特許の流通市場トレンド-オンライン市場
さて、今日は特許の流通市場を紹介します!私が昔事業会社で知財交渉をやってたときは、特許の取引といえば水面下、でしたが、最近はかなりオープンになってきましたね。
流通といっても、色々なパターンがあります。流通対象はライセンス権なのか、あるいは特許そのものの売り切りなのか、また、まずは交渉権を確保してそこから交渉するのか、あるいは、一気に取引完遂までやっちゃうものなのか。こうした情報を正しく入手して、ニーズに合わせて使い分けるのが良いですね!今日はまず、オンラインで使える市場を紹介しますね。
オンライン市場はかなり色々あるようです。日本で一番メジャーなものといえば、なんといっても特許庁の下部組織である独立行政法人「工業所有権情報研修館(INPIT)」さんの「特許流通データベース」です。ここでは、個人、大学、企業がこんな特許をライセンスあるいは売却しますよー、と掲示しておられます。キーワードサーチでお目当ての技術も検索できて、便利です。登録者情報も掲載されてますから、直接、登録者に問い合わせてもいいし、INPITに仲介をお願いする、というオプションもあります。また、特許の譲渡なのか、ライセンスなのかも登録内容に記載されていますから、これをベースに交渉すればいいですね。使用料は無料ですし、日本語だから使いやすいというのもあります。今、対象になっているのは日本特許、日本特許出願、とかのみのようですが、交渉次第で外国対応なんかも含めることができるんだろうなあ、と思います(実際やってないので確かなことはいえませんが。。。)
日本技術貿易という会社がやっているオンライン・オークションというのもあります(https://www3.ngb.co.jp/jp/)以前、こちらで1件取引が成立した、というのを聞いたことがありますが、今は新しい案件は掲載されて無いみたいです。こちらは、私が知っている限りでは「交渉権の確保」と聞きました。つまり、具体的金額を入札して、一番高かった人が「交渉権を獲得」し、そこからデューデリジェンス、実際の交渉が始まる、と。うーん、資料が見つからないんですけど、何かで、最初の案件は交渉権落札から約1年後に取引が終了した、というような記事を見た気がするんですが、間違ってたらごめんなさいっ!この日本技術貿易さんのものは特に日本特許という限定は無いようです。
海外と日本の間。。。というイメージでは、Japan Technology Groupというのがあります。ここは大学機関のもつ技術を市場に提供する仲介をメインとしておられるようです。日本の大学の技術移転がかなり話題になっている今、ここはニーズが高いエリアかもしれませんね。おもしろいなー、と思うのは、今ある技術を紹介する部分(http://www.japantechnologygroup.com/JTG%20List%20of%20technologiesJAN16.pdf)に加えて、企業側が「こういうのないの?」と、ニーズを掲示する部分がある、ということなんです(http://www.japantechnologygroup.com/techtransferb.asp)。大学側が企業ニーズを満たす発明だけをしちゃうようになるのは問題ですが、研究活動の方向性を検討する時にはこういう情報ってものすごく大学の研究者の役に立つと思うんですよ。世の中で何が求められてるんだろう?って。大学だけじゃなくて、個人発明家でもいいですよね。企業でも、自分達が使ってないもので、他の企業がこういうところでニーズがあります!というものがあるなら、ライセンスや売却しちゃうというのもアリだと思います。
海外になると、この間も紹介したパテント・ビッド・アスクというサイトがあります。ここは、独占ライセンス許諾か売却の取引場所です。日本や米国に限らず、色々な国の特許、特許出願が取引できるようになっていて、ここがおもしろいのは、売りたい人が「いくらでなら売りますよー、独占ライセンスしますよー」とオファーするだけじゃなくて、買いたい人が、そういう売りオファーが出てるものに限らず、オファーがでてない特許についても「この特許、いくらでなら買いますよー」というオファーを匿名でできるようになっていることです。私が事業会社にいたときは、会社が大きければ大きいほど、こちらから「ライセンス下さい」なんていうと、足元みられる(=大金を請求される)、ということで意地でも特許回避の方向でしたが、匿名だったら確かに足元みられないし、ダメ元でオファーしてみて、相手が無茶言うようだったら特許回避、という手段もとれます。もう一つ、このサイトの特徴は過去成立した取引額がすべて開示されていること。これは以前も紹介しました。なかなかこういうサイトはないので、ある特許の価値評価をするときの相場観データとして、この情報は貴重です!サイトの閲覧そのものは無料で、売り手、買い手がオファーを掲示するときには手数料がかかるみたいです。
最後は台湾のサイトを紹介しましょう。これはITRIという政府系の研究機関のオークションサイトです。(http://patentauction.itri.org.tw/tipa/about.aspx)ITRIはもともと、政府の技術研究機関で、自分達の研究成果を企業に出すために始めたのがこのオークションのようです。だから入札できるのが台湾企業に限定されてたんですね。オークション事業が拡張して、売り手としては米国企業なんかも参加できるようになったみたいです。最後に調べたときは、買手はやはり台湾企業に限定されていましたが、今もそうなのかな?ごめんなさい、ちょっと良く分からないので、もし、ご存知の方がいらしたら教えてください。。。こちらも交渉権の確保のようで、実際の取引はオークションで一番高値をつけて落札した方が交渉して、という形のようです。ただ、取引成立までは数ヶ月、と、日本技術貿易のものよりかなり短いみたいです。何が違うのかなー???
オンライン市場だけでも、結構出てきましたね。しかも私が少し書けるくらい知ってるだけでこれくらいありますもん、世の中にはきっともっとたくさんのオンライン特許流通市場があるんだと思います。これは個人発明家の方や中小企業の方にとってはうれしいことで、もし自分で使ってない技術とかがあればこういうところでどんどん取引できます!大企業もしかり。これだけ景気が悪くなってくると、あらためて無体資産の価値や金銭化が本格化するのでは?と私は期待しているんですが。
この後は、オンラインじゃない市場や、特許アグリゲイター(知財買取業者)みたいなのを紹介しますね!こういうのは断然、アメリカが進んでておもしろいですよー!!