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米国知的財産権日記

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特許流通市場トレンド -オンラインじゃない市場(笑)

オンライン市場編に続き、今日は「オンラインじゃない市場」編です。いいなあ、このすごく頭の悪そうなサブタイトル。かなり好きです♪

で、オンラインじゃない市場といえば、やはり話題になっているのは公開ライブ知財オークションです。これは、米国のオーシャン・トモが年3回開催しているもので、2006年から実施されています。アンティークなんかのオークションと同じように、順番に特許が競りにかけられて、その場で落札されていきます。色々な技術の特許が取引されているようですが、大体、2件に1件の割合で落札が成立しているようです。2009年には香港でも実施するようで、いよいよ知財流通の波もアジアにやってくるか!?という感じです。売買対象は主に米国の特許のようで、米国特許所有状況を考えると、アジアでのオークションは日本でやってほしかったところですが、言葉の壁とか、こういう新しい市場の受け入れ度、とか考えると日本だとダメなんでしょうか。うーん、ちょっと残念。

こちらのオークションは知財のイベントとして2日間開催し、初日と2日目の午前中は色々な知財に関するセミナーが開催されています。2日目の午後がオークション。セミナーに参加してみるだけでも最新情報が手に入るかも知れません。私の特許もオークションで売ってみたいぜ!という方は個人、企業を問わず、問い合わせしてみては??過去、どのような特許が売りに出たか、それが売れたのか売れなかったのか、いくらで売れたのか、などのデータもすべてウェブサイトで開示されているので、これはやはり知財価値評価の面からも参考データとして有用です。(http://www.oceantomo.jp/ja/auction/default.aspx)あと、実際のオークション映像なんかもウェブサイトで見れます。おおお、ちゃんと入札があるんですな。なんか時代は変わったなあ。

正確には「市場」ではないですが、やはりカバーしておかなくてはいけないのは、知財アグリゲイターと呼ばれる人達です。有名なのはインテレクチュアル・ベンチャーズと、RPXでしょうか。インテレクチュアル・ベンチャーズはマイクロソフト出身者が多いようですが、ファイナンスバックグラウンドの人もたくさんいるようです。今年の9月30日には日本でも、日本オフィスの公式設立発表をかねて大規模なイベントを六本木でしていたようなので、日本にはこれにご参加なさった方がたくさんいらっしゃるかもしれないですね。

インテレクチュアル・ベンチャーズ(IV)はすでに韓国、中国、インド、シンガポールにもオフィスを展開しているようです。IVについては、正直、まだまだナゾな部分が多いです。ですから、逆に実際にここに知財を売却なさったことのある企業や大学の方、あるいは、投資家としてIVに参加しておられる企業の方とかのほうが彼らのビジネスモデルに詳しいかもしれないですね。その場合、彼らがどうやって儲けているのか、機密保持契約に触れない範囲でぜひ教えていただきたい!!自分達では特許技術を実施しないで、事業会社に対して侵害訴訟を濫発して和解金とかで儲けるビジネスモデルを「パテント・トロール」と呼びますが、このIVがたくさん特許を大学や企業から購入して、で、将来トロールとして本格活動するのか、などはまだまだナゾのままです。個人的にはもっとどういうビジネスモデルで儲かる仕組みになっているのか、ちゃんと説明して、だから安心して我々と取引してください、見たいなことを言ってくれたほうが怪しくなくていいと思うんですけど、いままでそういう説明会は実施されていないみたいです。(9月30日のイベントに出席された方の情報でも、そういう説明はなかった、ということでした。)

コレに対して、RPXのほうは、明確に「訴訟はしない」と打ち出していますね。していることはよく似ていて、ファンドをつのって、そのファンドで大学や企業、個人から特許を買っているわけですが、RPXの場合は「トロール対策としてトロールが特許を入手する前に買う」ということを明確に打ち出しています。ある意味、こっちのほうが気持ちがいい。ここの共同CEOであるジョン・アムスター氏は、RPXを設立する前は実はIVにいらっしゃったん方です。で、IVの前には、実はオーシャン・トモだったんですね。この流れを見ても、まだまだ知財流通市場プレイヤーが米国でも限られていることがもんのすごく分かりやすいですね(笑)。そこしかないんかい!?みたいな。

米国で開催されたある知財セミナーで、このアムスター氏とIVの人が同じパネルに参加してパネルディスカッションがあったんですが、アムスター氏が、IVの方に「IVがどうやって儲けているのかよく分からないんだけど」と発言したので会場では笑いが漏れました。元社員が分からんモデルって一体!?(笑)
あと、同じパネルディスカッションで、IVの方が「最近9桁のライセンス契約を2社と結んだ」っておっしゃってたんですけど、9桁って、億ドル単位ですよね??それって、何百億円ってことですよね?そんなライセンス契約が訴訟もせずにありえるのか!?ううむ、やはりよく分からんです。そりゃそんなライセンス契約がほいほいできるようなら絶対儲かると思うんですけど、でも、うーん、どうやってそんな超高額ライセンス契約ができるんだろう。ご存知の方、ぜひ教えてください!!

公開オークションに参加する、知財アグリゲイターに売る、色々なオプションが知財保有者にとっては出てきていますね。個人ならもちろん利用価値はありますし、企業でも事業撤退しちゃって特許どうしようか、というときにはこういうのを使えるでしょうし、あるいは特許棚卸しをしたときに、とりあえず、売れるものなら売って投資回収しようか、売れなければ放棄すればいいし、くらいの気持ちでこうしたサービス提供者にコンタクトしてみるのもいいでしょう。

いずれにしても、売った後、後味の悪いことにならないようにはしたいものです。日本でこうした特許流通が進まない理由の一つに、万一、自分達の特許がトロールの手に渡ってしまって、他の日本企業とかがそれで攻撃されたら。。。というレピュテーション・リスクの心配があります。気持ちは分かります。ですから、スジを通すようにするのが一番大事なんでしょう。知らない間にトロールに売っちゃった、とかだと、他の企業も「ええええっ!?」ってびっくりするかもしれないし(正直、そんな「他社が売らないだろう」という自分のコントロール外のことを想定して戦略を立てる方が悪いと思うんですけど。。。戦略は、自分のコントロールできる要素をベースに立てるべきもんです。)、「これ、売りますよー、今欲しい人は手を挙げて値段つけてくださーい」みたいなフェーズを一ついれておくと、後で文句言われても「あの時、欲しかったら買ってね、って、ちゃんと言ったじゃーん」といえますし、スジが通って後腐れないのかもしれません。まあ、気持ちの問題でしょうか。。。。
by suziefjp | 2008-11-30 08:53 | 知的財産権

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


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