の夜はアカデミー賞授賞式を見ました。日本2部門受賞、良かったですねー。私は「おくりびと」は飛行機の中で見たんですが号泣。今、フライトアテンダントの人がサービスに来たらヤバイ!と思うくらい泣けました。もっくん、いい男になりましたねぇ。「♪じたばったすっるなよっ ♪せいきまつが、くっるぜー」とか歌ってたのに・・・。

ところで今日は米国国際貿易委員会ことInternational Trade Commission (ITC)のお話です。なんでかっつーと、最近お仕事でITCのケースを引き受けたので(笑)。ITCに特許侵害が申し立てられると、損害賠償は?じゃ、なくて、その商品の米国への持込を除外するか否か、が争われるのは皆様もご存知かと思います。この場合、通常の連邦裁判所で我々ダメージ・エキスパートが行う計算とはかなり異なる作業になります。案外、そのあたりは知られていないようなので、あらためてITCのお話をすることにしました。

ITCが多用されつつあるのはとにもかくにも決定が早いし、連邦裁判所における証拠開示手続きに比べれば負担はずいぶん少なくて済むからなんでしょうね。連邦裁判所で証拠開示手続きを経て実際に公判まで行くのはせいぜい1~5%ですから、連邦裁判所での公判を経験したことがない弁護士ってのも実は結構います。これにくらべてITCは公判突入率が40%といいますから、ちゃかちゃか出すもんだして、ちゃっちゃとやろうぜ、という雰囲気が伝わってきますな。(こんな言い方でいいのか!?)

前述の通り、ITCではある米国特許がある製品により侵害されている、と、申し立てる原告が、当該製品を米国に持ち込ませないよう命令を発してくれ!と、ITCに訴えます。こういう命令を排除命令(Exclusion Order)といいます。この排除命令には大きく2つあって、Limited Exclusion Order(限定排除命令)と、General Exclusion Order(一般排除命令)があります。名前だけ見ると、Limitedがなんか特別編?という感じですが、さにあらず、「General Exclusion Orderを出してください!」と、特別に申し立てない限りは通常はLimited Exclusion Orderを出すか否かが検討されます。

限定排除命令とは、「あんたが特許を侵害しているのよっ!」と、原告に申し立てられ、その侵害が認められた人だけが、対象商品を米国に持ち込んではならん、とするものです。これに対して一般排除命令は、誰であろうと、対象製品を米国に持ち込んではならん!とするものですから、その決定のインパクトがかなり大きくなります。なので、取り立てて必要がなければ普通は限定排除命令なんです。だって、一般排除命令とかが出ちゃうと、例えば正式にライセンス許諾を受けてアメリカに持ち込んでる人も持ち込めなくなっちゃいますからね。そりゃあ大変だ。

対象製品で問題になるのは「部品」の取り扱いです。ある完成品が米国に持ち込まれるんですが、実際に侵害の問題があるのは、その一部として使用されている「部品」だけ、といったケースです。侵害対象製品が部品の場合、そうした部品を使用した完成品を我々は「downstream product」と呼びます。このdownstream productに関して除外命令を出すか、というのは、さすが米国、判例法の国、1989年の判決で確立された「EPROMsテスト」というものが適用されます。

次回はEPROMsテストの具体的内容を紹介しますね。ご覧頂くと、通常の連邦裁判所で、「当該特許侵害から発生すべき損害賠償金はいくらか」という算定作業に比べて、ITCのほうがずいぶんラク(というかザクザクのデータでオッケー、という感じでしょうか)が、お分かりいただけると思います。
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by suziefjp | 2009-02-24 07:36 | 知的財産権 | Comments(0)
約1ヶ月ぶりの更新です。長期の日本出張だったんですが、不況のために出張が減っているのか飛行機はガラガラ。私はエコノミークラス愛用者(あえて選択肢がないとは言わない。愛用してるだけっ!)ですが、今回はANAを使ったところ、エコノミーって、横に見ると、3席、通路、3席、通路、3席、という並びですが、各3席シートに一人ずつ乗客、という感じです。こうなると、アームレストを上げちゃってエコノミーで思いっきり眠れます!出張するなら今がお得ですよ!!

これと同じことが特許の世界にも言えるようです。おもしろいなー、と思った記事はこちら:
http://www.insidecounsel.com/Issues/2009/March%202009/Pages/Sales-Savvy---.aspx

このInside Counselという雑誌は、弁護士さんやら、あと、アメリカで社内弁護士をしてらっしゃる方などが読んでいる雑誌です。この記事をご覧頂くと、以下のことが書かれています:
・色々な企業が現金獲得のため、特許を売りに出している。今なら、市場でいつもよりいい特許が手に入る可能性が高く、また、購入価格も抑えられる可能性がある
・とはいえ、どのような方法で売却を図るか、が重要。公開オークションがいい場合もあれば、カスタムメイドの売却代理サービスの方が高く売れる場合もある。売り手は色々な売却アプローチを検討した上で決めること

なるほどー、っちゃあ、なるほど、です。実際、以前このブログでも紹介した公開オークションで売ろうとして売れず、カスタムメイドの売却代理サービスで満足いく結果が得られた売り手の例なんかも掲載されていておもしろいです。

こうした売り方の選択はなかなか難しいものがありますが、どこの代理会社でも複数のメニューを準備しているんでしょうから、特許内容、予算や売却希望額を問い合わせて、「どのメニューで売るのがいいと思う?」と、聞いてみるのがいいのかもしれません。売る側から一本釣りである方法で売るぞ!と、決めてしまうと、ほんとはもっと高く売れたのにー!ということにもなりかねませんね。

一方、買い手にとっては、どうも今が間違いなくお買い得のようです。この世界的不況で日本ではもう東京大阪出張どころか、建屋から出ること禁止、というくらいのコスト削減が行われていますが、こういうときだからこそ、良い特許が市場に出ている、というのもうなづけます。どこの企業も今はしんどいところですが、あえて今だからこそ、市場に出ている金の卵を買う機会を逸さないようにしたいものです。みんながコスト削減しているからこそ、あえて違うこともしてみる、というのは一つの差別化で勝つ手法かもしれませんね。

まだ出張後のフォローアップ仕事がヤマのように・・・(泣)。しかも年をとればとるほど、時差ぼけが抜けません。はあ・・・。と、いうことで今日はこのヘンで。
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by suziefjp | 2009-02-21 03:40 | 知的財産権 | Comments(1)

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


by suziefjp