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米国知的財産権日記

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大人気のIPR

最近、お問い合わせが多いのはなんといってもInter Partes Review(IPR)です。IPRは2011年9月16日に発効したthe America Invents Act (AIA)でこれまでの当事者系再審査に代わるものとして提供された手続です。IPRはPatent Trial and Appeal Board(PTAB)の行政特許判事(APJ)3人から成る合議体で決定されます。ちなみにAPJになるには弁護士資格が必要です。(米国特許庁の人材募集で「APJ募集、要弁護士資格」とあったので(笑))

色々これまでの当事者系再審査と違う点があるわけですが、実務をやっている中で大きい変化だと思うのは:
1.手続開始決定から基本1年以内、最長1年半以内に手続が終了すること
2.当事者同士で和解できること
かと思います。当事者系再審査の場合、1のような期限が無かったですね。IPRのご要望が増えているのは、わりと短期間(手続開始から最長18ヶ月)で結果が出る、という点が大きいのだと思います。あと、当事者系再審査は和解できず、いったんはじめたら最後までやるしかなかったんですが、当事者系レビューは和解が可能ですから当事者同士でライセンスに合意すればIPRを和解する、ということもできます。訴訟と比べると費用も安い(比べると、ですよ?)し、無効立証に必要な基準も訴訟より低いので無効確認訴訟よりもIPRのほうが人気なのかもしれません。あ、あと再審査にくらべて連邦地裁のステイ率が高いんですよ。IPR手続中の同じ特許で特許侵害訴訟が提訴された場合、IPRの結果が出るまでその訴訟がステイされる確率が大体70%くらいです。(裁判地にもよりますが。)

ではいつでもIPRが使えるか、というとそうではないです。ざっくり言ってしまうと、IPRを申し立てたい人は以下の要件を満たすことが必要です:
•無効のベースとなる先行技術が文献または特許であること
•対象特許の侵害訴訟を過去1年以内に提訴されていないこと
•対象特許について無効確認訴訟を提訴していないこと
•(2013年3月16日以降に出願された特許の場合)登録から9ヶ月超経過していること

ですから、「既存製品に使用されていた」のように製品が無効資料となるものは不可です。無効資料は文献または特許でなくてはいけません。よって無効資料を探すために先行技術調査等をなさると思うのですけど、「合理的に考えてこのIPRで述べることができたであろう事由にもとづく主張を将来してはいけない」という制限があるので、できるかぎり先行技術調査はしっかりなさるほうが良いでしょう。もうちょっと広範にサーチかけていれば見つかったのに~~、みたいな良い無効資料が後で見つかっても、それを使ってあらためてIPRを提訴する、ということが許されない可能性があるのでご注意を。で、IPRの申立後、6ヶ月以内にPTABがIPRを開始するか否かを決定してくれます。申立準備は結構大変で、既述の通りある程度しっかりした先行技術調査も要りますし、申立書はクレームチャート込みで60ページ以内に抑えなきゃいけない(しかも行間はダブルスペース!)のでかなり書くのも難しいし。。。とはいえ、やっぱり訴訟に比べれば使いやすいのは事実かと思います。IPRでよく言われるのが「ディスカバリ(証拠開示手続)がある」ということですけど、これもかなり限定的なんですよ。そもそもお題が「無効性」だけだから、それに関するディスカバリだけとなれば訴訟における広範なディスカバリ(非侵害やら損害賠償やらに関する証拠開示も含む)より俄然範囲は限定されます。

大事な情報としてお金の話を。。。弁護士費用を除く、米国特許庁に支払うお金ですが申立時に$9,000プラス20を超える請求項一つ当たり$200が必要です。このお金は返金されません。これに加え、$14,000プラス15を超える請求項一つあたり$400も同時に納入するのですが、こちらはIPRの申立が否決されて手続が開始されなければ返金されます。ただし、たとえば18の請求項について申し立てたけど、10については開始が決定し、8については否決された、なんていう一部認可の場合、$400X3=$1,200は戻ってきますけど、$14,000の部分は戻ってきません。この特許庁に支払うお金プラス弁護士費用がかかるわけですから、決して安くはないんですよ。あくまでも、訴訟に比べれば安いってことかと思います。

ちなみに米国政府会計年度2013年度(2012/10/1~2013/9/30)は563件のIPRが提訴されましたが、2013年10月1日から始まった2014年度はすでに361件!いやー、ほんとによく利用されてます。

IPRはたくさんお話しできることがあるのですけど、ここで全部を説明するのは難しくてなんだか中途半端でごめんなさい!
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by suziefjp | 2014-01-31 01:04 | 知的財産権 | Comments(0)

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


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