米国知的財産権日記

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とりあえず、続き物は早めにアップせねば、と思い立ちました(笑)。

前回は、名義人を起点に分析対象特許を同定するのが良いか、純粋に特許(技術分野)を起点に同定するのが良いか、結論は特許を起点に、というお話をさせていただきました。今回は、特許を起点として分析対象特許を同定するアプローチ(=母集団作り)について、です。

特許を起点として「この分野の特許」を同定するためによく使われるアプローチはキーワード検索でしょう。ある技術分野に頻繁に使用される単語をキーワードとして、そのキーワードを含む特許を引っ張ってくる、というものです。これは非常にわかりやすいし、やりやすいですが、リサーチャーが誰か、によってアウトプットにものすごく差が出ます。何をキーワードとして使用するか、が人によって異なるからです。結局、グーグルでサーチするのと同じで、何をキーワードとして使用するかによってヒット率ってかなり異なりますよね。上手な人(=その技術分野・特許に精通した人)が行うキーワードサーチと、ぺーぺーのリサーチャーが行うキーワードサーチでは、結果は月とスッポンです。

キーワードサーチによって母集団を作るときには、どのようなキーワードを使用したか、を分析レポートに記録することをおすすめします。最初に使ったキーワード、そこから絞込みをかけたキーワード、それぞれの段階でヒットが何件から何件に減り、最終的に詳細に調べたのが何件の特許なのか、これを分かるようにしておくことがポイントです。これさえ分かれば、後で、「誰だよー、こんな母集団作ったやつ」ということになっても、リカバリーがしやすいです。だって使ったキーワードは見えてますから、どこから修正してやりなおせばいいかわかりますよね。

別のアプローチとして、米国特許の場合は「引用(citation)」に頼る、という方法があります。米国特許で請求項の範囲を解釈するのに重要なのが引用される先行例ですが、米国特許法ではこの先行例特許とこの特許はどう違う、とか、そういうのを説明しなくてはいけません。ですから、ある特許がどの特許を引用しているか、あるいは、どの特許に引用されているか、を調べることで同じ技術グループに属すると思われる特許を集めることができるんですね。

もちろん、米国の特許審査官や、出願人がパーフェクトなお仕事をしてくれるとは限りません(むしろその逆か・・・)。本来、引用しておくべき特許が引用されていない、というケースだってたくさんあります。この点を補うには、何世代かまでさかのぼって、この引用状況をチェックする必要があるでしょう。(大体、5世代さかのぼれば、統計学上は分析に必要な程度の精度は確保できるようです。)

引用にもとづいて母集団を集めると、主観が一切入らないことになります。ここがキーワードサーチとの大きな違いです。誰がやっても、かかる時間に差こそあれ、バックワードとフォワードの引用を数世代分集める、という作業は同じ結果になるはずです(見落としがなければ、ですが・・・。)

ではどちらのアプローチがいいのか。これはなんともいえません(おいおい、ここまで引っ張ってその結論かよー!!)客観的にやりたいなら引用ベース、主観が入ってもいいならキーワードサーチ、というところでしょうか。お薦めは両方やって、結果の重なりをなくして、それを母集団とする、というものです。

うちの会社でもある技術分野の特許分析、というお仕事をよく引き受けます。このときは、その技術分野に詳しい人が①キーワードサーチをし、②引用ベースの調査をし、③その両方をあわせて重複は除き、④手作業で特許内容をチェックしてバグをとる、というステップで母集団を作っています。

昔、日本で特許サービス会社に特許分析を依頼したところ、その会社は完全自動化、がウリだったそうですが、分析結果は、バグが多すぎて全く使い物にならなかった、というお客様がいらっしゃいました。私自身、完全自動化システムに100%頼って分析母集団を作る、ということはお薦めしません。絶対バグが入りますよー。どの部分までは自動化で絞込み、そこから先はマニュアルでチェックして母集団を作る、という線引きが大切なのだと思います。(全部マニュアルってのも、いかがなものか・・・ですが。時間がかかりすぎて、分析が終わった瞬間、分析結果が陳腐化しているということも無きにしもあらず、ですしね・・・。)

アメリカではすでに、引用ベースで特許を同定してくれる特許検索システムが製品化されています。いろいろなサービスがあるもんですね。
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by suziefjp | 2008-07-22 07:44 | 知的財産権 | Comments(0)
ども、久しぶりの更新です。出張やら小旅行やらでこんなペースなんですが、まあ、細く長く続けようと思ってます(苦笑)。

今回は特許ポートフォリオ分析について、です。最近は色々な企業の知財部やR&D部門で特許ポートフォリオ分析がなされているようです。特許ポートフォリオ分析にもいろいろな切り口がありますが、そもそも、「特許ポートフォリオ」って何?、から始めます。大体は、例えば企業Aが持っている特許、とか、そういうイメージですね。だから「企業Aと企業Bの特許ポートフォリオ分析」は、それぞれの企業が持っている特許を分析することになります。

私が経営コンサルタントをやっていたころ、私に基本から叩き込んでくれた大恩ある先輩が「分析の基本は「比較」だ」とおっしゃってました。特許ポートフォリオ分析も「比較」なんですが、何を軸に比較するかにより、かなりのパターンがあります。主要な軸候補は:
-数
-技術分野
-登録日
さらにこうした軸をクロスさせることで、「密度」も分かりますね。例えば、数と技術分野をクロスさせると、どの技術分野でどれくらいたくさんの特許をとっているか、どこに穴があるか。数と登録日をクロスさせると、どの時期にたくさん特許をとったのか、そして技術分野と登録日をクロスさせると、どの時期にどの技術分野に集中して権利化活動をしたのか(さかのぼって、当時のR&D活動の集中度合いを示すこともあります)、なんてことが見えてきます。こうした軸やクロスで競合比較をすると結構いろいろなことが見えてくるんですよ。

今回のお題は、比較対照とする特許の塊をどう作るか、です。たとえば、企業Aと企業B、となると、名義人を起点としたものになりますよね。あるいは、名義人にはこだわらないで、技術分野にこだわる、つまり、第1段階では名義人は誰かを無視して、ある技術分野の特許を集め、第2段階でそれを名義人別に分けて比較する、というアプローチです。

特許分析、という意味では後者の技術分野を起点にするアプローチがおすすめです。理由は、「この人達が競合だ」と思って、その人達だけをマークしていると、見逃してしまうプレイヤーが出てくるんですよ。名義人にこだわらず、技術分野を起点に分析すると、あけてビックリ「誰、これ!?」という人がその技術分野での強力なプレイヤーとして浮き上がってくることがあります。こういうのが分析でみえると、とても気持ちがいい瞬間ですよねぇ♪ しかも、そういう人は案外競合ではないので、提携候補とか共同開発候補にもなり得るわけです。

私はこういう分析が、さっき出てきた先輩のおかげで大好きになりました。大事なことはやみくもに分析してもダメ、ということです。最初に「何が知りたいのか」を知った上で分析をしないと、なんだか色々な分析をして自己満足、でも、「だから何が分かったの?」という、「so what?」がないまま終わってしまいます。これでは時間とお金のムダ使いです。「何を知るために分析するのか」が明確でないと、分析すること自体が目的になってしまって、どこでやめるのか分からなくなるんですよ。最初に知りたいことが分かっていれば、それが分かった時点でやめればいいんです。(と、言っても一般企業の中には、本来そんなの必要ないじゃない?っていうデータとか分析を「これはやったの?」と、いちゃモンをつけたがる経営者もいるようです。本当は、余計なことをしている部下には「こういうのは不要でしょ?」というフィードバックを与え、本当に必要なことをさせるよう采配を振るうのが経営者なんですが。。。いかんいかん、今回は経営論ではなかったんでした。)

次回は、もう少しさかのぼって、じゃあ、第1段階としてある技術分野の特許を集めるってどうするの?というお話をしたいと思います。
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by suziefjp | 2008-07-18 05:30 | 知的財産権 | Comments(0)

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


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