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米国知的財産権日記

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日本企業への米国裁判訴状送達が郵便でオッケーになったのか分からぬ。。。

最高裁判所がガンガン判決を出してくるんで、こちらも追いつくのが大変です。。。

やはり2016年12月に「日本企業への特許侵害裁判訴状送達が郵便でオッケーになるかも?」で紹介しましたWater Splash, Inc. v. Menon (No. 16-254)事件も2017年5月22日に判決が出ました。が!日本企業への訴状送達が郵便でオッケーなのかどうか、イマイチ分からぬ、、、というのが本音でして。。。

問題の最高裁判所判決はこちら。これも最高裁版所ウェブサイトが掲載してくれている間にご覧下さいね。最高裁判所はこう決定しています:in cases governed by the Hague Service Convention, service by mail is permissible if two conditions are met: first, the receiving state has not objected to service by mail; and second, service by mail is authorized under otherwise-applicable law. つまり、送達先国がハーグ条約批准国の場合、①ハーグ条約における郵送での送達を当該国が拒否しておらず、②その他適用される法律で郵送が可とされている、という2つの条件が満たされる場合は郵送による訴状送達が可能、とな。①は以前申し上げたとおり、日本は拒否していないのでクリア、として、問題は②です。②の条件について最高裁判所が「ほら、ここにそうあるでしょ?」という意味で引用した判例が「Brockmeyer v. May, 383 F.3d 798 (9th Cir. 2004)」という事件なんですが、この事件では①ハーグ条約は郵送を認めている、②しかしその郵送方法についてまでハーグ条約は明示していないため、郵送方法を定めた米国連邦民事訴訟規則を見たところ、今回の郵送は米国連邦民事訴訟規則の要件を満たさないため、アウト!として、在英国の被告への郵送送達を無効としています。

この事件にある「米国連邦民事訴訟規則」ですが、4(f)条に外国への送達に関して具体的に定めた条文があります。4(f)条いわく「外国への送達に関する条約が無い場合、あるいは条約があり当該条約で許されている送達ではあるがその条約に送達方法が明示されていない場合、は、送達先国の法律で禁じられていない限り、(i) 手渡し、または(ii)担当判事書記官による、受領確認を要請するいかなる郵送方法、の、いずれかでの送達が可能」としています。Brockmeyer事件では、担当判事書記官が英国の被告に郵送したのではなく、原告が被告に直接郵送したため、それは「その他適用される法律」である「米国連邦民事訴訟規則」の要件を満たさないために無効だよ、となったわけです。

これをふまえて日本ではどーなるの?と考えると、日本の法律が外国裁判における在日本当事者への郵送送達を禁止しているのか?が、まず最初のポイントになります。私は日本の法律にあまり詳しくないので、何か日本法の中に外国裁判における在日本当事者への郵送送達を禁止する法律や条文があるのか分からない。。。もしご存知の方いらしたらぜひ教えてください!で、仮に外国裁判における在日本当事者への郵送送達を禁止する法律や条文がない、とすると、そのことを持って「(A)郵送送達を禁止していないと解釈すべき」なのか、「(B)日本国内の送達に関する規定を外国裁判にも自動的に適用すると解釈すべき」なのかが分からない。。。仮に(A)だとすると、Brockmeyer事件を参照して、米国連邦民事訴訟規則4(f)条の要件を満たす送達であれば可、すなわち、「米国の担当判事書記官による受領確認を要請した郵送方法」であれば送達有効、となります。で、「(B)日本国内の送達に関する規定を外国裁判にも適用すると解釈すべき」だとすると、12月の記事でも申し上げたように、日本国内の裁判では職権送達主義(=国内訴訟の訴状送達は裁判所によりなされなくてはならない)が取られています。これを「日本国内の裁判所書記官により送達されなくてはならない」と厳格に解釈すべきなのか、あるいは、「外国の裁判所書記官に送達されれば可」と解釈すべきなのか、が、今度は分からない。。。

とりあえずの対策としては、「米国裁判の担当判事書記官による受領確認を要請した郵送方法」以外で郵送送達された場合は、「(日本の法律が郵送送達を禁止していないとしても)米国連邦民事訴訟規則4(f)条の要件を満たさない送達なので無効」と主張して良いと思います。問題は、「米国裁判の担当判事書記官による受領確認を要請した郵送方法」で郵送送達された時に、「日本の法律では郵送送達そのものを禁止している」、あるいは「日本国内の裁判所書記官による送達でなくてはならない」と主張して、送達の無効を争うことが出来るか、が、謎なことなんですよ。これ、誰か日本の弁護士さんでお分かりの方がいらしたら本当に教えて欲しいです!!

なんだかすっきりしないオチになってしまって申し訳ない。繰り返しですが、とりあえず、「米国裁判の担当判事書記官による受領確認を要請した郵送方法」以外で郵送送達された場合は送達無効を主張できるであろう、というのが現段階での結論かと。これを「結論」とか呼んだら「結論」が怒ってくるよなー、と、自分でも思うレベルの報告ですいません!



by suziefjp | 2017-05-26 03:29 | 知的財産権

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


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