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米国知的財産権日記

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いやー。。。。何を間違ったのか、結構書いた後、間違って消しちゃいました。。。ちょっと目がテンになりましたが、負けずに、今日は製造部門からもらう情報のお話です!昨日の話にもとづいて、少し場合分けをしながら見ていきます。


はい、損害賠償が合理的ロヤルティベースの場合、製造部門から必要な情報は、経理や営業から出てくる売上データとの整合性チェックがメインになりますね。たとえば、製造部門のデータではある月に200台製造・出荷となっており、営業の売上データでは「100台販売」となっていたとします。するとこの100台の差がうまく説明がつかないといけません。要は、「損害賠償を低くしたいためにデータ改ざんしてない」ということが分かればいいわけです。あと、会社によっては、例えば工場から出荷する段階で工場レベルで利益がのっかっていて、それを仕入れた営業さんが売る時に、また利益をのっける、というパターンもあります。「独立採算」の名の下に、各ステップでそれぞれ、利益をしっかり出さんかい!ということですかね。この場合、例えば工場からは製造原価に利益分+αを乗せて営業に出荷したとすると、営業からもらう売上記録の原価は「製造原価+α」になっているはずです。で、営業さんが別の利益「α2」を乗せて販売する。すると、この会社全体で得ている利益は「α+α2」となります。で、「α」のデータは製造部門からいただくことになります。結構こういうのあるんですよ。だからまず、知財の担当者の方が自社の製品の商流における利益構造を正しく理解しておくことがとても重要です。でないと、本来換算すべき利益が漏れ、後でそれが見つかったら「損害賠償を低くするためにわざとやったな!」といわれかねません。
あ、それから製造部門で何か製品の利益率アップや製品の信頼性アップのために工夫していることがあれば、そういうお話はぜひおうかがいしたいです。これは「その製品の利益率・信頼性の高さは製造上の工夫によるもので、特許技術による貢献ではない。」と主張し、と特許技術の価値を下げるためです。価値が下がれば、もちろん、算出するロヤルティ額は低くなります。


ロスト・プロフィットの場合、これは皆さんが特許侵害で訴えられたのではなく、皆さんが特許侵害で誰かを訴えたときに、損害賠償の算定をロスト・プロフィットで行うケースを考えます。前回申し上げたように、ロスト・プロフィットの場合、損害賠償を請求する側が「侵害者が製造・販売した製品を作る・販売する能力が自分達にもあった」ということを立証しなくてはいけません。ですから、たとえば、ある期間に侵害者が50製造したとすると、それを製造するだけの余力があった、ということを生産管理部門からのデータ等で証明しなくてはなりません。工場の稼働率なんかのデータですね。あと、ちゃんとそれだけ追加でつくるだけの原材料を調達うる能力があったか、これも問題です。ですから、これは調達部門のお話を聞き、どのようなデータでそれが立証できるかを検討しなくてはいけません。工場の設備としての稼働率だけではなくて、ちゃんとそれを動かすための人が十分にいたか、も検証が必要です。

損害賠償がLost ProfitとReasonable Royaltyの組み合わせになる、ということも別に珍しくありません。自分達で製造・販売する能力があった、という部分についてはLost Profit、それを越える部分についてはReasonable Royaltyという感じです。

あと、皆さんの特許が侵害されて、訴えた場合、必ずLost Profitを請求しないといけないか、っていうと、そうじゃないんですよ。別にReasonable Royaltyで100%回収しようとしてもいいわけです。これはみなさんが弁護士さんと判断して決められるといいと思います。ものすごーく手間がかかる、その対応コストを考えればLost ProfitよりReasonable Royaltyで賠償してもらうほうがラクでいいよね、ということであれば、無理にLost Profitを請求する必要はないんですよ。私はこのあたり、本当にバランス感覚だと思っています。結構、自分で計算しない弁護士さんたちは「Lost Profitでがっぽりいきましょう!」とか言いたがるみたいですけど、自分でやってみい!と、言いたくなるときもあります。それに乗せられちゃったクライアントさんとかは大変な苦労しますしね、あとで。それこそ、「こんなハズでは。。。」です。

近年、自分達では特許を使用しないけれどロヤルティを荒稼ぎするタイプの特許権行使会社とかもありますが、こういう人はまずLost Profitが発生しえないですね。するとダメージ・ディスカバリーで自分達が提出しなきゃいけない資料とか、すっごい少ないんですよ。だから「ディスカバリなんてラクだしー♪」と、簡単に訴訟ができちゃうのかなあ、と思ったりします。

うー、あと、判例で確立しているGeorgia-Pacificファクターというヤツをカバーしなきゃいけないかな。。。じゃあ、これを次回にしましょう。どんどんマニアックな話になってすいません。。。
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by suziefjp | 2008-08-30 04:57 | 知的財産権 | Comments(0)
まーさーに、前後しており申し訳ないです。。。。いや、まあ、ブログそのものが思いつきで始めたモンですから書いてる内容も結構思いつきで前後しちゃって。。。。

で、特許侵害における損害賠償の種類である合理的ロヤルティ(Reasonable Royalty)と、逸失利益(Lost Profit)です。

<Lost Profit>
これは、その侵害行為がなければ得られたはずの利益が得られなかった、だからその利益分を返せ、という字のままの損害賠償です。例えば、特許所有者A社が自社特許を使った製品を販売していたとします。競合B社が、A社の特許を侵害して同様の製品を市場に出し、お客様の一部がA社からB社に移ってしまったとします。すると、その移ってしまったお客様は本来A社の製品を買うところ、侵害行為のためにB社に流れた、この移ってしまったお客様から得られたであろう利益分を払え、これがLost Profitです。
ですから、基本的に問題となっている特許を使って事業をしている人しかLost Profitは請求できません。また、Lost Profitを請求する場合、「お前達が売った分も、俺達は十分製造・販売する力があったんだ!」ということを請求する側が立証しなくてはいけません。例えば、特許保有者であるA社は米国東海岸に販売網を持っているが、西海岸にはない。これまで、西海岸での販売実績は無い。そのような状態で、B社が侵害品を西海岸で販売し、儲けたとします。A社はこのB社の行為に対してLost Profitを請求できるか、答えはNOです。なぜなら、A社は西海岸で販売網を持ちませんから、西海岸で売ることは出来なかったわけです。もともと失ってない利益ですから、Lost Profitを請求することは出来ません。この場合、この損害賠償は合理的ロヤルティとして回収される必要があります。
また、特許所有者であるA社の製造施設がフル稼働したら100の製品が作れるとします。従来、A社は80の製品を売っていました。ここに侵害者であるB社が巨大製造施設でもって、200の侵害品を市場で販売したとします。この場合、A社は20について、Lost Profitを請求できますが、残り180については合理的ロヤルティを請求する、ということになります。A社が「うちは製造施設の拡大をプランしていたんだ!」とか、「下請けさんが見つかって、あと50、自社ブランドで作れることになってたんだ!」というのであれば、まずそれを立証する必要があります。そして、製造施設拡大のための設備投資費等を利益から除いた額が「Lost Profit」になるわけです。これは正当ですよね。製造を拡大しようと思ったら、それなりのコストが必要です。そのコストはしっかり差し引かないと、今度はA社が貰いすぎになります。これはいけません。

<Reasonable Royalty>
これは単純明快です。その特許のライセンス料(使用許諾料)を回収するものです。自ら特許を実施していない特許所有者はもっぱら、Reasonable Royaltyを損害賠償として請求することになります。ではいくらが「Reasonable」なのか。これがエキスパートの腕のみせどころになります。もちろん、製品によっても異なります。ものすごーく、ザクザクですが、この業界では「25%ルール」というのがあります。これは、本当に「ざくっ!」と考えると、ロヤルティって、大体、その製品の営業利益の25%くらいだよねー、というルールです。これは判例でも指示されている考え方です。
ただ、ほんとにザクザクですから、これにいきなり依拠するエキスパートはいないと思います(笑)。我々は色々なアプローチ、データからこの製品の場合、Reasonableなレンジはどれくらいか、を同定し、後で、25%ルールと比較したとき、そのレンジは大体いいくらいに落ちてるか、という確認作業的に適用する、という感じでしょうか。何のデータもなければ、25%ルールに依存するしかないようなケースもあるかもしれませんが、それは稀です。

さて、これをご覧頂くと、なぜ製造部門からいただく情報解説に入る前に、この損害賠償の種類のお話に戻ったか、をご理解いただけたかと思います。どの損害賠償を請求するのか、にちょって、製造部門から貰う情報にかなり差が出るんですよ。Lost Profitの場合は、製造部門から貰う情報がすごく増えます。と、いうことでようやく「前振り」ができたので、明日は製造部門からいただくデータについて解説しますね。
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by suziefjp | 2008-08-29 08:12 | 知的財産権 | Comments(0)
今日も続きで、経理、製造部門のお話です。

<経理>
もうこれは言わずもがな。。。かと思いますが、実は経理とお話をするときに、知財部門の方が最低知っておいていただきたいこと、というのがいくつかあるんです。大体、損害賠償算定のベースって、営業利益なんですよ。だから、もう常識かもしれませんが、経理の方とお話が通じるように、粗利、営業利益、経常利益、このぞれぞれの違いはぜひ把握しておいて下さいね。だいたい、アメリカ人のダメージ・エキスパートがお願いするときは「Operating Profit」という言い方をするはずです。これが「営業利益」です。ちなみに、粗利は「Gross Profit」ですね。
もう一つ大切なことは、コスト項目が標準コストか、実際コストか、です。標準コストは、たとえば、この部品はこれくらいで仕入れる、だから、この製品のコストはこれくらい、と例えば年初などに設定したベースで経理処理をしていくものですね。これは例えばコスト目標達成度とかを見るためにも必要ですから、こうした標準コストが設定されるわけです。標準コストより実際コストが低ければ利益が増えますし、標準コストより実際コストが高ければ利益は予定より減ります。
損害賠償算定はあくまでも実際コストベースです。ですから、経理書類が標準ベースの場合、実際コストに変換してあげなくてはいけません。ここまでくると、正直なところ、ダメージエキスパートのチームと、経理の方が直接話して、どうやって変換するか、を同定するほうが早いです。ただ、知財ご担当の皆様には自分達の会社の経理が標準ベースか、実際ベースか、を早期に把握し、弁護士やエキスパートに伝えてもらうだけでも助かります。標準ベースであれば作業が増えますから、それを頭に入れて、エキスパート側でもスケジューリングができます。
さて、長くなってますが、経理の方から頂く情報は、まさに、対象製品の売上に関する書類です。最近は売上はみなさんコンピューターで管理しておられますから、コンピューターのアウトプットのようなものがこれにあたります。ある程度、クエーリーとかで対象製品の売上だけを抽出するようにできるケースもあるんじゃないかと思います。こうしたアウトプットから、我々ダメージエキスパートとしてはこれくらいの情報が分かるとステキです:
-売上年月日
-対象製品(品番、モデル)
-台数
-売上
-単価(ま、売上/台数で、計算できますが。。。)
-客先、出荷先(米国か、あるいはそこからまた先に米国に入る、ということが分かる)
-利益(営業利益が望ましい。粗利と営業利益の両方が分かるケースがありますね)
-コスト
-変動費
-固定費

まあ、全部がきれいに揃うことって稀かもしれませんが、wish listということで。。。(笑)

さて、残るは製造部門です。が!!!昨日から気になってましたが、もっと早くお話しておくべきだったコンセプトのお話を忘れてまして。。。それは損害賠償には2種類ある、ということです。「逸失利益(Lost Profit)」と、「合理的ロヤルティ(Reasonable Royalty)」です。ああ、こう書いている間にまた問題に一つ気づいてしまいました。。。私、このお話は「日本企業が、米国で「特許侵害」で訴えられたときのダメージ・ディスカバリー」という前提でお話をしておりますが、もう一つ、大切なコンセプトが「非侵害代替品(Non-infringing Alternative)」です。侵害を主張されている製品と同様の機能を果たすけれど、非侵害である、という代替品のことです。別の技術を使って同じ機能を果たしているから非侵害、とか、そういうことですね。なぜこれが重要かというと、侵害を主張されている製品のほうが、非侵害代替品より利益率が高いとします。すると、その差の利益率は、特許技術使用による貢献分だ、という話になるわけです。なので、非侵害代替品と、侵害を主張されている製品との間で、売上、利益、コストがどの程度違うのか、もチェックポイントです。

つまり、経理資料のところで「対象製品の売上」といいましたが、代替品の売上データも必要になるわけです。(こういう説明をちゃんとしてクライアントさんにお願いしないと、「なんでそんなものが必要なんですか!」って怒られてしまいます。ああ、いかん、いかん。)

いやー、しっかり頭の中で考えてから書かんといかんですね。でも、あまり堅苦しく考えずに情報提供できるのがブログのいいところ♪と、ご容赦いただければ幸いです。。。。

なので、次回はまず、逸失利益と合理的ロヤルティのお話をしてから、製造部門からいただく情報のお話に戻りましょう。前後しちゃってすいませんっ!!
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by suziefjp | 2008-08-28 03:26 | 知的財産権 | Comments(0)
今回は、各部署の人達にどういう情報をもらうか、ですが、そこに入る前に大切なお話を。。。

ダメージ・ディスカバリーをする上で一番重要なことは、関連部署はどこか、を、同定することです。その製品が企画されて、製造されて、販売されてどう米国に入るのか。そこに関わってくる人たちは誰なのか。まず、これを把握しなくては誰に(どの部署に)話を聞くのが適切か、が、分かりません。ですから、まず、会社の組織図を準備し、関連する部署や子会社などはどこか、を明らかにしましょう。これをするだけでも大変ですが、地道にやるしかないです。。。これは必ず現場の聞き取りをしてください。それこそ、私立探偵になったような気分で、つなげていくしかありません。

で!関連する部署が分かったとします。大体、その例が前回あげたような部署なんですね。商品企画、営業、経理、製造部門、総務、などなど。では、順番に見ていきます:

<商品企画>
これは、その商品が企画された当時、問題となっている技術がどれくらい重要だったか、を理解するためです。そうですねー、例えば、問題の技術がプリンターの高速印字に関する技術だったとしましょう。で、商品企画書などに「市場調査の結果、多くのユーザーは印字スピードに問題を感じており、それほど高い精度が要求されない印字ニーズにおいては高速化がシェア獲得には有効と思われる」とあったとすると、これは「高速印字は市場シェア獲得で重要な役割を果たしている」ということになります。逆に、「多くのユーザーが高速化よりも狭いアパート等での使用のために静音化を望んでいることが分かった」などの記載があれば、高速印字技術が市場獲得に果たしている役割は低い、ということになります。
これは売上に対する技術の貢献度をみるために必要なデータです。また、商品企画書では、コスト試算などもしますから、その技術を実現するために必要なコストはどの程度と見積もられているか、が、分かります。商品全体におけるその技術のコストをみる、ということも、あとでどの程度の利益が当該技術による貢献として割り振られるべきか、を考えるときに効いてきます。
商品企画書には先代機種との差なんかも記載されますよね。これも重要です。なぜそういう変化が必要だったのか、先代機種と比べると何ができるようになって、その分、コストや利益はどれくらい変わるのか、こうしたデータが損害賠償の計算には重要なんです。
ですから、少なくとも、侵害催告を受けた対象製品の商品企画書は必要です。
あと、商品企画部で関連技術分野や製品に関する市場調査を実施したり、あるいは市場調査データを購入してる場合は、これも必要です。

<営業>
営業からは、対象製品の売上データが必要です。売上が直接、米国向けしかなければまだ簡単ですが、他の組織や第三者を経由して米国に入る場合などは厄介です。営業から販売したどれが米国に入るのか、が、分からなくてはいけません。日本国内で第三者に売却し、その第三者が米国に持ち込むような商流の場合、一般的な市場データ等から、「何%程度が米国に入ったと考えられる」という論理の構築も必要です。ですから、営業の方からはまず、しっかり商流を教えてもらいましょう。工場から対象製品が出て、どういうルートで米国に入るのか。これを一番ご存知なのは、きっと営業の方だと思います。
そしてやはり、問題となっている技術の重要度を理解するために、製品カタログ、営業プレゼンテーション等も必要です。これは営業を行ううえで、問題となっている技術をセールスポイントとして重視しているか、を見るためです。これも、その技術の売上への貢献度を判断するためです。たとえば、競合の製品にはそうした技術はないが、うちにはあります!というようなことが営業プレゼンに入っていれば、この技術を使うことが売上を上げるためにはとても重要、ということになり、利益に占める当該技術の貢献度もあがる、ということです。

経理、製造部門の話も重要です。これは次回に。あと、今回は総務をカバーしましょう。

<総務>
総務からは、アニュアル・レポートや有価証券報告書が必要になるかもしれません。対象となっている製品が、会社全体の売上の8割を占めるような主力製品であった場合、会社全体の売上、利益等を知っておくことも重要になります。あと、アニュアル・レポートや有価証券報告書などには技術開発活動の方向性や、製品開発の方向性など、定性的な情報もたくさんあります。定性的な情報を数値算出データとして活用するために定量化するのはとても難しいのですが、少なくとも、自分達の代理人やダメージ・エキスパートにはそのような定性データも提供すべきでしょう。そこから先、相手方に提出すべきか否か、は、代理人やエキスパートが判断することになります。社内で「これは不要だろう」と、勝手に判断してしまわないことが大切です。

うーん、やっぱり訴訟関連って大切なことがたくさんありますし、書いてる途中で「あ、あれも書かなきゃ!これも書かなきゃ!」と、思い出すこともたくさんあります。はー。。。ちょっとしばらく訴訟シリーズになってしまうかも!?でも、少しでも何かのお役に立つとうれしいです。では、また続きは次回に!
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by suziefjp | 2008-08-27 03:53 | 知的財産権 | Comments(0)
はい、今日は米国の特許侵害裁判におけるダメージ・ディスカバリについて、その1、です。ダメージ・ディスカバリとは、「問題の特許が侵害されているとしたら、適切な損害賠償金はいくらか」を算定するための証拠開示手続きで、これを専門にやっている人が「ダメージ・エキスパート」です。ダメージ・エキスパートは知財のことも分かる公認会計士や財務アナリスト、といったバックグラウンドの人が多いようです。

そもそも侵害してるかどうかも分からないのになんでそんなことをしなきゃいけないんだ!という人もいらっしゃるかもしれません。これはそういう決まりだから仕方がないんです。。。ですから、あくまでも「侵害されているとしたら、いくらなの?」というのがダメージ・ディスカバリです。侵害の有無は技術ディスカバリで争います。

日本企業に対して特許侵害裁判が提訴され、ダメージ・ディスカバリをやるとします。まず、訴訟を担当している知財担当者の方がしなくてはいけないことは、社内で適切な協力者を得ることです。ダメージ算定のためにこれまでお付き合いがなかったような部署の人達の協力が必要です。ですから、まずはそうした部署に話を通し、担当の方をつけてもらうことが必要です。関係部署は、「侵害している」と言われている製品の企画・製造・販売に関わる人たちです。以下のような部門の人達です:
-商品企画
-営業
-経理
-製造部門(工場の調達、生産管理、経理、営業など)
-総務

つまり、普段、「特許」とはあまり縁のない人たちが多いんです。こういうところにいきなり知財部門が「資料を出してください」と言っても怒られます。多くの場合「忙しい」「なんでそんなことしなきゃいけないんだ」と。うーん、ごもっとも。ですから、初期の段階で「こういう侵害裁判が起こってしまいました。将来的に皆さんからご協力を得て、侵害されているとしたら損害賠償がいくらなのか、を算定するための証拠開示手続きをしなくてはいけません。何卒ご協力をお願いします」と、話を通しておくほうがいいでしょう。ギリギリになって、突然「協力してください、資料出してください」と言っても協力してもらえるわけがありません。

関連する部門だけをみても、技術ディスカバリよりもずっと広がりがあります。ですから技術ディスカバリの数倍、時間も労力もかかるのがダメージディスカバリ、と思っていただくほうがいいです。それなのに、このダメージディスカバリを明確な理由も無く後回しにしてしまう弁護士さんが増えつつあるのは嘆かわしいことです。あとで苦労するのはクライアントさんなのに、ひどいなあ、と思います。だって弁護士さんは最後にはクライアントさんの知財部門の方を「このデータがなければ、相手がとんでもない数値を損害賠償として要求しても反論できませんよ!?いいんですか?」って脅すんですもの。期末で忙しい経理や営業の方との間に入る知財部門の方が気の毒です。何度もそういう場面に遭遇しましたが、後で、「もっと早くクライアントさんにお知らせすべきじゃなかったの?」とクライアントさんがいないところで言うと、「最終的には彼らの判断だ」って言う弁護士さんが多いです。そりゃあんたの給料にはひびかないだろうけど、もう少しクライアントさんのこと考えてよ、って思います。

米国特許侵害裁判の損害賠償の対象は米国に入った対象製品のみですが、「どれが米国に入ったのか」を追いかけるのだってとても難しいんですよ。商流が単純明快であればいいですが、たとえば部品について特許侵害裁判を起こされたとしたら、その部品を使用した最終製品のどれが米国に入ったのか、を割り出さないといけないわけです。最近、このケースが多いのが半導体に関する特許侵害訴訟ですね。もうこれは気が遠くなるような作業です。しかし、裁判で「できません」とはいえませんから、論理的にこれをやっていく必要があります。

他にも、日本国内で米軍基地で販売されたものは「米国に入った」とみなされますから、それも対象に含めますし、米国で販売されていなくても、最終仕向地に到着する前に米国内に入ったもの、もアウトです。保税倉庫から出て米国内を縦断してカナダに入り、カナダで販売された、なんていう製品も損害賠償の対象になります。(保税倉庫から出ていないものはセーフだったと思います。)

そんなこまかくやらなくてもいいじゃん、と思う方もいらっしゃるかもしれません。でも!これが裁判の怖いところです。一つでも、相手の弁護士に穴をつつかれるようなことがあれば、それで陪審や判事の心証がとても悪くなります。例えば、日本国内の米軍基地で販売された製品が対象に入っていなかったとしましょう。すると、相手からの質問によって「この記号はなんですか?」「それは日本国内の米軍基地が仕向地、という意味です」「台数は対象期間中に5台あるようですが、これは損害賠償算定に含まれていますか?」「!・・・含めていません」なんていう証言を取られた日にゃあ、もうダメです。たった5台ですよ!?多分、損害賠償金が500円くらい足りない、とかそういうレベルですよ。でも、こういうのが一つ出ると陪審員や判事は「まだ何か漏れがあるんじゃないの?」と思ってしまいます。ダメージディスカバリはまさしく「重箱の隅をつつくような」作業でなくてはいけません。

こうしてみるだけでも、ダメージ・ディスカバリがどれほど大変な作業かお分かりいただけるかと思います(実際に担当された方もたくさんいらっしゃるでしょう。お疲れ様です。。。)。余談ですが、ずっと訴訟案件をしてきた人たちが、知財経営に向いているか、というと、よっぽどうまく切り替えが出来ない限り、答えはNOです。経営の真髄は優先順位付けです。しかも、「100%の情報が分からないと判断できない」というような人は経営者ではありません。経営者は全体を俯瞰し、20%程度の最も重要な情報から優先順位付けができるからこそ経営者なんです。これに対して訴訟対応は100%どころか120%の細かさで、漏れが全く無いようにやるわけですよね?正反対のメンタリティなんですよ。ですから、それぞれのアプローチが全く異なる、と知った上で、さらに本人に「俺は今経営をしている」「俺は今訴訟をしている」と切り替える自律心がないと、部下が困ります。重箱の隅をつつくような経営をされたり、100%の情報が集まらないと俺は決めない!と騒いだり、あるいは、20%の情報で訴訟で証言に立ったり。。。想像しただけでも吐き気モノですね。恐ろしい。

さて、次回からは上記に挙げたような商品企画や営業部門の人達からどのような情報をもらわなくてはいけないか、を順番に見て行きましょう。
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by suziefjp | 2008-08-22 07:00 | 知的財産権 | Comments(0)
前回、訴訟が起こって株価に影響が。。。というお話をしましたが、よく考えたらまだ米国での特許侵害訴訟のお話をあまりしてませんでしたね。と、いうことで、今回は特許侵害訴訟です。

米国での特許侵害裁判を経験されている方もたくさんいらっしゃると思いますが、日本にないものが米国ではたくさんあります。まず、陪審。そしてディスカバリー(証拠開示手続き)。このディスカバリーはむちゃくちゃ手間も時間もお金もかかります。そしてこのディスカバリー中も含め、やたらとアメリカで出てくるのが「ほにゃららエキスパート」;何らかのエリアの専門家、と言われる人たちです。テクニカル・エキスパート、ダメージ・エキスパート、マーケット・エキスパート、陪審エキスパート。。。。たくさんいます。

これはアメリカの裁判制度がadversarial systemで、それぞれ原告、被告が判事や陪審に対してお話をし、私の言い分のほうが正しいんですよ、ということを示すために、その道のプロを連れてきて、そのプロに「うんうん、これが正しい」と言ってもらうことでハクをつける、という感じでしょうか。(陪審エキスパートはちょっと違いますが。。。陪審エキスパートについてはまた後日。。。)

まず、テクニカル・エキスパートはどっかの大学教授とか、ずっとその技術エリアに従事してきたエンジニア、とかが多いです。そもそも米国の特許侵害裁判では、その技術を知ってる特許弁護士を雇うことのほうが多いのに、なんでさらにテクニカル・エキスパート?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ハクをつけるためです!有名な先生とかに「この技術はこういう技術で、だったら侵害してない(あるいはしてる)」と言ってもらうことで判事や陪審は「この人がそういうならそうだろう」と思うわけです。これを弁護士が言っても「そりゃあんたの客のためにはそういうよね」と思われてしまいます。

ハクをつけるなら、いいのを連れてこなきゃいけません!訴訟弁護士の腕の見せ所の一つは、どれだけネットワークを持っていて、いいエキスパートを引っ張ってくることができるか?です。この世界、狭いですから、同じ人に原告、被告の両方がそれぞれ「エキスパートやってくれませんか?」とコンタクトすることだってたくさんあります。ですから、早めに、いいエキスパートを抑えちゃう、というのはとても重要です。こういうエキスパートは大体、時給いくら(数百ドル)での契約になります。

テクニカル・エキスパートと並んで重要になるのが、ダメージ・エキスパートです。これは、「この特許が侵害されているとしたら、正当な損害賠償金はいくらでしょう」と、証言するエキスパートです。日本の特許侵害裁判では、これは原告・被告の社内の経理担当者とかが弁護士さんと一緒に計算して主張することが多いかと思いますが、これもアメリカでやっちゃえば「そりゃ自社のために金額を少なく(多く)するような計算してるんでしょ?」と取られますから、アメリカではアウトです。みんなダメージ・エキスパートを雇います。

ダメージ・エキスパートは、知財の経済的評価ができる人がいいですし、ここでも、弁護士さんがいいダメージ・エキスパートを知っていることが重要です。やはりいいエキスパートは取り合いになるんですよ。あと、損害賠償算定のフェーズって、技術議論に比べて後になる場合があるんですが、最近、クライアントさんに対して「技術議論で勝てば損害賠償算定フェーズに入ることなく決着がつきますから、損害賠償のことは後回しにしましょう」という弁護士さんが増えているようです。これは絶対やめたほうがいいです!

理由は、「損害賠償算定のディスカバリーのほうがとんでもなく時間がかかること」、そしてやはり「いいダメージ・エキスパートが先に相手にとられちゃうこと」です。後でやるにしても、エキスパートだけは先に押さえておく方がいいでしょう。あと、エキスパートといっても、「うーん、このくらい!」と、えいやっ!で数字を出せるわけではありません。やはり数値を算出するベースとなる資料が必要です。テクニカル・エキスパートは例えばエンジニアの方とお話しすれば済むかもしれませんが、ダメージ・エキスパートは通常、企画、営業、経理、調達、など、非常に多くの部門の方とお話をする必要があるんです。で、こういう職能の人は「知財侵害裁判って何よ?」ということで、まず、協力してもらうのが大変。そして、テクニカルより、ディスカバリで提出してもらう資料が膨大なんです。

最近、ダメージ・ディスカバリを後回しにする弁護士さんが多いですが、正直、良くない傾向ですねー。最低限の準備だけは、やはりテクニカルと並行してやっておくべきでしょう。そして弁護士さんが「ダメージは後回しでいいや!」と思っちゃうのは、特許侵害裁判って、技術に詳しいけど経済に詳しくない弁護士さんが代理しちゃうことが多いせいかもしれません。粗利、営業利益、経常利益の違いが分からない弁護士さん、結構いますよ。。。技術一辺倒の弁護士さんだと、損害賠償の立証がどれくらい大変か分からないから、計算くらいすぐできるでしょ?と思うのかもしれません。こういう弁護士さんはちょっと。。。。私も今まで損害賠償算定をやって、「ああ、この弁護士さんはちゃんと経理も分かってるんだ」と思った人は少ないですよー。分かっていなくても、「分からないからこそ、時間をかける」というアプローチの弁護士さんは信頼できますね。

こうして書いてみると、まだまだ訴訟に関してはお伝えしていないことが多いなあ、と改めて思います。。。反省。次回は、じゃあ、なんでダメージ・ディスカバリが大変なのか、何をしなきゃいけないのか、そのあたりをカバーすることにしますね。
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by suziefjp | 2008-08-20 07:44 | 知的財産権 | Comments(0)

知財管理不行届きの刑

日本は猛暑というのに、シカゴはなんて快適なんでしょう。。。。ここのところ、空は青空、温度は華氏で70度くらい、なんと素晴らしく過ごし易いお天気!日本の皆様すいません。。。お天気もいいことだし、バケーションシーズンでお仕事がスローだし、ということで、最近調子に乗ってブログ書いてます(笑)。来週になったらまたきっと、更新スピード激オチ。

日本でも最近「株主重視の経営」とか言われることもあるみたいですが、今日はアメリカの企業の株価の動きと知財について、です。アメリカはやはり訴訟社会ですし、特許侵害裁判なんてガンガン起きちゃうわけですが、自社の重要製品に対して特許侵害訴訟なんかが起きちゃったら大変です。恐ろしいのは賠償金より「差し止め」。。。つまり、将来の特許侵害を防ぐために、今後はその商品を売っちゃダメです、と決定されてしまうことです。

以前、ある特許侵害訴訟でやはり主力製品が差し止めになるかならないか、というケースがあったんですよ。これ、後で株価の変局点分析をすると、侵害裁判過程の中で、判事さんがある決定をしたり、という裁判の節目節目で株価が動いてることが如実にわかります。つまり、特許侵害裁判の様子を株主さんやアナリストの人達がずっとチェックしてるんですね。で、こりゃやばいぞ、このまま行ったらほんとに差し止めを食らうかも、となったら、株主が今株を売ってしまわないとまずいと、と売りに出る。そりゃあ株価も急降下です。

そうなると、売り損ねた株主は「ええい、経営者が知財をちゃんと管理しとらんからこんなことになったんじゃないか!俺の株の価値がこんなに落ちたのをどうしてくれるんだ!」、と、今度は株主代表訴訟を起こしちゃったりするわけです。(アメリカではあるんですよ。)特許所有者に訴えられ、株主に訴えられ、経営陣はまさに泣きっ面に蜂、もうアウトですな。まとめて、「知財管理不行届きの刑」になるわけです。

よく日本でこういうお話をすると、「そんなので株主代表訴訟になるの?」「株価が特許侵害訴訟の結果で動くの?」と驚かれます。あっまーい!はい、訴訟になるんですよー。はい、株価動くんですよー。

日本とアメリカって、まだまだ会社経営に関する受益者に認識差がありますよね。米国は株主第一。日本はお客様、従業員、株主っていう順番ですかね?私自身は、日本もアメリカに倣って株主第一になれ!というつもりは全くありません。賛否両論あると思いますが、実は日本企業の独自の強さの源泉って、このお客様、従業員、株主、という順番かもしれん、と思ったりもするので。。。(この仮説はまだ検証してませんけどね。)ただ、日本企業でも最近、外国株主の割合が増えてきてますよね。そうなると、「君らを知財管理不行届きの刑に処す」という株主だって出てきて不思議は無いわけです。

経営者のみなさん、知財が直接経営に跳ね返ってくる時代になりましたよ。くれぐれも知財管理不行届きの刑にならないようにご注意下さい。。。
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by suziefjp | 2008-08-15 04:18 | 知財経営 | Comments(0)
シカゴって、NYとかサンフランシスコ、ロサンゼルスに比べると日本での情報が少ないみたいです。なので、独断と偏見に満ち満ちた、私のレストラン案内をお楽しみ下さい♪そのうち、写真とともに各レストランをご案内できるよう頑張ります!

<日本料理(寿司)> KATSU
こりゃあ、もう。。。ダントツで「KATSU」です。ダウンタウン(いわゆるループと呼ばれるエリアです)から、ちょっと遠いんですよ。車が必要。タクシーだと、ダウンタウンからチップ入れて25ドル前後かな?
よくnon-Japaneseの寿司シェフが、親の敵であるかのごとく、ゴハンをぐいぐい押している寿司屋もありますが、KATSUさんは正真正銘のホンモノのお寿司を食べさせてくれます。シェフのKATSUさんと、奥さんのハルコさんが暖かく迎えてくれる激ウマお寿司やさんです。築地直送のネタなんかもあって、海外に住む日本人にとっては涙モノのお寿司屋さんです。私はヒカリモノがすきなので、KATSUの「博多巻」というサバ、しそ、しょうがなんかが入った押寿司が大好きです。ほたての握りはヤバイくらいおいしいです。お寿司が恋しくなったらおすすめです!!

<イタリアン>Coco Pazzo
ここも大好きなイタリアンです。ワリとリーズナブルで、おいしい!!ニョッキはほんとにおいしいです。ランチだとピザ(薄い生地の)の種類も多いですね。ここのピザは専用の釜(オープンキッチンでピザの釜がバー・カウンターの後ろに見えます)で焼いてて、うんまい!!ディナーだと、ピザは1種類。毎回、「今日は何のピザがあるのかな?」と楽しみです。何食べてもおいしいんですよねー、最初のサラダとかもおいしいし。デザートまで充実して過ごせるイタリアンです。

<アメリカン>Crofton on Wells
これも好きですねぇ。。。ちょっと料理が来るまで時間がかかるかなー。。。というのはありますが、来た料理は待った甲斐アリ!で、おいしいです♪私はあまりお肉が好きではないのですが、ここはベジタリアンメニューもあります。メイン料理でソバがあるんですけど、まだ試してない。。。中西部エリアでは淡水のお魚でWalleyeというのがいます。日本にはいないお魚だと思います。白身でおいしいですよ。このレストランで出てくるWalleyeは特においしいですねぇ!!もちろんデザートも、うんまいです。おもしろいのは最後、コーヒーじゃなくて、お茶のメニューが充実してるんですよ。アメリカンだけど健康志向でおいしいです。

<フレンチ>Kiki's Bistro
私のお気に入りレストランですから、高級っちゅーより、カジュアルに楽しめる場所です!メニューは典型的なフレンチ・ビストロ。私はよく、サイドにある飴色になった玉ねぎを「うんまいーーー♪」と感動しつつ食べたりします(び、びんぼう??)でも、ビストロだったら、やっぱり、オニオン・グラタン・スープは絶対おいしくないとイヤだ!とか、飴色玉ねぎがうまくないと。。。とかあるじゃないですか。ここは基本をばっちり押さえた、お友達とかで楽しめるおいしいビストロです。

<ディープ・ディッシュ・ピザ>Lou Malnati's
出ました、シカゴ名物、Deep Dish Pizza。ピザですけど、暴力的なカロリーとサイズです(笑)。キッシュみたいに分厚いんですよ。これがシカゴ名物ピザ。いくつか有名なお店がありますが、私はここのが一番好きです。トマトのソースがおいしい♪たまに「スモール」を買って友達と二人で晩御飯にしたりしますが、スモールでも半分残ります。さすがに連続はキツイので、1日おきで晩ゴハンがピザ(笑)。

と、私の中でヘビーローテーションのお店を紹介しました!まだまだおいしいお店がたくさんありますから、それは少しずつ紹介しますねー。
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by suziefjp | 2008-08-13 06:23 | シカゴグルメ | Comments(0)
先日、日本の方から「こんなのが新聞の折込チラシに入ってました」と教えていただきました。入っていたのは、知的財産権をベースとしたファンドの宣伝!知的財産権のライセンス収益で配当が出るらしいです。

日本は米国に比べると知財の活用・流通がなかなか進まないなー、と思っていただけに、知財ファンドが一般家庭向けの新聞の折込チラシになるとは驚きです。いやはや。このファンド自体はどのようなものかよく分かりませんが、とにかく、知財が日本でもとても話題なのだなー、ということだけは分かりました(笑)

そこで知財ファンドについて少しお話しを。このチラシをネタに米国で実際に知財ファンドをやっている人とお話しをしました。彼曰く、

「一番大切なのは、配当を生むベースになっている知財が何か。技術分野は何か、知財のタイプ(特許権、著作権、商標権などなど)は何か。これがわからないと、本当にリターンが出るのかどうかも判断できないし、そもそもリスクの程度が分からない。」

ま、そりゃそうだ。ちなみに日本の折込チラシにはどんな知財なのか、一切情報がありませんでした。詳細を知るための電話番号が書いてましたから、電話したら教えてくれるんでしょうね。

ベンチャー企業が知財を担保にしてファンドを求める場合、確定した特許「権」ではなく、特許出願のリストを出してきて、「こんなにいい技術があるんだ!これを担保にして出資してくれ!」というお話も多いですね。特許出願って実は扱いが難しいですよ。出願って、まだ権利として確定していないから、審査の段階で「うーん、ここはちょっとダメだよー。これ、修正してよ。」なーんて言われちゃって、中身が変わることだって十分あるわけですよね。

それでもまだ権利になればいいですが、最後の最後で「やっぱ登録してあげなーい」なんてことで拒絶されることだってあります。なので、我々があるポートフォリオを評価するときには、出願は基本的に定性的な傾向を見るのに用いますが、定量的評価には入れません。これ、結構「過小評価」として所有者から文句言われます(苦笑)。ただ、やはり権利として確定していないものは、リスクがあるのは当然ですし。。。出願って、なんだか過大評価されることが多いように思います。もちろん、目の付け所がいい、とか、これがこのまま権利化したら、すげーことになるぞ!なんてこともあります。一方、権利化したら期待してた技術範囲と違ってた、なんてこともあるわけですから、ここはリスク判断でしょうか。少なくとも、出願にはそういうリスクがある、ということは知っておく必要がありますよね。

最後に、よくあるのが「この技術はXXXXという技術規格に必要な技術だ。これを担保にして出資してくれ。」とかいう売り込みですね。例えば、DVD、最近だとブルーレイとか、そういう技術規格がありますよね。あれって、規格を作るときに必須特許を持つ皆さんが集まっていろいろ決めるわけですけど、そういうのには入ってないけど、この技術は使う、と。これも、「気持ちは分かるけど。。。」ですね。規格に入る、入らないの評価って、厄介なんですよ。うちの会社にも「ある規格に使いそうな特許があれば買いたい。そういうのを探して欲しい」とおっしゃるお客様もいらっしゃいますが、これ、難しいんですよ。。。特に通信規格とかになってくると、バージョンなんちゃら、とか果てしなくあったりしますし、その規格のサブカテゴリー、サブサブカテゴリーとか細分化されていたりして、もう、何を見ればそもそも規格自体が理解できるのさ!?という感じです。うちの会社、知財評価は得意ですけど、規格モノの知財評価については、その規格のプロ、と言われる外部の人をあえてアドバイザーとかで雇ったりして評価を一緒にします。

「規格で使う技術!」とか言われちゃうと、なんかファンドとしても儲かりそうじゃないですか。だから結構、ファンドの売り文句として使われるケースはあるみたいです。

知財ファンドに関しては、少なくとも、対象知財が何か、権利確定してるのか、ある規格に使われる技術だというなら、本当にそうなのかくらいは最低チェックしてから、お金を出してみることをお薦めします。。。と、いうか、そういう情報をちゃんと先に提供してくれるファンドなら、まず最初のチェックポイントはクリア!ということだと思っていいのかな、と思います。
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by suziefjp | 2008-08-13 05:50 | 知的財産権 | Comments(0)
アメリカで知財がなんでこんなに話題か、というと、やっぱり訴訟社会だからなんですね。個人発明家とか、企業同士、大学とかでも「俺の知財を勝手に使いやがって!」と、訴える。しかも、成功報酬という形態で弁護士さんが「がっぽり損害賠償をせしめたら、弁護士費用をいただきますが、そうでなければお支払いは結構です。リスクフリーですよ!」なんて感じでやっちゃうから、お金が無くても原告になれる。そして訴訟が増える。

どうも最近、アメリカの弁護士事務所が日本の中小企業に触手を伸ばし始めたのかしら。。。と思うことがあります。8月に入って、立て続けに日本の中小企業が米国で大規模な特許侵害裁判を提訴してるんですよ。立て続けといっても、2件ですけどね。しかも、原告側(特許所有者=中小企業側ですね)を代理している米国事務所が同じ事務所なんですね。

うーん。。。。私はこういう訴訟が一概に悪いとは思ってないんですよ。特許所有者が合理的に侵害を解決しようとして大企業に連絡したものの、大企業が相手にしてくれなくて訴訟するしかなかった、ということだってあるわけです。だからすべて悪い、とはいいませんが、気になりますねー。しかも、訴訟された側(被告)には、両方の訴訟とも、しっかり日本企業が入ってます。日本企業同士で、カニバリ!?

日本でも知財活用の認知が上がるのは良いことですが、その授業料が必要以上に高いというのは感心できません。少なくとも、日本が本当に知財立国になりたいなら、お互いの知財を正しく評価し、尊重するという姿勢が必要でしょう。それでも意見の違いが解決しないときはもちろん、訴訟だってやむをえません。

これまで、「日本の中小企業だから、このまま無視しちゃっても問題にならないよ」と、タカをくくっていた日本の大企業の知財部の皆さんがもしいらっしゃるとしたら、その状況は短期のうちに劇的に変えなくてはいけないと思われます。でないと大変なことになります。相手が個人であれ、大学のような研究機関であれ、中小企業であれ、大企業であれ、相手の知財を正しく評価し、尊重する、という姿勢がなければ大ヤケドをする可能性が高くなってきたようです。タマゴが先かニワトリが先か、で、「まずは日本の中小企業がきっちりした交渉力をつけるべき」ということをおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。でもここは、やはり体力のある大企業のほうから、相手に関わらず適切な知財評価を実施して必要な知財はライセンスを受ける、ということをポリシーとして知財部門で徹底していただくのがいいのではないかと思います。そういうのが顕在化してくると、外から日本をみているものとしては有り難いです。。。。

いずれにしても、経済状況だって別にいいわけじゃないし、わざわざ訴訟しないで解決できることがたくさんあるなら、それに越したことないんじゃないかなー、と、つい思ってしまうのでした。自分でこういう仕事をやってても、アメリカの訴訟文化を好きになるのは難しいものですね。
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by suziefjp | 2008-08-09 02:16 | 知的財産権 | Comments(0)

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


by suziefjp