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米国知的財産権日記

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米国特許侵害裁判などのお仕事をしておられる方にとっては有名人のテキサス東部地裁のギルストラップ判事は、全国の連邦地方裁判所の中で最も忙しい判事の一人といっても過言ではありません。米国全土で新たに起こされる特許訴訟の4分の1以上がギルストラップ判事の担当になる、という話もあるくらいです。テキサス東部地裁は「特許権者寄りの判断をする」ことで有名なために、特許権者がわんさかテキサス東部地裁で特許侵害訴訟を起こすのですが、テキサス東部地裁で裁判をするために特許権者がペーパー会社をテキサス東部地裁の管轄地に作って訴訟をしている、というのもまた悲しい事実。そんな傾向にギルストラップ判事が「喝!」を入れた判決が2017年1月末に出ました。

米国では「例外的事件」と裁判所が認定すれば勝訴当事者は敗訴当事者から弁護士費用の回収等をすることが許されています。今回、ある特許トロールがどうもいまひとつの特許で和解金をせしめるためにデルやらアップルやらの名だたる企業を提訴したらしいのですが、これに対してデルが侵害主張が脆弱であるなどなどの略式判決を申し立て、ギルストラップ判事がデルの立場を認める判決を出したんですな。で、普通はここで終わるんですが、略式判決申し立ての中でデルが「この特許権者はそもそも特許権行使で和解金をせしめるためだけに設立されたペーパー会社で中身が無い、もし裁判所が例外的事件と認めてくれて弁護士費用の回収を命じてくれてもペーパー会社にそうした費用を賠償する資産がない」ということを指摘していたんですね。つまり、実際のその会社のオーナーである黒幕は和解金をまんまとせしめたらホクホク、もし負けて例外的事件として相手方の弁護士費用負担を命じられてもそれはそのペーパー会社を破産処理しちゃえば負担を逃れられて個人資産は守られて痛くもなんともなーい、それって許しちゃっていいんですかね?というところがクローズアップされたわけです。

で、略式判決後にギルストラップ判事がこうした問題について「判決後の証拠開示手続きをやる!」となりまして、出てきた証拠によると、この特許権行使会社の資産は問題の特許のみ、従業員ゼロ、和解金集めが目的、さらにオフィスの住所は黒幕オーナーが作ったほかの20社くらいのペーパー会社と共有、だから会社として家賃も払ってないのよーん、などの事実が出るわ出るわ。多分、同じようなことをしている特許トロールオーナーは他にもたくさんいると思いますが、今までこうした点について証拠開示をしよう!というチャンスが無かったので、こういう話が正式に表に出てくることが無かったんですね。

ギルストラップ判事は「これが『例外的事件』なかったら、そもそも例外的事件など存在しない!」として黒幕オーナー個人にデルへの弁護士費用支払を命じました。さらにこの特許トロールの代理人であった弁護士も懲罰対象として1万2500ドルの支払を命じられました。判決の中でギルストラップ判事は「こうしたしょーもない事件が裁判所の時間と労力奪ってしまって、真に解決されなければならない係争の障害になるのは由々しきこと」ということも言ってますから、しょーもない特許権行使には判事自身辟易していたのではないかと。。。ちなみにテキサス東部では同じ特許に関する侵害裁判は被告が違っても同じ裁判官に割り振られる(イリノイ北部地裁なんかはそういうシステムではなく、ばらっばらの裁判官にまずは割り振られます)ので、ギルストラップ判事はまだどういう人達が被告として残っているかを把握していることになります。そこで、今回お怒りになったギルストラップ判事が「この特許の侵害裁判でまだ係属中の他の被告に対して今回の私のこの判決のコピーを配りなさい」ということまで原告トロールオーナーに命じたとか。。。うわー、オーナー、恥ずかしー(笑)。

これで他のあやしげな特許トロールオーナーもおとなしくなってくれれば万々歳。正当な権利主張はとやかく言われるべきものではありませんが、こうしたスジの悪い権利主張にお上ががツンと喝をいれてくれるのは喜ばしいことです!

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# by suziefjp | 2017-02-15 06:21 | 知的財産権 | Comments(0)
明けましておめでとうございます♪ 今年もゆるゆると細くながーく不定期更新でいきたいと思いますのでお付き合いいただければうれしいです。

年初は小ネタから。。。たまたまなんですけど、先日、ある方と話していたときに「え、そうなの?」と驚かれたので、これは小ネタとしてイケるか!?と思ってしまったのですが、「米国特許の登録日(issue date)は必ず火曜日」なのです。もしお手元に何か米国特許があれば登録日をカレンダーでチェックしていただければ、絶対火曜日のはずです。

なんで火曜日か、は、私も聞いてみた事があるのですが、みんな「さあねー。」でした。ある人は「昔はやっぱり全部印刷だったから、金曜にしめて印刷にまわして、で、印刷があがるのが火曜日だったのかなあ。」という人も。真偽はさだかではありませんが、なんだか今でも「特許の登録日は火曜日」というのが伝統的に残っています。

小ネタとして飲み会とかで使っていただければ幸いです♪
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# by suziefjp | 2017-01-06 05:37 | 知的財産権 | Comments(0)
前回、日本企業にとってあまり楽しくない上訴事件の報告をさせていただきましたが、2016年を何か元気が出るかもしれないニュースで締めたいもんではありませんか♪と、いうことで、同じ上訴受理でも日本企業にとって良いニュースをお届けします。

2016年12月14日に最高裁判所が TC Heartland v. Kraft Food Brands Groupという事件の上訴を受理しました。ここで争われているのは「特許侵害事件において、被疑侵害者(被告)はどこで提訴され得るのか」です。皆様ご存知のとおり、現在はざっくり言ってしまうと被疑侵害者は被疑侵害品が販売されている州で提訴され得ます。広く販売されている製品であればアメリカの殆どの州で提訴され得ることになり、したがって特許権者寄りの判決が出やすいとされるテキサス東部地裁が特許権者(特にパテントトロール)に大人気を博してきたものです。データによると新たに開始される特許侵害裁判のうち半分近くがテキサス東部地裁で提訴されているらしく、テキサス東部地裁のギルストラップ判事はアメリカで最も担当時件数が多い連邦判事としても有名です。

今回の上訴では、やはりテキサス東部地裁で訴えられた被告がやってらんねーよ、と、この点を争ったかと思いきや、この上訴事件にはテキサス東部地裁がかかわっていないのがヒネリですな。この事件ではインディアナ州法人である被疑侵害者がデラウェア州で提訴され、それってどーなんですか、っていうのが最高裁判所まで上がってきたものです。
特許侵害裁判については連邦訴訟規則(Federal Rules of Civil Procedure)の1400条に特別の規定があり、「Any civil action for patent infringement may be brought in the judicial district where the defendant resides, or where the defendant has committed acts of infringement and has a regular and established place of business.」と定められています。この「resides(居住する)」がある判決から「その州が人的管轄権を持つならその州に居住とみなす」とされてきたために、その州で被疑侵害品が販売されていればその州で提訴され得る、となっていたわけです。

今回の上訴で被疑侵害者は「法人にとって居住するとはその州で設立されたことを意味する」と主張しています。もし最高裁判所がこの被疑侵害者の考え方を採用すると、これまではテキサス東部に集中していた特許侵害裁判が、今度は会社設立が多い場所としてよく知られるデラウェア州に集中する可能性があります。一般に、デラウェア州の判事は非常に中立で「特許権者寄り」ということはありません。優秀な判事さんもたくさんおられ、IPR係属中の訴訟一時停止にもオープンですので被疑侵害者にとってはやりやすい裁判地といえます。

さてさて、さらば、テキサス東部地裁となるか!?いや、別にテキサスでもいいんですけど、要はいいがかりみたいないい加減な特許侵害主張が減少するのであればテキサスでもデラウェアでもいいんですよね。。。テキサス東部を離れることで、いい加減な特許侵害主張に対して訴訟初期の取り下げ申立がしっかり検討してもらえて有効な対抗手段となるのであれば、それが一番です。

この事件と前回おしらせしたハーグ条約の件は、最高裁がどう判断するかドキドキです~~!
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# by suziefjp | 2016-12-29 07:26 | 知的財産権 | Comments(0)
お久しぶりでございます。しばらく時間が空いた間にトランプ氏が大統領選挙で勝っちゃったりして、なんだかもうエライことです。

そんなエライところにまたしてもエライことになるかもしれないことが起きてしまいました。知財事件に限らず、労働問題でも契約違反でもなんでも、日本企業をアメリカで提訴することがとっても簡単になってしまうかもしれません。と、いうのは12月2日に米国最高裁判所が国際訴状送達に関するハーグ条約の解釈を求める上訴を受理しちゃったんです。事件はWater Splash, Inc. v. Menon (No. 16-254)で、もともとはアメリカの会社がカナダの個人をビジネス干渉他を理由に訴えたものです。アメリカの会社が訴状をカナダに郵送したのですが、返事がなく、欠席裁判で企業有利の判決になったのですが、カナダの個人が郵送による訴状送達は無効として欠席裁判判決の取り消しを求めた事件で、「郵送による訴状の送達はハーグ条約で認められているか」という問題が最高裁判所に上がってしまったものです。

ご存知の方も多いと思いますが、米国裁判所で日本企業を訴えようとすると、ハーグ条約にもとづく訴状送達をせねばならず、日本の裁判所経由で翻訳を提出して、、、としている間にお金も時間もかかるため、特許侵害裁判だと被疑侵害品を販売している米国子会社だけが訴えられることがよくあります。特許権者は日本親会社を提訴しないことで面倒なハーグ条約の手続きを省略できるのですが、証拠開示手続では製品設計等の技術情報はすべて日本の親会社が持っていて技術情報を米国子会社経由で入手するには制限もあり、侵害立証が難しくなってしまうというデメリットがあります(米国の多くの判例で、子会社が親会社に書類を全部出せ、というのはさすがに限界があるよね、という点が認知されています。さらに日本は訴訟証拠提供のハーグ条約には批准していないので、訴訟当事者ではない日本の親会社に直接書類提出を要求する手段が米国の特許権者にはありません。)実務において、この点を利用して日本親会社がもつ資料を証拠開示手続きで出さないよう争ったご経験をお持ちの方もたくさんいらっしゃるかもしれません。

ハーグ条約の10(a)条では「Convention shall not interfere with (a) the freedom to send judicial documents, by postal channels, directly to persons abroad」とあり、批准国が10(a)条を明示的に拒否しなければ10(a)条が適用されます。日本は拒否していませんので、日本在住の企業を米国で訴える場合、郵送で送達できるのでは?という説が出てくるわけです。現在は米国の判例でもこの「send(郵送)」は「serve(送達)」を含まない等の諸説があり、郵送による訴状送達の可否が明確ではありません。さらに日本法はそもそも職権送達主義(=国内訴訟の訴状送達は裁判所によりなされなくてはならない)であり、10(a)条が郵送などによる当事者送達主義を認めるものであったなら日本は拒否していたでしょうよ、拒否してないってことは違うんですよ、的な立場で、日本は10(a)条を解釈してきたのかもしれません。

今回、米国最高裁判所がこのハーグ条約10(a)条の解釈をすることになってしまったので、「郵送オッケー♪」と解釈されると、米国訴訟における日本企業への訴状送達がものすごく簡単になり、ひいては米国で日本企業を提訴することがものすごく簡単になります。すると、特許侵害訴訟ではこれまでの米国子会社のみを訴えるアプローチから日本本社を訴えるアプローチに切り替わる可能性もあり、そうなると、日本本社が証拠開示手続に当事者として対応しなくてはならなくなります。もし郵送された訴状に対応しなければ、欠席裁判となり、相手方が求める要求どおりの判決となってしまう可能性もあります。

最高裁判所が扱う事件では、第三者がいずれの立場を支持するか、を表明するためのamicus briefの提出が許されているので、今回の事件でもたくさんの法曹団体や企業がamicus briefを提出することが予想されます。しかしこれ、条約の話なのに、勝手にアメリカで解釈しちゃっていいの??というのがどうしてもひっかかる!日本の外務省、これ、いいんでしょうか?日本国内法(=職権送達主義)とも齟齬が出る可能性がありますし、どーすんの??なんか国際条約を「アメリカで解釈決めちゃっていーじゃん。」って、アメリカっぽいけど納得できない。。。

日本企業でも、大きな影響を受けるご心配がある場合はアメリカの弁護士さんに相談なさってamicus briefの提出をご検討なさるのも良いかもしれません。この事件の最高裁判所の判断は必ずまた報告したいと思います!
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# by suziefjp | 2016-12-08 05:39 | 知的財産権 | Comments(0)
今更感もありますが、いまだにドメインネーム詐欺が横行しているようです。
特に中国の政府系機関を装って:
「我々は中国政府からドメインネーム登録手続きを請け負っている機関です。この度、○○.cnというドメインネームの登録申し込みがありましたが調べてみたところ、御社が所有している商標がこのドメインネームの大部分(○○該当部分)に使用されているようです。そうした場合、我々は商標権者に連絡するよう義務付けられています。
もし御社がこうしたドメインネームの登録を許可した、などの事情があったり、その他本件の解決について何かあればすぐご連絡下さい」
みたいな英文メールが突然やってきます。これに返事してしまうと、登録させない代わりに金銭の支払を要求されたり、あるいは「しめしめ、この会社は商標権保全のためにお金を出すようだぞ」などと思われて別の攻撃をしかけられたりする可能性があるので要注意です。このような意味不明のメールを受領したら、社内で法務部や知財部にすぐ連絡をして勝手に返事しないように、と徹底しておくことが大切です。

そういえば弁護士事務所側をひっかけようとする詐欺メールもすごい多いんですよ。例えば日本に実際に存在するそれなりの会社名で、「知財問題があって知財弁護士を探しています。もし貴所が弊社を代理できるならすぐ連絡下さい」みたいなメールが英文で来ます。これ、仕事を探していて、日本のことをあまり知らない弁護士さんだったら返事しちゃうかもしれませんよね。こうしたメールの特徴は日本の実在の会社名を語りつつ、発信人が社長名でGメールアドレスだったりします(笑)。いやいや、こんなそれなりの会社でしゃっちょさんが自らそんなメールをプライベートメールで出さんわな、ってな感じです。でも、有価証券報告書とかもともとの実在のウェブサイトで社長名見つけて、その社長名でG-mailとか設定してわざわざやってんだな、と思うと、その情熱をどこか別のところに向ければいいのに、と思わずにはいられません。

この手の詐欺はほんとやり切れんですねー。くれぐれもひっかからないようにご注意を!
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# by suziefjp | 2016-08-09 05:21 | 知的財産権 | Comments(0)

知的財産権のお話を中心に、たべもののこと、アメリカのこと、いろいろお話ししていきますね♪


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