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米国知的財産権日記

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カテゴリ:知財経営( 18 )

さらばIPXI

ご存知の方も多いかと思いますが、米国シカゴを拠点とするIPXIはオープン市場でのライセンス権の取引を目指した会社です。例えば特許権者が「この特許ポートフォリオを使って○○個の○○という製品を製造・販売する権利をライセンス一単位として、単位あたりいくらで売ります。今回はこれを100単位IPXIでの売却に出します」みたいな形での取引を狙っていました。おもしろい発想だったのは、例えば買ったものの自分で使わなかったライセンス権をIPXI経由で転売できる、という点でした。転売時には時価で取引されるので、当該特許技術の相場がクリアになる、と言う意味でも特許価値の明確化の点から注目を集めていました。
。。。。が!!いくつかそういうのを売ろうとしてたんですけど、うまくいかなかったみたいですねー。残念ながら、3月23日をもってIPXIは事業終了だそうです。詳細はこちら

いやー、残念です。発想はとてもおもしろかったし、実現したらかなりおもしろいな、と思っていましたが、実現しませんでした。。。ウェブサイトにあるIPXIのコメントによると、「潜在ライセンシーからの協力を得られなかった」と。確かに取引対象技術はフィリップスとかも含めて提供があったと思います。IPXI市場で「買ってもいいよ」という人があらわれなかったんですね。

残念ながら実現しませんでしたが、「こういう特許取引もありなんじゃないの?」という一石を投じた、という意味では非常に価値があったと思います。IPXIの代表にはぜひ日経ビジネスの「敗軍の将、兵を語る」のコーナーで語っていただきたい(日本で日経ビジネスを購読していたとき、あれはかかさず読んでましたが、あのコーナーはまだやってるんですかね?)
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by suziefjp | 2015-03-28 05:35 | 知財経営 | Comments(0)
書けるときに書いておかなきゃ!という気持ちの今日この頃、いかがお過ごしでしょうか(笑)。

私のいつものニュースチェックサイト、「フジサンケイビジネスアイ」に日本で初の特許データ信託商品が年内に出るかも、というニュースがありました。ご興味ある方はこちらをどーぞ:
http://www.business-i.jp/news/for-page/chizai/200909140006o.nwc

個人的には、確か日本発の特許データ信託商品は、トヨタアセットマネジメントが「光る知財」という愛称のファンドをすでに出していると思うのですが、まあいいや。コンセプトは、企業が持つ特許を評価し、その評価にもとづいてどの企業に投資するかを決め、それらの企業で信託商品を組む、というものです。

記事によると、ベンチャーや技術ベース企業など、技術はあるのに資金が得られない企業がこれを機会に資金を得られるようになれば、という話と、時価総額が低くて技術がある企業はリターンの可能性が高い、という投資家にとっておいしい話が出ていました。本当にこの両立ができればすごいことです。

アメリカにはOTPATという特許評価ベースの投資信託商品があります。もう運用されて3年くらいになるんじゃないかな。リターンの状況は普通にYahoo Financeとかでチェックできます。こちらの背景を調べてみると、技術系の企業が資金を得られ易くなるように、、、といった目的は「全く」なかったようで、100%投資家のために設計されています。不動産がダメになって、投資家が新たな投資対象を探していたタイミングで「知財をベースに企業判断して投資するといいことがあるよ~~」と、知財をベースにした投資活動を活性化させる目的で、かなりリスクヘッジをかけた銘柄構成で信託を組んでいます。投資活動活性化が目的ですから、値崩れし易い信託だと「なんだよ~~、知財ベースの投資ってダメじゃん~~」となっちゃって意味がありません。だからリスクヘッジをかなりかけて、リターンが大きいことより、値崩れしづらいことを優先したようです。

こういう優先順位が明確なのは好きです。日本で議論をすると、「これこれのためにこういうことを考えました!」という意見に対して「じゃあ、あれあれはどうなるんだ!」という反論が出がちです。いや、だから「これこれのために」って説明してるぢゃん、、、と思うんですが、結構こういう「あれあれ」の反論って、「そうだそうだ!」と賛同されやすいんですよねー、不思議なことに。個人的には完全に論旨を外れてると思うんですけどね。。。。

日本の企業文化は優先順位付けがヘタクソですね。ヘタクソというより、しない。Aのためにこれをしよう、というと、じゃあBはどうなるんだ、Cはどうなるんだ、とか山のような批判が出る。だから結局何もしないのがいい。あるいは、みんなのためになるからやりましょう、といわないといけない。でも、これってまず成功しません。同様に、せっかく日本で特許データにもとづく信託を作るなら、「投資家、企業家、みんなのために」みたいなポジショニングでやっちゃうより、「まずはコレコレで成果を出すことが目的!」みたいに決めウチしないと「成功」とみなされる可能性が激減します。「みんな」のために、と、設定すると、ターゲットとされた「みんな」のうち、一箇所でも満足されなければこれは失敗になるわけですよね。でも、「みんなのために」って言わないとそもそも何もできないから、当然、日本ではみんなが満足して「成功する」ことがとても少ない。一生懸命やっても「失敗」って評価されることのほうが多いから、誰も何もやりたがらない。これが外から見る日本の悪循環のように思います。頑張ってうまくいったときは子供だって大人だって「すごいね、よく頑張ったね!」ってほめてもらいたいですよね。

最後はなんだか知財の話から外れちゃいましたが、日本の特許データ信託、どうなるか引き続き注意してみておきたいと思います!
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by suziefjp | 2009-09-16 06:48 | 知財経営 | Comments(0)

技術ベースのM&A

不況の「終わりの始まり」という話もあるようですが、あんまりそんな実感がないのは私だけ?もう毎週宝くじ買いながら「当たってくれたらなあ・・・」と今日のおかずを考える。。。ああでもそんな生活が嫌いじゃないからいいんですけど♪

今年に入ってから、日本では特許検索システムなどを提供しておられるところも含めて「知財サービス会社」が3つ消えてしまったそうです(涙)。残念だなー・・・。まだまだ失業者も多いし、倒れてしまう会社も多いですが、そうなると、「この会社買いませんか?」とか「この会社のこの事業買いませんか?」といったM&A案件が増えるようです。知財だけをやりとりするのではなくて「丸ごと」です。

まだまだ知財だけをやり取りするメインは「ライセンス」であって、売買はこうしたM&Aなどに含めて、というのが多いのかもしれんですね。最近もよくお問い合わせいただくのが西海岸とかの小さい会社がサプライヤーで、それがダメになっちゃったんだけど、このサプライがないと困るのでその会社を買って自分達でやる、そのときの注意点は?といったものです。なので、ものすご~~~い一般論で恐縮ですが、簡単なチェックポイントをご紹介♪

①その会社(あるいは事業)を買うだけでいいのか、それ以外の技術ライセンス契約などは必要ないか?
いきなし分かりづらくてすいません。。。ここで言いたいのは、知財という意味では「その会社(あるいは事業)を買う」と、必要な特許やノウハウなどの知財は全部ついてくるのか、ほかの誰かにライセンス料を支払ったりしなくてもいいのか、ということです。もし、対象企業(事業)が、そのサプライを提供するにあたって第三者からの技術ライセンスを得て実施していたような場合、その契約条件はぜひデューデリジェンスの一環でチェックすべきです。ロヤルティがいくらか、契約期間はいつまでなのか、そのライセンス契約自体、継承できるのか。せっかく買ったのにこれだけじゃできませーん、じゃあシャレになりませんものね。

②重要エンジニア込みか?
これも技術ベースのM&Aではとても大事です。特に技術サイクルの早いようなものや継続的な改善が効いてくるような分野では、優秀なエンジニアの確保がとても大事です。彼らが「なーんだ、買収されるならオレやーめた!」と、辞めちゃうと、1-2年は良くても技術が陳腐化してせっかく購入した事業の競争力がガクンと落ちてしまうかもしれません。なので、その買収対象先の重要エンジニアを同定し、彼らが買収後も必ず何年かはとどまるような仕掛けをいれることが大切です。重要エンジニアが誰か、は相手先のインタビューでやるもよし、相手先が持っている特許の中で重要と思われるものの発明者が誰か、から同定するもよし。
アメリカではディレクターとかマネジング・ディレクターとか、ある程度の地位になると雇用契約に「non-compete」という競業避止義務が入っていることが珍しくありません。「自ら離職する場合、6ヶ月間、この会社で提供していると同様のサービスを他社で提供してはならない」みたいなものです。なので、貯金がなく、今時分が使っているスキル以外で食えるアテがなければ自ら離職、というのはなかなか勇気がいるかもしれません。が!買う先の事業、企業がカリフォルニア州の場合は注意してください。カリフォルニア州ではこの雇用契約の競業避止義務は確か州の法律でその効力が認められていません。ですから、そんな条件が雇用契約に入っていても、明日からでも同じ業務で別のところで働けちゃいます。これは、カリフォルニア州がボストンなどのマサチューセッツ州に対抗して自らを技術最先端州とするにはどうしたらいいか?と考えて、「知の行き来を簡単にすること」が勝ちスジと考え、競業避止義務は州法で無効とする、としたんだったと思います。このあたりに、州の経営方針がフルに法律とかに直結するアメリカのフットワークの軽さを実感します。実際、技術といえばシリコンバレー、カリフォルニアというくらいになりましたもんね。
おっと、それました。で、優秀エンジニアをうまく引き止めるには、売買契約と別に、各エンジニアとインセンティブについて合意契約しておくことが必要です。「○年間残って新たな発明をして自らのノウハウを共有してくれて、それで売上がいくらあがったらボーナスをいくらだすよ」とかそういうヤツです。
ちなみに、このインセンティブ額を企業(事業)購入時に知財の価値、として計上できるか、というと、できません。これ、「XXしてくれたらXX払うよ。」ということで、まだ発生していない事項についての金銭価値であり、その事項が発生しなければ実現しない金銭価値ですから、購入時の段階で知財の価値としての計上はできません。

③権利登録・維持が必要な知財は適切に維持されているか
前の二つに比べればちっちゃいことかもしれませんが、相手先がもっている知的財産権について、年金支払いが必要なものはちゃんとそれが支払われて維持されているかチェックしておきましょう。買ってから「くっそー、あいつらめ、なんで買収前に期限が来てた年金をウチが今あわてて払わんといかんねん!?」という想定外の出費がないように注意したいものです。

④知財はどこかにライセンス許諾されていないか
これはもう、いいですねー。通常でも皆さんが一番先に聞かれることかな、と思います。ヒモ付きかヒモなしか、確認してからお買い物しましょう♪

技術ベースのM&Aで最低実施していただきたい知財に関するチェックポイントでした。案外、①や②が見落とされてしまうことがあるみたいです。まあ、もともとそこから何らかの供給を受けていて、そこがだめになったから調達を続けるために会社(事業ごと)買っちゃいましょう!って思い立ったら、気持ち的には「買えばできる!」と思っちゃうものかもしれんですね。案外そうじゃないことのほうが多いから世の中山あり谷ありでおもしろい~~♪
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by suziefjp | 2009-08-06 05:28 | 知財経営 | Comments(0)

知財と広報・宣伝

いやー、もうほんとにパテント・プールも話題なので(2)を書いて早く完結しなきゃ、、、と思ってんですけど。。。

でも!今日は私が過去数年取り組んできた、というか、呼びかけてきた「知財と広報」についての記事をアメリカで見つけてしまったのでこの話になっちゃいました。日本で「知財経営」をテーマにセミナーの講師などの機会をいただくと、ここ数年はしつこく「知財部と広報・宣伝がもっと一緒にお仕事しましょうよ!特許侵害訴訟についてのプレスリリースだけじゃなくて、もっともっと知財についてお客様に知ってもらいましょうよ!」というお話をさせていただいているのですが、今日、私がいつもチェックしているニュースサイトで「知財PRキャンペーンをやるべし」のような記事があったんです。だよねっ、だよねっ!

例えばアメリカではとてもメジャーな洗濯洗剤の「Tide」というのがあります。私もご愛用♪これはP&Gの製品ですが、P&GはTideのマーケティングについて「色あせせずに洗えます」とか機能面をマーケティングするだけではなく、Tideの製造プロセスに関する55件の特許の存在、そしてそれらを非競合製品についてはライセンスしている、ということもマーケティングしている、と。

私が知財マーケティングってとても重要じゃないの?と思ったきっかけは製品価格プレミアムの実現のためです。理系じゃない人でも研究開発にお金がかかることはちゃんと知ってます。そしてそういう研究開発の成果として、ますます便利な製品やサービス、これまでになかった製品やサービスが生まれていることも知っています。お金をかけて新たな製品やサービスを生み出していくわけで、かけたお金を回収できなければこれからの進歩が期待できないことも自明です。と、するとお客様に「これは高いかもしれないけれどそれだけ良い技術・信頼性の高い技術を使ってるんですよ」と分かっていただくことが必要で、これが知財マーケティングなのだと思います。安いから売れるのではなくて、高いから売れる。これです。

記事ではインテルのペンティアムの例も取り上げられていました。インテルのペンティアムが競合製品より高くても売れるのは、そこに技術への信頼があるから。安かろう悪かろう、の真逆で、高かろう良かろう、です。

技術なんて細かく宣伝しても意味無いよ、という方もいらっしゃるかもしれません。でも、案外、人ってなんだか分からないものにお金を出す気にはならなくても「あー、そうなんだー!」と分かればお金出せるものなんじゃないかと思います。単に「これはいいですよ!」って言われるよりは、なんでいいのか、そこが知りたい。人間知らないものには恐怖を覚えますが、理解すれば愛着を覚えたりするものです。しかも、自分がお金を払うものがとんでもない利ざやのものなのか、しかるべきベースがあるものなのか、それを理解しないままお財布からいくら出すか、って全然違う気がします。

知財に関する情報公開ではなんでしたっけ?経済産業省が推進しておられた知財報告書?か何かが日本ではあったかと思います。あれはお客様向け、というより投資家向けですね。いくつか拝見したことがありますが、ちょっとつまんない。。。。理系にしろ、文系にしろ、技術のお話って、どきどきわくわくするものであって欲しい、と、個人的には思うのですけれど、なんというか堅い・・・?分からないなりにもエジソンの話を読んですげーなっ!って思うような気持ち、ああいうのが技術のお話には欲しいなー、とおもったりします。それで投資家がもっと投資してくれるのか?とは別なんだと思いますけれど、そういうどきどきわくわくする技術のお話のウラには、これが今の生活をいかにもっと便利なものにしてくれるのか、いままでできなかったどんなことができるようになるのか、っていう研究開発者の思いがあるように思います。投資判断するにもそういうのが見えるってとても大事なことのように思います。(と、いっても私はしょせんスーパー小額投資家だから~~。的はずしちゃってるかもしれません。)

もとい、知財とマーケティングのお話。新製品の開発秘話とか、どれくらいたくさんの技術特許がそこに使われているのか、それを発明するためにいくらのR&D費が費やされたのか、そういうお話は価格プレミアムを正当化するに必要なお話だと思います。私の大好きな製品の中にネスプレッソというコーヒーマシンがあります。デザイン性、機能性、すべてに満足している超お気に入り製品です。アメリカでは「ネスプレッソ」という会員誌みたいなのがあるんですけど、これに一度、デザイン図とかが開示されていたことがあって、もう食い入るように読んじゃいました。すげー!!と。ネスプレッソは高いけど買っちゃったんですけど、あれ見たら余計に「いやー、これでも安いわ!」と思えました。

知財の情報開示は競合に戦略をあかすようなもんだ、という方もいらっしゃいますが、本当にそうなのかな。。。例えば「この分野で特許取りました!」みたいな情報が競合から出たら、「先にやられた!」と思って他社は製品開発の方向性を変更せざるを得ないかもしれない。実際、アップルが最近iPhoneに関する新たな特許の発表をしたみたいですけど、これで次はどんな機能のiPhoneが出てくるか、という話題の方が盛り上がってて、同じ方向で技術開発を他の携帯会社がしてる、とかいう話は出てこない。こういう状況だったら、同じような技術使って出てきたiPhone以外の携帯はオリジナリティがない、と消費者は判断するのではないでしょうか。そこにお金をかける、ってどうよ?って感じですよね。

日本のニュースで最近見たのが三菱鉛筆のシャーペン「クルトガ」。これはすごいヒット商品のようで、シャーペンの芯が書く度にくるくる回るのでいつも芯がとがっている、と。この機構開発には数年を要したそうで、クルトガって普通のシャーペンに比べればとても高いのにすごく売れてます。もちろん、これは機能面が先に市場で高く評価されてのヒットですが、開発に数年を要した、と聞けば、そのシャーペン、100円くらいで売ってよ、という気にはなかなかなりません。

知財広報・宣伝って、これからとても重要になってくるのではないかな~~と思います。ほんとは自分が日本に帰国して知財広報・宣伝コンサルティングとかやりたい♪ こういう話が普段から目に入ってくるようになるともっともっと科学や物理に興味を持ってくれる子供たちも増えるんじゃないかなー、と楽観的に思ったりします。ご家庭で「これってたっくさん発明が入ってるんだよー♪」と使いながら会話が進むようになると、ほんとに子供たちが興味もってくれるんじゃないかなー。日本発明家量産大作戦!!いや、そんなんじゃないですけど、知財広報・宣伝はこれからもっともっと考えていきたいテーマです。
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by suziefjp | 2009-07-16 06:31 | 知財経営 | Comments(0)

パワポの迷宮

今日のトピックは知財じゃなくて、もっと一般的なお話です。先週、複数の方が社内の資料作りで苦労している、、、というメールを下さったのでこのトピックを思いつきました。題して「パワポの迷宮」。よく考えればパワポなんぞが無い時代のほうがよっぽど資料作りがラクで良かったですよねぇ。

私はパワポを経営コンサル時代の師匠に教えてもらいました。金科玉条は以下です:
1. 1枚のスライドに大切なメッセージは一つ。たくさん詰め込まない。
2. 色を使わない。強弱はシェードの濃さで調整。
3. 小さすぎるフォントを使わない。最小でも12ptが限度。

結構「えっ?」って思う方がおられるかもしれません。それぞれ理由を説明しますね。

「1枚のスライドにメッセージは一つ」
パワーポイントはプレゼンテーションツールであって、ワードではないんですね。聴衆がいてなんぼのプレゼンテーションですから、とにかく簡潔明瞭、言いたいことをズバッ!と届けることが大事。たくさん詰め込みすぎると聞き手は「で、結局ナンなの?」と混乱してしまいます。
私が勤務していたコンサルティング事務所では、通常一番上で皆さんがタイトルとかを書くところに、そのスライドで言いたい一番大切なメッセージを文章で書くよう教わりました。そして、そのメッセージをサポートする分析や事実がそのスライドにくる、と。これは役員とか忙しい方の時間は限られていて、細かい中身を見る時間が無いことが多い、プレゼンテーションの上の文章だけをつなげて見てもらえばこのプレゼンテーションで伝えたいことが分かる、という構成にすべし、というものでした。実はこのアプローチ、今でも使ってます(笑)。とても便利。結構メッセージがないままスライドを埋めるケースもあるみたいですが、最初にメッセージを考えることでムダなものが入ってきません。

「色を使わない。強弱はシェードの濃さで調整。」
これは私が教わった中でもベスト3に入る大切な教えです(カラープリンターメーカーさん、ごめんなさい。。。)色を使わない理由は二つあって、一つは人によって色の好みが違うから。赤が好きな人もいれば赤が嫌いな人もいます。すると、ある部分を赤に塗ることによって、人によってその部分の受け取り方が違ってしまい、聴衆に統一したメッセージを伝えることが難しくなります。なので色は使わない。もう一つの理由は「ここを何色にするか考える時間が無駄」というものです。これ、真理だと思いませんか・・・?

「小さすぎるフォントは使わない。最小でも12ptが限度」
これも私にとってはとても大切。フォントをある程度の大きさに維持しようと思うと、無駄なことは書けません。すると、本当に大切な部分ってなんなの?と、考えぬくことができるんです。こういう制限を自分につけておかないと、「考えない」でテキトーに書いちゃうかもしれません。でも、制限があるから「本当に自分が言いたいこと、言わなきゃいけないこと」だけが最終的に紙面に残ります。実はここ、リスク判断でもあるんです。アレも言わなきゃ、コレも言わなきゃ、あとで抜けてたっていわれたら困る、とか思ってるとできないんですね。でも、制限があるからこそ、自分が優先してこのスライドで言わなきゃいけないことだけに絞り込めます。優先順位づけは決断であり、リスクをとることでもあります。パワポの練習をするだけでもこういう経営に必要なスキルを磨くことができるなんてステキじゃないですか!?

さて、もし、皆さんがこれを気に入ってくださって実践してくださったとしましょう。ここで一つ、問題が出る可能性があります。皆さんの上司に経営スキルが十分でないと、いくら皆さんがこういうアプローチでやったとしても「こんなもん全然ダメだーっ!」とつき返されるというとても不幸なことが起こります。

リスクをとれない上司だと、「アレが抜けてる、コレが抜けてる、なんで無いんだ」とか言い出します。中身よりもどう見えるか、だけを気にする上司だと「白黒なんて地味で目立てない、もっと色をつけろ、色を!」と言います。そもそもそこに何の意味があるのか全く分かりませんが「社長への報告は1枚って決まってるだろ?全部を1枚に詰め込んでくれなきゃ社長にはもっていけないよ。」と言う人もいます。そもそもその1枚ルールって何の役に立ってるのか考え直した方がいいんじゃないかと思いますが。。。とっても忙しい社長は1枚しか見れないからフォント6ptくらいにして全部つめこめ、と?そりゃ車で移動中とかに6ptの文字とか全部読むほうがよっぽど大変じゃないかと思いますが。。。優秀な社長にしたら全部入ってるより大事なことだけを簡潔に伝えてくれて、各部門責任者が自分の責任で動いてくれる方がいいんじゃないかなー・・・。

こういうのは正直なところ、トップダウンで変えていくしかないんです。。。社長が「なんでこんな余計なことたくさん書いてるの?」という人であり、かつ、書いてなかったことでも潔く責任を取ってくれるような人であればみんなその方向に動き出します。でも、社長が「僕は聞いてないよ!誰の責任だ!」と社内で騒ぐような人であれば、みんな保身のためになんでもかんでも詰め込みますから絶対変わりません。「○○君のプレゼンは色がきれいで華やかでいいよね!」とかバカコメントをする社長であれば、みんな必死で色付けします。もう社長の好きな色調べてカスタム色とか作ってたら爆笑モノです。そして役員は自分の部下に対して同じように「僕は聞いてないよ!」とか「地味だよ、地味!」とか言うから悪循環です。たまにいい役員の方がいても、社長がダメだとその役員が苦労しちゃいますし、これはイケてない上司をもってしまったイケ照る社員共通の悩み。こういう文化を変えるには本当にトップダウンしかありません。社長業の影響ってすごいですよねー。社長がイケるとイケるようになるんですね。部門でもトップが変わることでその部門全体の雰囲気が変わったり、というのは珍しいことじゃないですよね。人の上に立つ、ということはそれくらい影響が大きいことで、生半可な覚悟じゃできないんだな、と思います。その影響力だけを楽しんで部下が次々に不幸になっているケースも多いですし、逆にトップが変わってすごくハッピーになった方とかもいらっしゃいます。

とっても優秀な人達がこういう資料作りで何回もやり直し、とか徹夜、とかいう話をおうかがいするたびに切なくなります。その優秀な頭脳と時間をもっと違う形につかってもらったほうが絶対日本のためにはいいのに。。。もったいない話です。寂しいなあ。
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by suziefjp | 2009-06-24 02:49 | 知財経営 | Comments(0)

知財界は鎖国中か

たまたま日本のメディアさんとお話していて、ふと思いついたテーマです。

例えば、知財関連イベントがあるとします。すると、いつも参加面々、スピーカーは結構同じだったりする。よく私も「まだまだこの業界は狭いですからねー。」と、言いますが、じゃあ、広くなる可能性ってあるんですかね?ここ数年(4-5年)、メンツは同じだったり、、、という気がするのは私だけ?メディアさんとお話していて思いついたんですけど、いかんせん、知財の話って一般ウケしないんですよね。いや、ウケる必要はないんだと思うんですけど、少なくとも、理解してもらえるように我々知財担当者が話しているかどうか、というところが鍵なんだと思います。

知財に限らず、やたら専門用語を使いたがる人っていますよね?どうだ、俺がやってることはこんなに難しいんだぞ!みたいな。で、そういう話が終わったら、オーディエンスはどういう反応をするか。「いやー、難しいことやっておられるんですね。こりゃあ理解するのにあと10年かかりそうだ。」そして大団円、わっはっは。でも、これって、話した方も、聞いていた方も、その投資した時間コストって回収できたんでしょうか?成果はきっと、話し手の自己満足と、あと、聞き手は「この分野はしばらく放っておこう」というネクストステップ決定。これって、話し手が本当に狙うべき成果だったのでしょうか。

アメリカの弁護士さんはスピーチがうまいとか、プレゼンがうまい、と言われる理由の一つは間違いなく陪審裁判制度があるからです。陪審に来る人は本当にフツーの人です。陪審選びの時には営業担当サラリーマンが「俺の給料はコミッションベースなんだ、陪審の報酬では家族をサポートできないから、お願いだから免除してくれ」というケースもあるくらい、一般の人、普通の人です。こういう人たちに正しく理解してもらえるようにお話が出来てナンボ、ですから、専門用語を駆使するとか、「難しいですねー」と思ってもらえるように話す、なんて問題外です。相手にわかってもらうように話す、これが最優先事項です。

でも!結構知財業界を見てみると、例えば特許の話だと「ああ、文系の人にはわかんないよね」と、あしらってみたり、技術分野が違うだけで、もう天と地ほどの差があるぜ、という話になったり、、、いや、そりゃそうかもしれないんですけど、そこで終わっていいんですかい!?「話す」という行為はコミュニケーションの手段であって、話が終わったときに聞き手にどういう状態になっていて欲しいのか、を話し手はもっと真剣に考えるべきなのだと思います。と、すると重要なことは、いつも、自分がコミュニケーションする相手はどういう人なのか、それにあわせて内容、言い方、話の順番を調整し、終わったときには「!」という気づきを聞き手が持ってくださって、もう今日、この瞬間からこうしてみますよ!と、言ってもらえるような形で終わりたい。知財業界がみんなでこれを目指すことが、知財国の開国の第一歩ではないかと。

私自身、お仕事の中で一番聞いていてツライ話は「so what?」が無い話。いや、だから何なのよ、何がいいたいのよ、という話は聞き手にとって一番苦痛です。多分、我々知財業界が気をつけなくてはいけないのは、これまで知財に縁がなかった人たちにお話をするには、知財をちゃんとすることで、その人達にとってどんなメリットがあるのか、を、分かり易く伝える、ということなんだと思います。例えば全然知財やってない人に「こういう法改正があるとこれまで濫発されていた特許登録が正常化する」とかいっても、なーんの意味もないですよね。それこそ、「だからなんなの?」と聞きたくなります。

そんなことより、「こうして持っている特許のいる、いらない、を、判断して、いらない部分を処分する、たとえば、年5件、いらない特許を放棄すると、10年間で○○円のコスト削減ができるんですよ!」こういう話のほうがよっぽど「おっ!」って響くんだと思います。そしてさらに重要なこととして、できるだけ定量化してお話をする、というのもあると思います。案外、概念論で終わっちゃう人が多いんですね。でも、数字がないと具体的なイメージが沸かない。知財の人はコツコツ、出願の「てにをは」まで細心の注意を払ってやってこられた方が多く、こういうザクザクの数字を出してお話しすることに強い抵抗を感じる方も多いみたいです。「そんないい加減な話は出来ない」と。でも、これっていい加減な話でしょうか?なんでいい加減なんですかね?このあたり、実は気持ちの問題、これまで自分がやってきたことのベンチマークから離れられない、かつ、課題同定が間違っている、という可能性があります。「なんでいい加減なんですか?」「年5件が正しいのかどうか分からないじゃないか!」「いや、だから、年5件と想定すれば、数値は正しいですよ。年10件のほうがよければそれで計算しなおせばいいじゃないですか。」「そんな話じゃない!年5件がいいのか悪いのかも分からないうちに、そんな話をするのはいい加減だと言ってるんだ!」そもそも、年5件かどうか、は、イシューじゃないですから。。。こういうところに捕まってしまう人は経営者向きではなく、ここから脱却できない限り、こういう人が知財経営をするのは不可能だと思います。今自分が解こうとしている問題はなんなのか、伝えようとしているメッセージは何なのか、それを常に頭に叩き込んでおかないとこういう枝葉末節にはまり込んでなんのアウトプットも出せない、ということになります。上の例でいくと、年5件は今の課題ではなく、今の課題は知財棚卸がいいことだと分かってもらうことです。そこが通じると、ネクストステップとして、じゃあ、その聞き手の企業にとって適切な棚卸件数はどの程度なのか、を、データ分析して同定することになります。

日本でも知財経営、知財経営と言われて本当に本当に久しいです。一方、知財経営が進んだか、と言えば、実はあんまり進んでいないかもしれなくて、なんだか知財人が集まって「やっぱり知財の話って難しいんだよねー、なかなか分かってもらえないよねー」と仲良しクラブになり、そこに知財バックグラウンドではない新参者が新しいビジネスで入って来ようものなら、まず「あいつは分かってない!」と、叩く!これは鎖国以外の何者でもなくないですか?先入観がないからこそ見えること、気づくこと、も、たくさんあるはずで、我々知財業界自身、もっとオープンに色々な人に参加してもらいやすい土壌造り、そして参加してくれた人の意見をきっちり聞いて活かす、ということにもっともっと努力しないと知財経営なんて実現できないのかもしれません。

私の大好きな松下幸之助は「素直な心」というのをとても重視しておられました。「素直な心というものは、すべてに対して学ぶ心で接し、そこから何らかの教えを得ようとする謙虚さをもった心である」と。もし、我々知財業界の人間の話が業界閉鎖的で一般の方に分かりづらいものになっているなら、そういうフィードバックを謙虚に受け止めて改善していくことで、知財が経営に貢献する環境、つまり、開国につながっていくのかなー、と思います。
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by suziefjp | 2009-05-20 02:03 | 知財経営 | Comments(0)

考える力

ここのところ、日本でいわゆる一流と言われる大学の学生さんとやりとりをする機会がありました。そこで感じたのですが、私なんぞに比べるとまだまだ脳みそも柔軟でガンガン吸収できる年代なのに、なんだか硬直的なのです・・・。ある問題についての課題解決の幅が狭いというか、なんというか。誰かに「これが問題だよ」といわれると、その指摘された問題をas isで解こうとするんですな。ある意味、とてもマジメ。でも、これだとソリューションの広がりがない、というか、解くべき問題はほんとにそこなの?というのが考えられてないというか・・・。他にもこういう経験をされた方、いらっしゃいませんか?

とても優秀な学生さんなのですが、まだまだ若い皆さんに思考の広がりが感じられないのは、なんだかとても寂しい気がします。もっと自由に考えていいと思うんですが。一方、私がおつきあいいただいている日本の知財サービス業や弁護士・弁理士の先生は、最近、良く大学の教授や講師をお引き受けになって、実務経験にもとづく知財関連講義を提供しておられます。皆さん、本当にお忙しい方ばかりですが、それでもちゃんとシラバス作って講義してテストもして、って、すごいなー、と思います。こういう努力が次世代の知財プロフェッショナルを作っていくのだ!と思うと、うれしいものです。

こうした中で、知財だけに限らず、うまく「考える力」が育ってくれたらいいなー、と思います。ちゃんと考える力って、身につけば知財だけにかぎらず、いろんなことに使えます。日常生活しかり。私の恩師である先輩コンサルタントの方はよく「悩んじゃダメだよ。考えるのはいいけど、悩むのはダメ。」と言ってました。最初はコレ自体が分からず悩んでましたが、今思えば「悩む」というのは思考が停止している状態のように思います。どーしよっかなー、と思ってるけど、別に筋道たてて考えてるわけじゃなくて、なんとなく時間を無為に過ごしている感じ。外から見ると「悩む」も「考える」も同じに見えるかもしれないんですけど、
「考える」の場合、脳みそはフル回転してるんですね。

よくトヨタで実践されていること、として「なぜなぜ5回」というのを聞きますが、あれはまさに「考える」ですね。例えば、「うちの会社で出てくる特許は今ひとつデキが悪い」というお題があったとします。コレに対して、「デキを良くしろ!」というのは号令、あるいは掛け声であって、解決策ではないです。こういう号令だけを声高に叫んで「なんで君たちは俺のいうことができないんだ!」とか言う人の下では絶対働きたくないものです。こういう人が知財トップだと、その企業での正しい知財経営の実践は望めないかと思います。いや、あなた自身がまず経営を勉強してください・・・というところでしょうか。

「うちの会社で出てくる特許は今ひとつデキが悪い」ということに対して「なんで?」と考えてみると、例えば「請求項が狭いから」というのが見えるかもしれない。ここで、「請求項を広く書け!」というのもショボイですね。ここはまだまだ「なんで?」と考えてみる。すると、実は請求項が狭いだけじゃなくて、特許がカバーする技術そのものが狭いと見えてきた。そこで、も少し「なんで?」と考えてみる。すると、技術者が特許1件あたりに入れる技術を狭くしてるから、と。ヨシ、も少し考えてみよう。「なんで?」って考えると、技術者が自分の成果である発明を3つ4つに分けて特許化してることが分かった。さあ、もう一息だ、「なんで?」技術者に言わせれば、年間3件の特許を出せ、というノルマがあって、これを達成するために1件の特許としておけば強い特許になったものを、わざわざ3つとか4つに分けていた、と分かった。ここまでくれば、具体的なソリューションは見えてきますよね。現実のケースであれば、もっと調べないといけませんが、ここだけを見れば「ノルマを失くす」というのがソリューション候補として上がってきます。「ノルマを失くす」は「デキをあげろ!」に比べれば、よっぽど具体的で明日からでもアクションに移せそうですよね?

私の恩師の教えのもう一つが「戦略は実行可能なものでなくてはならない」ということです。つまり、戦略自体がアクションプランである必要があるわけです。たとえば誰かが「こういう戦略を考えたんだよ。この戦略を実行するための第一歩になるアクションを君が考えてくれないか?」・・・この時点でアウトですな。戦略こそがアクションでなくてはいけないわけで、この人が考えたのは戦略ではなく、ビジョンとか目標、そういったことのハズです。言葉ジリかよー、という話にもなるかもしれませんが、言葉って大きいですよ?案外、言葉の定義がそれぞれズレているから話が通じないケースもたくさんあります。日本語同士でも、これは多分よくあるケースだと思います。例えば「お昼からでかけよう」といったときに、Aさんは午後1時、Bさんは午後3時と思うかもしれない。Bさんが用意できたときには、もうイライラしまくったAさんは「あら、もう今日は行かないのかと思ったわ!」と、嫌味の一発からスタート。なんでAさんが怒ってるか分からないBさん、さあ、どうする?てな感じです。ちょっと話がそれましたか・・・。

学生さんと話していて思ったのは、出てくる案が、掛け声じゃないんですけど、「Aができてない」じゃあ、「わかりました、Aをやるように考えます。」てな感じなんですよ。Aができてない理由はなぜ?と考えていかないと、解決策に深みが出ないし、深みがないと、実はどーでもいい表面的なことをささっとケアしただけで根本的解決に至らないことが多いんですよね。するとそこが膿みたいにたまっちゃって、後でもう手がつけられない問題として顕在化しちゃったりします。

知財経営もしかり。まわりが知財経営、知財経営、と言ってアレをやってるから、ウチもアレしようぜ!なんてのは良くないですね。色んなことを深みをもって考えるようなクセをつけると、これまで見えてこなかった新しいことが見えてくるかもしれません。そうすると、こんな不況の中でも、世の中おもしろくなるかもしれませんよ!
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by suziefjp | 2009-05-15 02:12 | 知財経営 | Comments(0)

不況だからこその課題

いやー、、、景気悪いですね。今更、っちゅう感じですが、ほんとに不況。うちの会社もウェブサイトの「Career」のところにたくさん出ていた募集も、今は「募集してません」に変わりました。最近は、人気レストランでも結構すぐ予約できちゃうそうな。みんな外食をしなくなってきてるんでしょうか。同僚のお姉さんが今年ロースクールを卒業ですが、就職が無いらしい。アメリカのロースクールなんてすんごい高いし、みんな弁護士として就職して、そのお給料でローンを返す予定だったのに、どうなるのでしょう。。。

不況になると採用が減ると同時にレイオフが増加。レイオフされなくても、これを好機と見て独立する人たちも出てきます。そこで最近アメリカで話題になるのが人とともに知財が流出することをいかに防ぐか、です。この関係で、連邦法ですがComputer Fraud and Abuse Act (CFAA)というのがあります。これは、従業員に使用させているPCを含む電子データの取り扱いに関する法律です。今日も知財関係のコラムに出ていました。

今年の判決で、Lasco Foods Inc. v. Hall and Shaw Sales, Marketing & Consulting LLC というのがあるのですが、これは会社を辞めた従業員二人を会社が訴えたものです。かいつまんでいうと、この従業員が会社が貸与していたPCを会社からの要求にもかかわらず1-2ヶ月程度返却しなかったこと、そして、データを削除したことが会社に損害を与えた、というものです。

CFAAは雇用主が被る損害(damage)を「any impairment to the integrity or availability of data, a program, a system, or information」(データやプログラム、システム、情報の完全性を損ねたり、その使用やアクセスを損ねること)とし、損失(loss)を「any reasonable cost to any victim, including the cost of responding to an offense, conducting a damage assessment and restoring the data, program, system, or information to its condition prior to the offense, and any revenu lost, cost incurred or other consequential damages incurred beacuse of interruption of service」(データやプログラム、システムや情報を問題が起きる前の状態に回復するために要したコストや、問題への対応、損害の算定に必要なコストを含む合理的コスト、そしてサービスの提供の妨げにより発生した売上の損失、コスト、その他の偶発的損害をも含む)としています。さらに「損害」は「a cost of investigating or remedying damage to a computer, or a cost incurred because the computer's service was interrupted」(コンピュータへのダメージの調査やその回復に要したコスト、またコンピューターが使用できなかったことにより発生したコスト)も含みます。

このケースでは元従業員が物理的にPCをある期間返却しなかったことにより、会社側はそのPCを使えませんでしたから、使用やアクセスが損なわれてますし、実際に、従業員はデータを消してPCを返却したようで、会社側はデータが削除されているか、どのようなデータが削除されているか、を調べるためにフォレンジック・サービスを使っています。これに要した費用もすべて「損害」になります。コラムでも言っていましたが、あまりややこしくシステムとは、情報とは、とかを技術的に考察するよりも、常識的にCFAAを適用した、という感じです。

こういうのは営業担当者が会社を辞めるときに日本でもありそうな話ですね。一番重要なのはやはり顧客データ、お客様とのやりとり、とか。顧客データの持ち出しは日本でもよく問題になりますが、お客様とのメールでのやりとりなんかは日本の場合どういう扱いなんでしょうね?CFAAの場合、そういうものを「ええい、辞めてやる、もっかいゼロから顧客開発せえっ!」という感じで削除しちゃうとアウト、という感じですねー。レイオフされた日にはムカついて削除しちゃうかもしれませんが、レイオフされるは、それで後で会社から訴えられるわ、ではシャレになりません。人間、一時の怒りで行動するとイカン、ということでしょうか。(私は一時の怒りで、というより、ネチネチ根にもつタイプかもしれない。。。)

このほかにも、特にエンジニアの方が辞める、あるいはエンジニアの方をレイオフしちゃうときは、できかけの発明なんかがエンジニアの方と一緒に消えちゃう、というのを会社側は一番怖がります。そのあたりはまた今度のトピックということで。

不況だよねー、という話で、友達に「日本でカップケーキ屋さんになりたい。日本ってまだカップケーキがあんまりなさそうなんだもん。あんなにかわいくておいしいのに。」というと、とうとう不況が脳に来たか、あるいは新型インフルにやられたか、という反応をされました。本人、結構真剣だったんですけど。。。(泣)
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by suziefjp | 2009-05-07 01:22 | 知財経営 | Comments(0)
日本はゴールデンウィークですね。せっかくの旅行シーズンなのにこの豚インフル。昨日は朝からシカゴでも地元の幼稚園で疑わしいケースが出た、イリノイ州でも発症か、と、breaking newsとしてやってました。すごい騒ぎになってきました。花粉症の季節に同僚を日本に連れて行くと、みなさんマスクをしているのが珍しくて「なんで?なんで?」とやたら聞かれましたが、シカゴのマスク人口が増えるのもすぐかもしれません。

さて、今朝、大手米国事務所のモリソン・フォスターが知財コンサルティング会社と提携した、というニュースが入ってきました。モリソン・フォスターのプレスリリースはこちらからどうぞ。多様化するクライアントの知財ニーズに応えて、このコンサル会社と提携して知財戦略コンサルや知財評価、流通、管理なんかもサポートしちゃおう、ということのようです。提携先のOvidian Groupは元ヤフーの社内弁護士さんが立ち上げた会社だそうな。

やはり知財のニーズが多様化していることは間違いないんでしょうねー、モリソン・フォスターがこういう提携に踏み切るくらいですから。私としては嫌いじゃないです、こういう提携。モリソン・フォスターは有名弁護士事務所ですが、弁護士としてのスキルセットって、コンサルとしてのスキルセットとかなり異なります。だったら、自分達が無理してコンサルするより、それを専門とするところと提携して提供した方が、お客様にとっても無駄が無くてより良いサービスが提供できるのでは?・・・と、モリソン・フォスターが考えたかどうかは知りませんが(笑)、そういう風にも解釈できます。日本でもやはり知財戦略立案のサポートが必要、そこで弁理士の先生がコンサルを提供しよう、ということになってますが、これ、弁理士の先生がやったほうがいいのか、別の人がやったほうがいいのか、というところは考えられてないかもしれないですね。

私は弁護士も経営コンサルもやりましたが、その経験からいくと、この2つ、明らかに、全く、全然、異なるスキルセットなんですよ。前にも書きましたっけ?忘れもしない、コンサルに転職してすぐ、某パートナーが「あなたはリーガル・バックグラウンドだっけ?あー、そうかー、いやー、リーガルはコンサルに使えないんだよねー!」・・・・あ、あ、あなただって、私のこと面接しましたよね!?しかも、私がリーガル・バックグラウンドということで、司法改革がらみの質問をしたのはあなたでしたよね!?それなのに今更~~~!!もう転職しちゃったじゃーんっ!!

ま、その後非常に忍耐強くかつ教え方が上手なマネージャーのおかげで私はおちこぼれコンサルタントからなんとか脱出できたわけですが、いったん脱出すると自分の何がいけなかったのか、なぜリーガルはコンサルに使えないといわれたのか、が良く分かります。たとえば法律家、特に契約とか(弁理士の先生だったら出願の明細書とかそうなのかな?)、重箱の隅をつつくように、穴が無いようにドラフトしますよね。でも、経営判断って、たとえば80%オーケーならGO!といえる思い切り、リスク・テイキングが必要です。でも、弁護士さんとか社内法務部のメンタリティって、多分、そういうところから一番遠いんですよ。でもこれが弁護士さんや社内法務部の役割として期待されるところだから当然、それでいいわけです。弁護士さんとかも一緒になって60%でいーやん、それいけー!と、走るとブレーキがなくなり、危なくって仕方が無い。

今自分に期待されている役割は何か、と、気持ちや手法をサクサク切り替えられれば別ですけど、そういうのも難しいですから、明らかに別スキルセットならモリソン・フォスターみたいに、それができる人と組んでクライアントニーズを満たす、というのは正解なのかも、と思います。結果的にそのほうがお客さんの得る利益も多いかもしれんですし。

アメリカだとこれは君の仕事、という分業がクリアですが、日本って良くも悪くも全部自分でやらなきゃ、みたいなのがあるのかもしれないですねー。特許流通でも、外からは絶対買わない、自分達で開発する、という傾向が強いのも日本です。あと、もちろんアメリカにもいますけど、日本のほうが圧倒的に多いのでは?と思うのがプレイング・マネージャー。管理職だけど自分も実務やっちゃうよん、みたいな。人手が足りなくてやらざるを得ないケースも多々ありますが、結構なケース、人にまかせたら不安、あるいは管理より実は実務が好き、という理由でプレイング・マネージャーになってるケースも多そうです。この場合、部下が不幸。とても不幸。なぜなら、多くの場合、そういうプレイング・マネージャーは「マネージャー」業のほうは放棄しちゃうからです。(そして多くの場合、本人に「放棄している」という自覚が無い。)

人に任せない、アウトソースしない理由は、つきつめると、その任せ先を信用できないから、か、自分でしたいから、の、どっちかなんでしょうねー。日本で弁理士さんがコンサルを提供しよう、というのはどっちなんでしょう?あと、クライアント側から見て、日本は先生業に弱いので、コンサルなんて信用できない、先生のいうことじゃないと、というニーズもあるのかもしれません。いわゆる、町医者より大学病院。でも、コンサル業ではよく「クライアントさんがどんなことでも相談できる「町医者」になりなさい。自分で解決できないことも出てくるから、誰に聞けば解決できるか、そのネットワークの構築に日々つとめなさい。」と、言われたモンです。そもそも目指してるのが町医者のところに、お客さんは大学病院に行きたいんだ、ということだと完全にすれちがっちゃってるワケですが。。。

と、すると、先生業を窓口にその道の専門家が入ってくるモリソン・フォスターのやり方って、特に日本市場向けにはとても正しいのでは、という気がします。この提携はアメリカでのもののようですが、日本でもこういう手法が出てくるのは時間の問題かもしれませんね。日本にはまだまだ知財コンサルがないですから、それこそ日本の弁理士や弁護士の先生が海外のコンサルとの間に入ってくれたら、、、みたいなニーズは実はアメリカよりも大きいのかもしれません。

うーん、なんかまとまりが無いですけど、ご容赦を。。。
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by suziefjp | 2009-05-01 06:08 | 知財経営 | Comments(0)
先日、ある技術分野に関する特許ポートフォリオ分析、そこからのネクストステップの提案というコンサルティングプロジェクトが無事終了しました。そこでは外部特許の購入も積極的にご検討下さい、というお話をさせていただいたのですが、お客様からも「社内R&Dと並行して考えましょう」ということで、前向きに進めてくださるようでうれしいです。「外の人間が来て何を言うか!?」というリアクションもまだまだ多い中、取り組んでくださる方がいらっしゃるのは我々業者にとっても本当に励みになります。

第三者特許の取得については、以前、棚卸の回に少しカバーしましたが、今日はもっと実務的な点をカバーしたいと思います。

誰かが「この特許買いませんか~~」と言ってきた場合、まず提供された情報に「機密情報が含まれていない(=すべての情報が公知である)ことを確認してから中身を見ること」が肝心です。ちゃんとした業者であれば、技術コンタミネーションがどれほど情報を受け取る企業にとって害になりえるか、が、分かってますから、最初は公知情報しか提供しないと思います。そこで「チラ見」してもらい、御興味いただければ、必要に応じて機密保持契約を締結後、さらに詳細な情報を開示しますよ、というのが適切なアプローチです。最初から機密情報をガンガン送ってくるような場合、それで「あのとき見た情報をもとに特許とっただろー?」とか、揉め事のタネを作ることを狙うような悪質な業者もいるかもしれませんから要注意です。

あと、ウチの会社ではやはりトロール問題のご懸念が市場で大きいことも分かってますから、流通支援の際、ご興味をもっていただけそうな企業にお送りする初期の情報冊子の表紙に;
1) この冊子には機密情報は一切含まれないこと
2) この冊子をお送りした、御社にご覧頂いた、という事実は、将来の特許侵害訴訟等で一切使用されないこと

という2点を明記します。2)も重要です。もし、「あのとき、特許の存在を知って中身をみて「これはいい!」と思ってそのまま許可無く技術を使っただろう!」と、故意侵害主張のベースにこの冊子配布の事実が使われては、将来、どなたもこの冊子をご覧下さらなくなります。そうなれば我々の流通支援自体ができなくなります。ですから、我々はこの2点を必ず明確にしています。

企業によっては、こういう2点の有無にかかわらず、とにかく何らかの形で故意侵害の主張をされてはかなわんので、こういう売却オファーは一切見ない、という方針をとっておられるところもあるようです。それはそれで方針として明確なのでいいんですが、「機会喪失」は実はかなり大きいのではないかと思います。これは「ケガすると危ないから野球はしない」というのと同じですね。せっかく大リーガーになる素質があったのに、小さい頃から野球なんてダメ!と怒られて、才能が発芽しなかった。。。なーんて、まあ、究極の例ですが、危ないから何もしない、というよりは、危険が無いかどうかを確かめるチェックポイントを明確にしておいて、少なくとも機会は検討できるようにしておくほうが、利点が大きくなるのではないでしょうか。めざせ、大リーガー。(なーんか話がズレる。。。)

オファーがあった技術のレビューの仕方ですが、大体、以下の4つを検討していただく必要があると思います:
1. 自社の既存の商品で使用している可能性が無いか
もし、そんなことがあったら「買い」ですね(笑)。ただし、買うときの立場としては相手に弱みを握られれば値段がつりあがりますから「いくらなら買ってもいいよ~~」くらいのデカい態度で交渉を始めることが肝心です。交渉と並行して、万一買えなかったときの可能性も含めて設計回避も検討しておきましょう。あと、対象特許について非侵害の弁護士オピニオンをとっておくことも有効かと思います。これらはすべて、「買えなかったときのための」対策です。こんな特許のオファーが来たら、予算内で買えることを心から祈りたいですね。。。
2. 自社の将来商品に使用する可能性は無いか
これを知るには、検討をする知財部門の方が、将来の事業について知見をもっておかなくてはいけません。あるいは、知財の方が商品企画や技術企画とのコネクションを普段から密にしておいて、そうした方に「こういうの、将来使いそう?興味ある?」と聞ける体制を普段から作っておくことが重要です。そうした体制無く、とにかく「今使ってないものは買わない」という形だと、将来の機会を逃しちゃいます。知財部門の役割って、ほんとに重要ですよね。
3. 自分達は今も将来も使わないが、競合の既存商品が使っている可能性は無いか
これ、あまり検討されてないかもしれないんですけど、とても重要です。しかも、よく特許でもめごとが起きる競合との間では、常にその競合を牽制できる特許を確保しておく、というのはとても大切なことです。もし、競合が使っているかもしれない。。。という場合は取得しておいて自ら攻めに行くも良し、あるいは攻めてきたときに、この特許で反訴して早期和解をめざす、というタマに使えます。あるいは、その競合とクロスライセンスの取り決めなどをしているとき、クロスライセンス更新のタイミングでこの特許を持ち出して、自分たちにより有利な条件での更新をめざす、なんていうのもあります。
さらに、競合の持っている特許の中で「ヤバイなあ。。。うち、使っちゃってるんじゃないの?」みたいなのがあれば、「クロスライセンスしませんか?」と、この購入特許を使って持ちかける、ということもできます。特に自社で使用しない特許であれば、自社のR&Dリソースを割いてわざわざ開発するよりは、外から手っ取り早く取得できればそのほうがいいですね。ウチにも、「ある企業に言い返せる特許を探してください」という御依頼、実は結構あるんです。ウチは弁護士事務所ではないので侵害オピニオンは書きません。ですから、「このあたりの特許で向こうが興味があるのがあるかもしれませんよ?」という程度のものを客観的に分析してお渡しし、そこから先、社内で、あるいはお使いの弁護士に精査をしていただくようにしています。
4. 自分達は今も将来も使わないが、競合が将来使う可能性は無いか
もう相手の事業計画なんて、わかんねーよ!というのが正直ありますが、これも分かる範囲で検討しておくべきです。使い方は基本的に3と同じですが、すでにプレスリリース等されていて競合の将来の商品や方向が見えているような場合は、これもぜひおさえておきたいですね。

大体1はどこの企業でも検討してくださるようなんですが、2、3、4については企業でバラつきがあるようです。理想は常に1-4を検討した上で結論を出す、ということです。後、検討の時には素直にレビューする、ということも必要だと思います。例えば、「要らない」というために検討し、情報を集める、ということも多々行われているのではないでしょうか。結論先にありき、「要らない」。それをサポートする情報を集めて、丁重にお断りする。これも一つの方針ですが、要らないことをサポートするために費やす時間とコストが購入のための時間やコストよりも多いようであれば全く意味が無いです。そんなんだったら、絶対素直に買ってしまって安心しておくほうがよっぽどいいですよね。

とにかく疑い深くなる、要らないと決めつけてしまう、というのは、トロールの弊害です。あるシステムを搾取する人が現れることによって本来、円滑にまわるはずのシステムが非常に難しくなってしまう、というのはなんだか切ないですね。こういうのは別に特許の世界だけじゃないですから、人間って、自分でドンドン無駄な作業を生み出して効率性をさげてしまう、あほたれさんなのね。。。と思ってしまいます。でもこういうところがあるからこそ、おもしろい、ってのもあるんでしょうねー。
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by suziefjp | 2009-03-20 05:05 | 知財経営 | Comments(0)

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


by suziefjp