米国知的財産権日記

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特許侵害訴訟-ほにゃららエキスパート

前回、訴訟が起こって株価に影響が。。。というお話をしましたが、よく考えたらまだ米国での特許侵害訴訟のお話をあまりしてませんでしたね。と、いうことで、今回は特許侵害訴訟です。

米国での特許侵害裁判を経験されている方もたくさんいらっしゃると思いますが、日本にないものが米国ではたくさんあります。まず、陪審。そしてディスカバリー(証拠開示手続き)。このディスカバリーはむちゃくちゃ手間も時間もお金もかかります。そしてこのディスカバリー中も含め、やたらとアメリカで出てくるのが「ほにゃららエキスパート」;何らかのエリアの専門家、と言われる人たちです。テクニカル・エキスパート、ダメージ・エキスパート、マーケット・エキスパート、陪審エキスパート。。。。たくさんいます。

これはアメリカの裁判制度がadversarial systemで、それぞれ原告、被告が判事や陪審に対してお話をし、私の言い分のほうが正しいんですよ、ということを示すために、その道のプロを連れてきて、そのプロに「うんうん、これが正しい」と言ってもらうことでハクをつける、という感じでしょうか。(陪審エキスパートはちょっと違いますが。。。陪審エキスパートについてはまた後日。。。)

まず、テクニカル・エキスパートはどっかの大学教授とか、ずっとその技術エリアに従事してきたエンジニア、とかが多いです。そもそも米国の特許侵害裁判では、その技術を知ってる特許弁護士を雇うことのほうが多いのに、なんでさらにテクニカル・エキスパート?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ハクをつけるためです!有名な先生とかに「この技術はこういう技術で、だったら侵害してない(あるいはしてる)」と言ってもらうことで判事や陪審は「この人がそういうならそうだろう」と思うわけです。これを弁護士が言っても「そりゃあんたの客のためにはそういうよね」と思われてしまいます。

ハクをつけるなら、いいのを連れてこなきゃいけません!訴訟弁護士の腕の見せ所の一つは、どれだけネットワークを持っていて、いいエキスパートを引っ張ってくることができるか?です。この世界、狭いですから、同じ人に原告、被告の両方がそれぞれ「エキスパートやってくれませんか?」とコンタクトすることだってたくさんあります。ですから、早めに、いいエキスパートを抑えちゃう、というのはとても重要です。こういうエキスパートは大体、時給いくら(数百ドル)での契約になります。

テクニカル・エキスパートと並んで重要になるのが、ダメージ・エキスパートです。これは、「この特許が侵害されているとしたら、正当な損害賠償金はいくらでしょう」と、証言するエキスパートです。日本の特許侵害裁判では、これは原告・被告の社内の経理担当者とかが弁護士さんと一緒に計算して主張することが多いかと思いますが、これもアメリカでやっちゃえば「そりゃ自社のために金額を少なく(多く)するような計算してるんでしょ?」と取られますから、アメリカではアウトです。みんなダメージ・エキスパートを雇います。

ダメージ・エキスパートは、知財の経済的評価ができる人がいいですし、ここでも、弁護士さんがいいダメージ・エキスパートを知っていることが重要です。やはりいいエキスパートは取り合いになるんですよ。あと、損害賠償算定のフェーズって、技術議論に比べて後になる場合があるんですが、最近、クライアントさんに対して「技術議論で勝てば損害賠償算定フェーズに入ることなく決着がつきますから、損害賠償のことは後回しにしましょう」という弁護士さんが増えているようです。これは絶対やめたほうがいいです!

理由は、「損害賠償算定のディスカバリーのほうがとんでもなく時間がかかること」、そしてやはり「いいダメージ・エキスパートが先に相手にとられちゃうこと」です。後でやるにしても、エキスパートだけは先に押さえておく方がいいでしょう。あと、エキスパートといっても、「うーん、このくらい!」と、えいやっ!で数字を出せるわけではありません。やはり数値を算出するベースとなる資料が必要です。テクニカル・エキスパートは例えばエンジニアの方とお話しすれば済むかもしれませんが、ダメージ・エキスパートは通常、企画、営業、経理、調達、など、非常に多くの部門の方とお話をする必要があるんです。で、こういう職能の人は「知財侵害裁判って何よ?」ということで、まず、協力してもらうのが大変。そして、テクニカルより、ディスカバリで提出してもらう資料が膨大なんです。

最近、ダメージ・ディスカバリを後回しにする弁護士さんが多いですが、正直、良くない傾向ですねー。最低限の準備だけは、やはりテクニカルと並行してやっておくべきでしょう。そして弁護士さんが「ダメージは後回しでいいや!」と思っちゃうのは、特許侵害裁判って、技術に詳しいけど経済に詳しくない弁護士さんが代理しちゃうことが多いせいかもしれません。粗利、営業利益、経常利益の違いが分からない弁護士さん、結構いますよ。。。技術一辺倒の弁護士さんだと、損害賠償の立証がどれくらい大変か分からないから、計算くらいすぐできるでしょ?と思うのかもしれません。こういう弁護士さんはちょっと。。。。私も今まで損害賠償算定をやって、「ああ、この弁護士さんはちゃんと経理も分かってるんだ」と思った人は少ないですよー。分かっていなくても、「分からないからこそ、時間をかける」というアプローチの弁護士さんは信頼できますね。

こうして書いてみると、まだまだ訴訟に関してはお伝えしていないことが多いなあ、と改めて思います。。。反省。次回は、じゃあ、なんでダメージ・ディスカバリが大変なのか、何をしなきゃいけないのか、そのあたりをカバーすることにしますね。
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by suziefjp | 2008-08-20 07:44 | 知的財産権 | Comments(0)

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


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