米国知的財産権日記

iptomodach.exblog.jp
ブログトップ

管轄と送達と日本企業

ちょっと最高裁判所判決のインパクトが大きいので、5月、頑張ってアップしております!珍しくこんなに頑張ったら6月は燃え尽きて「あしたのジョー」状態だな。。。

米国は5月29日(月)がメモリアル・デーの祝日で3連休でした。その間にTC Heartland事件とWater Splash事件と日本企業の関係を「管轄と送達と日本企業」として、「部屋とYシャツと私」(古いっ!)的にもんもんと考えてたんですけど、どうもすっきりしない。TC Heartland事件報告のときに、日本企業だけが特許侵害裁判で訴えられるとしたら、、、を少し検討しましたが、この事件で問題になった米国民事訴訟規則の1400(b)条は国内企業に適用することが明言されているので、この解釈は日本企業には適用されないんですね。じゃあ米国外に居住する人達はどこで訴えられるのか、っていうと、1391(c)(3)条ってのがありまして、そこでは「a defendant not resident in the United States may be sued in any judicial district, and the joinder of such a defendant shall be disregarded in determining where the action may be brought with respect to other defendants.」とあります。すなわち、「米国に居住しない被告については、米国内のどこででも訴えられますよ、ただし、そうした非居住被告と一緒に提訴される在米被告に関する管轄地について、非居住被告と一緒に提訴されるからどこでも訴えられる、ってわけじゃなくて、当該在米被告に関する管轄地の判断には影響しませんよ。」と。なので、やっぱり在米子会社と一緒に日本親会社が提訴される場合は、在米子会社の管轄地に引っ張られると思います。

問題は日本親企業が単独で提訴されたら、、、ですけど、その場合は1391(c)(3)条だと「米国内のどこででもいいですよ」となってしまうわけです。ここで注目したいのは、TC Heartland事件の最高裁判所意見書の7ページにある脚注(PDF文書のページ番号だと10ページ)なんです。ここにしっかり「この判決では外国企業の特許侵害事件の管轄地に関する意見は述べません」とあります。こういうのって最高裁判所判決によくあるんですよ。そこまで決まったら次はこの点絶対もめますよ、的なところを「本件ではそこまではカバーしません、あしからず」みたいなのが!!で、こういう予告編みたいな脚注にあるトピックって、それ以降の事件でクローズアップされて数年後に最高裁にあがる、なんてのが結構あるんです。

この脚注で引用されているBrunette Mach. Works, Limited v. Kockum Industries, Inc.という最高裁判決ですが、この判決では最高裁判所は「外国人に対する訴訟は米国連邦管轄法のカバー外である」と述べたんです。で、この判決後、1391条が改正されて今みたいな「米国に居住しない被告はどこででも訴えられまっせ。」てなものになったんです。TC Heartland事件でわざわざ最高裁判所が「外国企業の特許侵害裁判管轄地に関してここでは述べませんよ」と言っているのは、「でも、述べて欲しいと要請が来たら述べるかもね。」みたいなサイン???だとしたら、将来、この問題が最高裁判所にあがれば明確にされるかもしれません。

とりあえず、そういう明確化がない状態でありそうなパターンを考えてみると、自分に都合の良い管轄地で訴えたい特許権者がわざと日本親会社だけを提訴することもあるかもしれません。その場合、Water Splash判決が今ひとつクリアではないので、日本側としては、「日本の裁判所書記官から郵送されていない」ケース、あるいは、「これまでどおりのハーグ条約上の送達手続きがとられていない」ケースでは送達無効を主張するのが良いのかな、と。もし送達がちゃんとしていて、全然関係ない場所で提訴された場合、その点を最高裁判所の呼び水に応じて争うべきか、あるいは、そこは争わないべきか、、、うーん、考えどころです。(どっか強気の外国企業がここ争ってくれないかなー。。。)

いわゆる和解金狙いの特許トロールは「日本企業だけを訴えると送達だけでもめるかもしれない」「めんどくさい送達にコストと時間かけたくない」「ディスカバリはヤル気ないけど、和解圧力のためにデポジションやるぞ!とか言っても、じゃあ日本の米国大使館か領事館まで来なさいよ、って言われる」「もし日本企業が本気になって、外国企業に関する特許侵害裁判管轄を最高裁まで争うぞ、みたいな感じになったらめんどくさい。。。」とか色々考えてテキサス東部で訴えることを優先して日本企業だけを訴える、というのはしないかもしれませんね(あくまでも希望的観測ですけど。。。)TC Heartland事件報告 で申し上げたような直接侵害・間接侵害の問題はすっとばして1391(c)(3)条にもとづいて、日本親会社だけを好きな場所で訴えてくる特許トロールが出てくるか、しばらく様子をみておきたいと思います。何か顕著な傾向が出てきたらまた報告しますね。



[PR]
by suziefjp | 2017-05-31 03:50 | 知的財産権 | Comments(0)

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


by suziefjp