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米国知的財産権日記

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ジョージア・パシフィック・ファクター 各論3

なんだかシカゴはすっかり秋の陽気です。涼しくていい感じ。ああ、サンマが食べたい。サンマに大根おろしとおしょうゆで白ゴハンをガッツリ!とか、夢のようなゴハンです。あ、お味噌汁もつけたい。。。今度日本に行ったらお魚用に無煙ロースターでも買いますか。

さて、今日はジョージア・パシフィック・ファクターの最後の5つです。一番最後は知財ご担当の皆様は良くご存知のHypothetical Negotiationという大物。とりあえず、順番にいきましょー!

11. 特許催告を受けた当事者による特許発明の使用程度、使用によって実現された価値を証明するもの
このあたりも結構、これまでに見たものとかぶってますよね。催告を受けた側の営業さんとか、企画さんとか、製法に関する特許なら生産管理や工場などで話を聞くことになります。で、実際にそういう価値が実現された、というかそういうのが必要になりますね。企画書で「この技術を使うとこれだけ売上が伸びると期待される」みたいなのがあって、で、発売後数ヶ月のレビューで、たとえば「予測値には届かなかったものの、やはり新機能搭載により売上がX%アップ」とかの記述があればいいですね。このあたりも、「そういうの、何かありますかねー」と、営業さんや企画さんに相談してみてくださいね。

12. 業界慣習上、特許発明あるいは類似発明の使用に割り当てられるべき利益部分あるいは販売価格部分
これはも見たような気がしますけど、類似技術について支払っているロヤルティ額(%)とかがあればそれを使います。また、これは我々エキスパート側でもRoyalty Sourceなんかを使って調べますし、あと、よくあるのは25%ルールですね。これもカバーしましたよね。ザクザクで営業利益の25%が技術貢献度、というヤツです。この25%をいかに使用されている技術内で割り振るか、ってのがまたあります。(Royalty Stackingというコンセプトがイメージしやすいですかね。いくら技術を使っても、どんどんロヤルティ額が増えるのではなく、割り当てが変わるんだ、というヤツです。そりゃあどんどんロヤルティが膨れ上がったら利益なんて出なくなっちゃいますよね。)

13. 特許発明以外の要素、製造方法、事業リスク、あるいは特許催告を受けた当事者が付加した機能や改善等ではなく、純粋に特許発明の寄与により実現されたといえる利益部分
これ、結局、エキスパートとしては何をお願いしたいか、というと、催告されている技術以外にどれだけ事業努力してるか、とか、コスト削減に努めてるか、とか、もう何でもいいんですよ、正直。営業努力だってあるし、宣伝効果だってあるし。「何でもいいって言われても。。。」と、なってしまうので、こういうのは関係者のみなさんに「とにかく、催告された技術の価値は低いんだ、といいたいんです!我々はこの製品によってこれくらいの利益をあげているわけですが、そうした利益はこの技術貢献以外の他の努力が大きいんだ、といえるもの、何かありませんか?」って聞くしかないんですよ。(あくまでも特許侵害催告を受けた立場では、ですよ?)あ、もちろん、裁判対象になっている技術以外の技術が魅力的なんだ、だから利益が高いんだ、ってのもありです。で、どれが有効か、を判断するわけで、こういうブレーン・ストーミング的なセッションって、弁護士さんやエキスパートと一緒にやるのがいいですね。で、その場でいろいろ皆さんに投げ入れていただいて、それを弁護士やエキスパートが判断して、「それについてはそれを文書で示せるようなものはないですか?」とかつめていくのがベスト・アプローチだと思います。最近はメールがあるので、つい、知財担当者の皆さんもメールで関係者に「こんなのありませんか?」って聞きがちなんですけど、こういうのって、メールとかで聞くと「ありません」とか言われちゃうんですよ。みんなが集まってブレストできるのが一番ですけど、それが難しいようなら、せめて知財担当者の方が営業とか企画とか個別に回って対面でヒアリングする方が絶対いいですよ。おすすめ。

14. 適切な専門家による意見、証言
はい、というのがファクターに入ってるから、アメリカではダメージ・エキスパートってのが存在するわけです。自分の会社の経理担当の方とかが計算した結果だと「適切な専門家の意見・証言」にならないんですね。で、エキスパートもピンキリで、いいのもいればダメなのもたくさんいますから、いいエキスパートを早めにおさえちゃうほうがいいですよ。

15. 特許所有者と催告を受けた当事者が、合理的かつ自発的にライセンス契約に達するべく交渉したと想定した場合のロヤルティ。つまり、対象特許発明を使用して製品を製造・販売しようとした潜在ライセンシーが、支払ったとしてもある程度の利益が手元に残るため喜んで支払おうと考えるロヤルティであり、かつ、特許所有者が喜んでライセンス許諾に応じるロヤルティ(いわゆるhypothetical negotiation(仮想交渉))
きました、Hypothetical Negotiation。これ、結構裁判に入る前にどんな交渉をしたか、とかが証拠として出されること多いんですが、案外、それって使えないんですよ。多くの場合は、「和解しないなら訴訟するぞ!」とか脅されて、苦渋の決断で和解案を提示することのほうが多くて、それは決して「喜んで支払おうと考えるロヤルティ」ではないんですよ。いろいろお話を聞いていると、hypothetical negotiationは無かった?と思うケースのほうが多いです。もちろん、hypothetical negotiationは訴訟開始前に起こった、と想定しますから、何の前触れもなく、いきなりドカーン、と訴訟されたような場合は、このデータはない、ということになっちゃいますよね。hypothetical negotiationをサポートできるような事象があったかどうか、も、まずは弁護士さんやエキスパートと相談してみましょう。無かったら無い、で、無理に当時のミーティングメモとか探す必要ないですし。あまり先入観を持たないで、どういう経緯でこの特許が問題になった、裁判になったのか、を、そのまま弁護士さんやエキスパートに話すのがいいでしょう。そこから、hypothetical negotiationとして使える数値があるのか、は、弁護士やエキスパートが判断すべきです。

で、一通りカバーしました!はー。。。GPファクター考えるだけでも大変ですね。だから訴訟って。。。。こうしてみてくると、ほんとうに、裁判の最初に弁護士、エキスパート、知財担当者、関連しそうな部門の人が集まって、まず状況を話し合う、何が必要になるか、何があるか、とかを確認するセッションが大事だなあ、と思います。これね、費用削減とかでやらないクライアントさんが増えちゃってるし、あと、「技術議論で特許を無効化すればダメージ算定はいらない!」とかでギリギリまでダメージ・エキスパートを雇わない、とか、ダメージ・ディスカバリを始めない、とかいう弁護士さんやクライアントさんも増えてます。こういうの、結局、コストが嵩むんですよ、最後に。しかも、適切な協力が関係部門から得られなくて(時間切れ。大体、「もっと早く言ってくれないと対応できないですよ!」と怒られる。)資料は出てこないわ、ぎりぎりになってダメージ・ディスカバリやるから、エキスパートのほうは数週間でエキスパート・オピニオン出せ、とか弁護士に言われるわ、みんなが不機嫌、不幸になる典型ですね。ウチの昭和一ケタ生まれの母親がよく「安物買いの銭失い」というのを言ってましたが、ぎりぎりになってから数週間でダメージ・ディスカバリをしようとするケースが出てきたり、お金がかかるから、ミーティングはいやだ、とかいうケースにあうと、この言葉を思い出します。。。

とりあえず、GPファクターはカバーしたので、ちょっとこれまでにカバーした内容を見直して、抜けてるところを次はうめていくようにしますね。長いなあ、特許侵害裁判シリーズ。。。
by suziefjp | 2008-09-12 02:37 | 知的財産権

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


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