米国知的財産権日記

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今更だけど、「パテントトロール」

2009年明けましておめでとうございます

ども、明けましておめでとうございます!日本は1月5日から仕事はじめですかね?私のほうは、前にもねちっこく文句言いましたが、1月1日が休みなだけだったので、なんの正月気分も盛り上がらず、すでにバリバリ平日モードです。あー、つまんねー。あ、でも、ちゃんと自分でエビ天作って年越しソバ食べました♪ま、これくらいないとね。

年明け一発目、過去の内容をチェックすると、「言わずもがな」と思ってしまったのか、実は「パテントトロール」のお話って、全然してない・・・?日本で特許流通が進まない原因の一つに、このパテント・トロールの問題もあります。ですから、今日はパテント・トロール、行ってみましょう!

最近は知財トピックが日本でもかなり増えましたから、この「パテント・トロール」という言葉は案外知られつつある・・・かもしれんですね。パテント・トロールは、訳すと「特許鬼」ですが、自分達が特許を事業で製品化したりするのではなく、保有する特許を「お前、ライセンス料を支払わずに使っているだろう!」と、特許侵害裁判を一般企業にしかけ、和解金や賠償金で儲ける人たちのことをいい、特許権の濫用の典型例と言われています。

ただね、難しいんですよ、パテント・トロールっていう言葉自体、どう使うのか、って。特許権というのは、ご存知の通り、独占的排他権なわけです。この技術は特許になったんだから、私以外、他の人はつかっちゃダメよ、ってのが特許権。だから、他社を排除する、というのは基本的な特許の要素であるわけです。ただし、そんなものが永続的だったら技術発展上阻害がでる、というわけで、その技術を公開する代償にある一定期間、独占的試用期間をあげますよ、ってのが特許の本質です。だから、ずーーーっと秘密にして自分だけが使いたい場合は、ノウハウとして所有するほうがいいわけです。ただし、ノウハウの場合は、誰かが同じことを考えついて同じことをし始めても、自分のノウハウを盗んだ、と立証できない限り、その「誰か」を除外することはできません。ここがノウハウのリスクです。特許の場合、誰かが特許を見ることなしに、同じことを思いついたとしても、その行為をとめることが出来ます。

ですから、特許の本質的な権利である、排他権を行使したから、といって、即「パテント・トロール」と呼ぶのは、被害者意識もはなはだしい、これは明らかに間違いだと思います。また、自分達で特許を製品化していない人が特許権を行使したら、これもトロールか、というと、これも違うと思います。だって、本当に無断でその特許が使用されていたとしたら、それを止める権利が特許所有者にはあるわけですから、その権利を行使したからって、「鬼っ!悪魔っ!」って言われたら、そりゃあ迷惑な話です。パテント・トロール、と呼ぶ場合、色々な意見もあると思いますが、私としては、以下の条件を「すべて」満たす人、と、考えています:
・自ら特許を製品化、事業で使用していない人
・一般企業に対して、自分が所有する特許の権利侵害裁判を提起する人
・権利侵害の事実を本当にしっかり調べることもしないで、「裁判をしかけたらビビってすぐ和解したがって、和解金をせしめることが出来るだろう。もしくは、公判までいっても、技術に疎い陪審員が自分達に有利な判決をしてくれるから、がっぽり賠償金をとれるだろう」と、考えて、とにかく訴訟を濫発する人

実は一番大事なのは3つめだと思います。正当な侵害根拠があって、裁判を起こしている人は、事業会社であれ、非事業会社であれ、それは特許の正当な権利行使であって、トロールだのなんだの、と、批判されるべきものではないと思います。アメリカでは、トロールというと、この3つ目の要素が必ず入ってくるように思います。逆に、この3つ目の要素を欠く場合は、単に権利行使会社、というだけで、トロールとは認識していない・・・方が多いと思います。

ところが、日本でお話していると、この3の有無にかかわらず、とにかく、非事業会社が特許侵害裁判を起こすと、すぐトロールだ、トロールだ、と、騒いでいるように思います。これはちょっとどうでしょうか・・・。日本って、結構そういうところが文化的にありますよね。知財にかかわらず、ちょっと権利行使をしたり、自分の意見を言うと、「あの人は気が強い」とか、「周りのことを考えろ」とか。でも、それって、完全な議論のすり替えだと思います。権利の濫用ではなく、正当な権利行使は、批判されるべきものではありません。特に「周りのことを考えろ」というのは、正直、片腹いたし、な、議論です。いえいえ、議論にすらなっていません。

私は「周りのことを考える」という日本の文化は大好きです。実際、アメリカに住んでると、例えば、電車でも日本だと「バックパックやリュックサックは、背負っていると人の迷惑になりますから、前に持ちましょう」とか、携帯端末の音楽の音漏れには気をつけましょう、とかそういうのがありますよね。でも、アメリカだとあんまり気にしていないかも。(とはいうものの、アメリカだと、妊婦さんや赤ちゃんを抱いているお母さんに席をゆずらない、というのはあり得ない。日本だとフツーに席を譲らない。それがどれくらいしんどいことかを知っているお母さん経験者や同性の女性が席をゆずってくれるくらい?おっ、と、横道でした。)

でも、ここ10年前後、日本ではこの「周りのことを考えろ」が、ちょっと、拡大解釈されすぎて、ものすごく都合よく使われすぎている気がします。周りのことを考えて、みんなが気持ちよく生活できるのは、あくまでも、その社会に参加する一人一人が個人として自律・自立していることが前提ではないでしょうか。ですから、正当な権利行使が批判されることはないはずです。ところが、日本の「周りのことを考えろ」、というのは、とにかく、困る人が出ると、その困った人が「まったく、あいつは周りのことを考えていない!」と言い勝ち。でも、特にビジネス・シーンでは、「あいつが周りのことを考えなかったのか」、もしくは、「自分が自立、自律していなかったために、困った状況になっちゃったのか」を、ちょっと立ち止まって考えてみる責任があるのではないかと思います。

たとえば、自分がある製品を世に送りだすときに、先行技術調査を通常行いますよね。この製品に含まれている技術はすべて問題なく使える技術か、をチェックしますが、ここで、ちょっとグレーな第三者特許があったとしましょう。でも、「うーん、でも、持ってる人は個人発明家だし、訴えてこないだろう!」と、思って製品を市場に出しました。ところが、この特許が、特許権行使会社に売却され、その行使会社が権利行使してきたとします。すると、どういう反応をしますか?「あの発明家め、特許権行使会社に売るなんて、まったく、周りのことを考えていない!」って、怒りますか?多分、そういう風に怒る人もいると思うんですけど、そこまで他力で事業をやるのって、そもそも経営者、社会人としてアウトだと思いませんか?グレーだ、と、分かった段階で、自分が個人からこの特許を買う、あるいは、設計変更で回避する、という手段をとるべきだったのに、それをしなかった、それにも関わらず、他の誰かの責任にしちゃう、これが、「自律・自立の欠如」だと思います。

知財業界では本当にメジャーな言葉である「パテント・トロール」ですが、日本では、あまりにも被害者意識が強すぎて、自分達の行為もしくは不作為を見直すことなく、とにかく非事業会社で権利行使するヤツは悪いヤツだ!といった認識が横行しているようにも思います。これはあまりも他責、人任せで恥ずかしい・・・・。知財の問題だけではなく、外から見る日本は、なぜだかいつも、悪いのは他人、という雰囲気があるように見えるんです。色々なニュースを見ても、起こっている事象をみても、まず「私が悪いんじゃない」ということが大事。本当にそれでいいんでしょうか。これ、いったん「私がわるうございました」というと、もう二度と立ち上がれなくなるまで叩いて社会から抹殺してしまう日本社会の在り方にも原因があると思います。アメリカではスーパー主婦、マーサ・スチュワートが一度脱税で実刑を受けましたが、彼女は刑期を終えた後、すっかり復活してやはり今もスーパースターです。これがいいか悪いかは別として、こういうのは日本ではありえないんじゃないでしょうか?いったん、何かあると、そこまでキライなの?というくらい叩いて叩いて叩き潰す、これが古来の日本とは異なる、今の日本文化かもしれんです。そりゃ、みんな何かあっても人のせいにしたがるし、誰も責任は取らないから、何かがうまく行くはずも無い。

こういう社会全体の在り方、それに呼応する精神的な弱さを克服できない限り、日本で本当に知財流通や知財活用なんて進まないだろうなー、と、思いますし、また、なんだか暗いお話の多い日本が、世界的に見て「やっぱり日本ってすごいよね!」って言われるようなことにはならないんだろうなー、と、思います。とはいえ、2009年初頭、少しずつでも、小さなことからでも、みんなが自分に責任と自信を持つことで、やっぱり日本ってステキよね♪って言われるようになると、うれしいなあ!と、脳天気に思っていたりもします。

いつも日本で「パテント・トロール」の記事をみるたびに、定義が不明瞭のまま、言葉が先走っている感があったので、今回はあらためて、パテントトロールとはなんぞや?という話に焦点をあててみました。次回は、このパテント・トロール問題が日本の知財流通・活用に及ぼしている影響について考えてみたいと思います!
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by suziefjp | 2009-01-06 08:06 | 知的財産権 | Comments(0)

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


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