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米国知的財産権日記

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パワポの迷宮

今日のトピックは知財じゃなくて、もっと一般的なお話です。先週、複数の方が社内の資料作りで苦労している、、、というメールを下さったのでこのトピックを思いつきました。題して「パワポの迷宮」。よく考えればパワポなんぞが無い時代のほうがよっぽど資料作りがラクで良かったですよねぇ。

私はパワポを経営コンサル時代の師匠に教えてもらいました。金科玉条は以下です:
1. 1枚のスライドに大切なメッセージは一つ。たくさん詰め込まない。
2. 色を使わない。強弱はシェードの濃さで調整。
3. 小さすぎるフォントを使わない。最小でも12ptが限度。

結構「えっ?」って思う方がおられるかもしれません。それぞれ理由を説明しますね。

「1枚のスライドにメッセージは一つ」
パワーポイントはプレゼンテーションツールであって、ワードではないんですね。聴衆がいてなんぼのプレゼンテーションですから、とにかく簡潔明瞭、言いたいことをズバッ!と届けることが大事。たくさん詰め込みすぎると聞き手は「で、結局ナンなの?」と混乱してしまいます。
私が勤務していたコンサルティング事務所では、通常一番上で皆さんがタイトルとかを書くところに、そのスライドで言いたい一番大切なメッセージを文章で書くよう教わりました。そして、そのメッセージをサポートする分析や事実がそのスライドにくる、と。これは役員とか忙しい方の時間は限られていて、細かい中身を見る時間が無いことが多い、プレゼンテーションの上の文章だけをつなげて見てもらえばこのプレゼンテーションで伝えたいことが分かる、という構成にすべし、というものでした。実はこのアプローチ、今でも使ってます(笑)。とても便利。結構メッセージがないままスライドを埋めるケースもあるみたいですが、最初にメッセージを考えることでムダなものが入ってきません。

「色を使わない。強弱はシェードの濃さで調整。」
これは私が教わった中でもベスト3に入る大切な教えです(カラープリンターメーカーさん、ごめんなさい。。。)色を使わない理由は二つあって、一つは人によって色の好みが違うから。赤が好きな人もいれば赤が嫌いな人もいます。すると、ある部分を赤に塗ることによって、人によってその部分の受け取り方が違ってしまい、聴衆に統一したメッセージを伝えることが難しくなります。なので色は使わない。もう一つの理由は「ここを何色にするか考える時間が無駄」というものです。これ、真理だと思いませんか・・・?

「小さすぎるフォントは使わない。最小でも12ptが限度」
これも私にとってはとても大切。フォントをある程度の大きさに維持しようと思うと、無駄なことは書けません。すると、本当に大切な部分ってなんなの?と、考えぬくことができるんです。こういう制限を自分につけておかないと、「考えない」でテキトーに書いちゃうかもしれません。でも、制限があるから「本当に自分が言いたいこと、言わなきゃいけないこと」だけが最終的に紙面に残ります。実はここ、リスク判断でもあるんです。アレも言わなきゃ、コレも言わなきゃ、あとで抜けてたっていわれたら困る、とか思ってるとできないんですね。でも、制限があるからこそ、自分が優先してこのスライドで言わなきゃいけないことだけに絞り込めます。優先順位づけは決断であり、リスクをとることでもあります。パワポの練習をするだけでもこういう経営に必要なスキルを磨くことができるなんてステキじゃないですか!?

さて、もし、皆さんがこれを気に入ってくださって実践してくださったとしましょう。ここで一つ、問題が出る可能性があります。皆さんの上司に経営スキルが十分でないと、いくら皆さんがこういうアプローチでやったとしても「こんなもん全然ダメだーっ!」とつき返されるというとても不幸なことが起こります。

リスクをとれない上司だと、「アレが抜けてる、コレが抜けてる、なんで無いんだ」とか言い出します。中身よりもどう見えるか、だけを気にする上司だと「白黒なんて地味で目立てない、もっと色をつけろ、色を!」と言います。そもそもそこに何の意味があるのか全く分かりませんが「社長への報告は1枚って決まってるだろ?全部を1枚に詰め込んでくれなきゃ社長にはもっていけないよ。」と言う人もいます。そもそもその1枚ルールって何の役に立ってるのか考え直した方がいいんじゃないかと思いますが。。。とっても忙しい社長は1枚しか見れないからフォント6ptくらいにして全部つめこめ、と?そりゃ車で移動中とかに6ptの文字とか全部読むほうがよっぽど大変じゃないかと思いますが。。。優秀な社長にしたら全部入ってるより大事なことだけを簡潔に伝えてくれて、各部門責任者が自分の責任で動いてくれる方がいいんじゃないかなー・・・。

こういうのは正直なところ、トップダウンで変えていくしかないんです。。。社長が「なんでこんな余計なことたくさん書いてるの?」という人であり、かつ、書いてなかったことでも潔く責任を取ってくれるような人であればみんなその方向に動き出します。でも、社長が「僕は聞いてないよ!誰の責任だ!」と社内で騒ぐような人であれば、みんな保身のためになんでもかんでも詰め込みますから絶対変わりません。「○○君のプレゼンは色がきれいで華やかでいいよね!」とかバカコメントをする社長であれば、みんな必死で色付けします。もう社長の好きな色調べてカスタム色とか作ってたら爆笑モノです。そして役員は自分の部下に対して同じように「僕は聞いてないよ!」とか「地味だよ、地味!」とか言うから悪循環です。たまにいい役員の方がいても、社長がダメだとその役員が苦労しちゃいますし、これはイケてない上司をもってしまったイケ照る社員共通の悩み。こういう文化を変えるには本当にトップダウンしかありません。社長業の影響ってすごいですよねー。社長がイケるとイケるようになるんですね。部門でもトップが変わることでその部門全体の雰囲気が変わったり、というのは珍しいことじゃないですよね。人の上に立つ、ということはそれくらい影響が大きいことで、生半可な覚悟じゃできないんだな、と思います。その影響力だけを楽しんで部下が次々に不幸になっているケースも多いですし、逆にトップが変わってすごくハッピーになった方とかもいらっしゃいます。

とっても優秀な人達がこういう資料作りで何回もやり直し、とか徹夜、とかいう話をおうかがいするたびに切なくなります。その優秀な頭脳と時間をもっと違う形につかってもらったほうが絶対日本のためにはいいのに。。。もったいない話です。寂しいなあ。
by suziefjp | 2009-06-24 02:49 | 知財経営

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


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