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米国知的財産権日記

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特許消尽 ~ 国にかかわらず、売っちゃったら消尽

今回の会期が終わるまでに最高裁判所が決定するだろうと期待されていた知財関連・日本関連の事件は3つありました。うち二つ、TC HeartlandWater Splashについては5月に報告したとおりです。そして3つ目の「Impression Products, Inc., v. Lexmark International, Inc.」についても実は5月末に決定がでました。このImpression Products事件は特許消尽に関するものです。判決文は最高裁判所が公開してくれているうちにこちらからどうぞ。

Impression Products事件は、プリンタトナーの再充填業者が空カートリッジにトナーを再充填して販売した場合、そうした販売はそのカートリッジをもともと販売したメーカーさんがそのトナーカートリッジに関して所有している米国特許を侵害し得るのか、が主な問題でした。もともとのメーカーさんが、例えば日本であるカートリッジを販売したとします。で、それを使い終わったユーザーさんが再充填業者に空カートリッジをあげちゃって、で、再充填業者がトナーを再充填したカートリッジを今度はアメリカで販売したとします。で、そのカートリッジにはもともとのメーカーさんが持っている米国特許技術が使用されていた、と。そういう時に、この米国で販売された再充填カートリッジは、もともとのメーカーさんの米国特許を侵害するのか!?がお題でした。

で、回答は「しないよーん。」と。つまり、どこの国であろうが、一回販売しちゃったら、その販売した製品については、自分が持っている米国特許を権利行使できないよ、と。いわゆる特許消尽ですね。また、この事件では、もともとのメーカーがカートリッジを販売するときに「このカートリッジの再使用や再販は固く禁じます」と一筆そえて販売していたんですな。で、そうした制限を特許侵害裁判を通じて強制できるのか、というのも問題点として挙がっていました。で、これに対する答えも「だめよーん。」と。そうした制限をつけていても特許侵害がらみとしては制限を強制できない、ということになりました。これ、事件の当事者になったのはレックスマークですが、レックスマークに限らず、トナーの再充填問題で頭が痛いプリンターメーカーさんはますます頭が痛くなっちゃいますよね。カートリッジの販売ってプリンターメーカーさんのドル箱なのに。。。

でも、特許の独占ライセンス契約とかで、ライセンシーAに地域Xでの独占使用権を与えて、ライセンシーBに地域Yでの独占使用権を与えて、、、みたいなのもありますよね?で、Bが自分が地域Yじゃなくて、地域Xに物を持ち込んだらどうなるのよ?ってのはありますが、これは「Bによる特許侵害」として争うのではなく、Bによる契約違反、つまり契約法の中で争え、というのが最高裁判所の立場です。だからカートリッジの販売時に「このカートリッジの再販・再使用は、再充填業者への譲渡・販売を含めて固く禁じます。」という条件で販売したにもかかわらず、ユーザーさんが再充填業者にこの空カートリッジを譲渡しちゃって、その再充填業者が再充填カートリッジを販売しちゃったら、メーカーさんは再充填業者に特許侵害を主張できませんが、ユーザーさんに対して販売契約違反を主張できる、ということです(まあ、ユーザーさんをいちいち追っかけられるか、というとメーカーさんにとってはビミョー。。。)

とりあえず、7月末までに出るだろうと期待されていた特許・日本関連の最高裁事件はこれで決定が出尽くした感じです。最高裁判所判事の皆さんも夏のバケーションを楽しみにしているかもしれません♪



by suziefjp | 2017-06-10 03:29 | 知的財産権

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


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